第4話 サブリナママのクリームチーズケーキ・アゲイン その6
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「なるほどな」
全身ドライヤーで一気に水気を飛ばしたハンゾーがバスルームを出た。
その頃には、シェリーはすっかり元通りの緑色になっていた。
「うん、なんか残念」
「何が?」
「白い肌のシェリーは、新鮮だったからさ」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、ひと口飲んでシェリーに渡した。
「なんでよ、緑色のほうがきれいじゃない」
「普通の日焼け止め使わないのか?」
改めて訊いた。
「ヒューマンが使ってるヤツ?」
「そうそう」
「肌が荒れるんだよ」
多くのオークは敏感肌だ。
オーク専用のスキンケア商品も多い。
シェリーも古来から伝わる天然素材の日焼け止めを、使っているのだった。
「なんだかもったいないな。せっかくきれいな肌してるのに」
「なっ!?」
シェリーがびっくりしたようにハンゾーを見た。
「なにいってんのよ、バカ」
バッチィィィィィィィン
ハンゾーの肩を叩いた。
照れてるのか、力の加減がない。
かなり痛い。
「美白って言葉が、オレの世界にはあるのさ」
叩かれた肩をさすりながらハンゾーが言った。
「美白ねえ、変なの」
「で、どーしたの今日は?」
「あ~~、アンディとフランキーがさ……」
「なるほど」
向かいの部屋のドア越しにも、イチャイチャしてる二人の会話が聞こえて来そうだ。
「それで逃げて来たのか」
「せっかくラブラブなのに、割って入るのもなんだし。甘くってさ~、空気が……」
ささっと普段着に着替えたハンゾーが、シェリーの手を取った。
「丁度良いから、オレにつき合ってよシェリー」
ハンゾーが言った。
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《Sabrina mamas》
と大振りな書体で書かれていた。
「サブリナママーズが、正式な店名なのか?」
「そうだよ」
人気店というから、大行列が出来てると想ったんだが、辺りは静かなものだ。
閑散としてるといっても良い。
「休み?」
「いや。完全予約制だから、こんなもんだよ」
「そういう事か」
ハンゾーが一人納得した時、背後でけたたましいブレーキ音がした。
振り向くと、巨人用の巨大トレーラーが、巨人用道路の路肩に停まっていた。
「こっちよ」
ドデカい女の声が聞こえたが、姿は見えない。
「ジャイアント用の通用口は裏だから、そっちに荷物を運んでちょうだい」
「サンデーママー」
駆け寄ったシェリーが、その人を抱き上げた。
子猫ぐらいの背丈の、上品な見た目の老婆だ。
「シェリーちゃん!! いらっしゃいませ~」
「また注文に来たよ」
「あらあら、まあまあ、うれしいわ~、どーそ、どーそ、おあがんなさい」
『なあ、サブリナママーズって、コロポックルの店なのか?』
サンデーママに聞こえないように、小声でシェリーに訊いた。
「そうだよ」
『って、事は……』
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