第4話 サブリナママのクリームチーズケーキ・アゲイン その1


 ♠


 異世界♥F・r・i・e・n・d・S前回までは。


「ドニ、ファイト、ドニ!!」

「それ知覚過敏だよ」

「きゃぎゃぎゃ(いいから、こっちに来いよ)」

「オスぴー。浮気!?」

「ちなみに訊くんだけど。あなた何キロあるの?」


「300キロです」


 オスカルが彼女と別れ、ハンゾーは緑茶をすすり、ドニが押しつぶされた。


 ミスリル製のイヤードレスお値段一組10万円。



 さて、今回のお話は・・・





 ちゅぃ~ん


 と、口のなかで音がする。


 ちゅぃ~ん、


 ちゅぃ~ん、


 スゴゴゴ・・・


 何度聴いても慣れないな~

 と、大口を開けたままシェリーは想った。

 別に痛くもかゆくもない。

 終わればスッキリするし、この後に食べるご褒美ほうびのスイーツは、すんごく美味しい。

 でも、慣れない。

 いつまで経っても。


「さあ、今日はこれでおしまいにしよう。うがいをしてシェリー」

 ゴーグルの向こう側で、アラン先生がニッコリと笑った。

 シートのリクライニングが元に戻り、紙コップでうがいをしたシェリーが診療台から降りた。


 いつもの事だが、診療室は妙に薄暗い。

 夜目が利くシェリーやアラン先生は大丈夫だろうが、ハンゾーのようなヒューマンだと足元を見るのも大変かも知れない。

「ねえ先生」

「うん」

「いっつも想うんだけど、やっぱり先生は光が苦手なの?」

 バンパイアであるアラン先生は、マスクを付けたままニコリと微笑んだ。

「そうだね。強い直射日光は苦手かな」

「やっぱりそうなんだ」

「それにほら。私はオークやバンパイア専門の歯科医だから、診療室が暗くても問題ないんだよ」

「ふ~ん」

 と、顎に手をやり、何事か考えたシェリーが言った。


「ねえ、やっぱり日光に当たると灰になるとか?」

「灰に!? ならないよ」

 ビックリしたような大声で、アラン先生が返した。

「あ、ならないのか」

「ならない、ならない。なに? シェリーの世界のバンパイアは、日光を浴びると灰になるのかい!?」

 シェリーが慌てて両手を振った。

「いやいや、そーゆーのを聴いたことがあるんだよ」

「ああ、都市伝説!? なんか色々あるそうだね」

「そうそう。霧に変身したり」

「霧に!!」

「あとコウモリに変身したり」

「コウモリ!!」

 いちいちリアクションが大袈裟だ。

「それは本当にバンパイアなのかな?」

「知らないよ。聴いた話しだから」

「ふ~む、興味深い。少なくともバース12793247のバンパイアとは違う種類のバンパイアだね」

「え? 先生のバースは12796247なんだ」

「そうだよ。どうかしたのかい?」

「ボクのバースは12790146なんだ」


 あ~


 と、アラン先生が納得したような声を上げた。


「6000ちょっとしか離れてないって事は、シェリーとは親戚みたいなものかな?」

「多分、そーだよきっと」


 一般に異世界というと、極端に異なる世界を思い浮かべるが、実のところそれほど顕著な違いは見受けられない。

 特に隣り合った2つの世界には、ほとんど差異がない程だ。

 ちなみに基準となる世界をバース1として、1から10ぐらいの世界はほとんど重なり合っている。

 重なり合い。

 お互いに影響を与え会いながら、そこに住む生物は、時にお互いの世界を自然と行き来していたりする。


 このような経験は無いだろうか。


 普通に生活しているのに、突然肌寒さを感じたり、逆に突如暑苦しさを感じたりする事だ。

 不思議な違和感を覚えたり、デジャヴを覚えたことは?

 良いアイデアが降って湧いたり。

 思いついたアイデアが突然消えたり。

 そんな時は、隣の異世界に足を踏み入れたりする。

 入れ替わり現象だ。


 ♠


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