冒険者ギルドへ向かう

04.新ギルド発足

「これで、貴方はチート能力が使えない」


 マリーを見ると、手の中に賢者の石が握られていた。


「お、おい・・・なんの真似だ」

「え!? え!? マ、マリー!?」

「あらあら・・・」


 フレアもメルディアも困惑する中、マリーはニヒルな笑みを浮かべる。


「これがあれば・・・私の元々の設定である使になることが出来る。全ての魔術や呪術を司る存在になったってことよね?」

「ど、どうしたのマリー!? なんでリュウジ君から賢者の石を!?」

「お前・・・まさか、敵だったのか? 魔王の下部とか」


 俺達の問いにマリーは鼻で笑い飛ばした。


「いいえ、私は敵ではない。もっと・・・根本的に違う存在なんだと思う」


 マリーは軽く答えた後に、持っていた魔法の杖的棒を天に掲げる。


「我、星の力を授かりて、万物のマナを解き放つ!」


 彼女の足下に大きな赤い魔方陣が浮かび上がり、辺りに風が渦巻く。天には大きな光の球体が構築され二つ目の太陽のように周りを白く照らした。

 いきなりの展開に驚くしかない中でメルディアが呟いた。


「あれは・・・国家級禁忌魔法・・・」

「国家級?」


 俺の疑問符に、彼女は答えてくれる。


「あれは、この星に蓄えられたマナの一部を用いて放つ攻撃魔法です。その威力は・・・大国一つを消滅させる程です・・・」

「それは本当か?」


 メルディアは頷いた。

 だとしたら、マリーはいったい何を?

 何故そんな危険な魔法を使い始めた?

 俺が問う前にフレアがマリーに問う。


「止めてマリー! いったいどうしちゃったの!」


 泣きそうなフレアにマリーは答えた。


「落ち着いてフレア。これで魔王を倒すだけだから」

「・・・へ?」


 予想外の解答に皆の口が半開きで固まってしまう。マリーは続けた。


「この超大型遠距離魔法を魔王の居る場所に打ち込むよ。私のオーダーも入っているから魔法障壁だろうが、対スペル合金も貫くよ。全知全能である私の作った魔法を打ち消せる者は設定上存在しないからね」

「せ、設定だと?」


 マリーは真っ直ぐと俺達を見つめ、俺達に言い放った。


「ここは異世界でも何でもない。ここは小説の中の世界よ」


 ・・・は?


「異世界チートハーレムっていうジャンルで書かれた物語の世界よ。そして、カクヨムっていうweb投稿サイトに掲載してある一般個人が投稿した一つの作品の中・・・」


 思考が追いつかない。

 マリーの言っていることが飲む込みきれない。


「そしてこの物語の本質は、魔王を倒すのが目的ではなく、リュウジのワンマンプレイを楽しんで、リュウジの周りに集まる女の子達とイチャイチャするのを永遠と繰り返すだけの話なんだよ」


 ダメだ。

 マリーの言葉を理解したいのだが、理解がどうしても出来ない。

 まるで聞いてはいけないことに耳を塞がれているようだ。


「そうだリュウジ・・・もう、アンタの役割は終わったから、現世に返ってもらうわ。居られたら主人公補正とか、ハーレムとか築いて邪魔してきそうだし」

「・・・は?」

「あと、アンタはもう主人公から降りてもらうから一人称視点ももらっとくよ。ちゃんと物語の終幕を見届けないといけないからね」

「お、おい、本当に何を言っているんだ! まさか本当に現世に返らせる気か!? 俺はこの異世界にいたいんだ! ここには夢と希望が・・・」



「ファース・ルフ・エクトクル!」




――



「・・・は?」


 一瞬視界が歪み、そして元に戻る。

 目の前にはマンションや家を囲む塀。

 信号機は黄色から赤に変わり、車が通り過ぎていった。


「ここは・・・まさか」


 見覚えのある風景。

 俺はもしかしたら、戻ってきたのかもしれない・・・

 俺が生まれた現実に――


「う、うそだ・・・」


 声が震えた。

 ここは紛れもない現実だった

 俺は


 俺は


 俺は現実に

























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