勇者は賢者の石を手に入れた

01.英雄達との出会い

「え・・・」


 目の前には中世ヨーロッパ風の街並みが広がっていた。ローブや鎧を纏った人々、中には剣を腰に携えている者達が行き交っている。


「・・・」


 棒立ちしていた俺は自分の風貌を確認する。いつも着ているジャージ姿であることを認識しほんの少し安堵した。


「ここは・・・もしかして」

「いやあああああああああああああ!?」


 考える間もなく女性の声が木霊す。


「悲鳴?」


 俺は声の響く方へと走り出した。





――





 悲鳴の元へ向かい人混みを掻き分けると、そこには街の人々に襲い掛かる緑色の肌をした小人達が武器を振り回し、店や家々を破壊し回っていた。


「ゴブリンの奇襲よおおお! 皆逃げてえええ!」


 おばさんが全速力で横切って行く。街の人々は躓きながらも散り散りに逃げ去って行った。俺は、この状況に確信めいた物を感じた。


「やっぱりこれは・・・ラノベとかで見た異世界・・・」


 その時だった。風を切り裂く刃の音がこちらに向かってくる。


「うわっ!?」


 銀色に煌めき回転するそれは、俺の足下に突き刺さった。どうやら、ゴブリンの群れから飛んできた西洋風の剣であることが分かる。

 そして、その先でガシャリと重い音と共に誰かが倒れたのが見えた。


「うう・・・こんなゴブリン如きに・・・」


 白く綺麗なドレスアーマーに肩までの長さであろう桃色の髪の女の子が倒れ伏せた。


「これはいけないわ! フレアちゃんが!」


 そう言って、桃色の髪の女の子に駆け寄る僧侶風の青い衣装を纏った青色の長髪をした豊満な胸の女性がいた。

 駆け寄った青髪の女性は、手から光を生み出し桃色の髪の女の子の傷口にあてがった。そのまま青髪の女性は振り返り、ゴブリンの群れへと大声を上げる。


「マリーちゃん、急いで防壁を張って」

「・・・」


 声の先を見てみると、ゴブリンの群れの正面には更に一人の少女が背を向けて立っていた。

 低めの身長に金髪ツインテール。トンガリ帽子と黒いマントを羽織り、どこからどう見ても魔法使いのような風貌だった。


「ディガ・ブロム・バリアント!」


 金髪ツインテ少女が大声を上げると、彼女の周囲にガラスのようなドームが生まれる。ドームに触れたゴブリン達は次々と弾かれていく。

 しかし、徐々にドームは縮小していく。


「これも・・・予定調和・・・なの?」


 金髪ツインテ少女が呟くと、ドームの隙間からゴブリンが数匹突破してくる。ゴブリン達は桃色髪の女の子と青髪の女性に向かっていく。

 ここまで起きた非現実的な出来事を目の当たりにし、動揺が俺の中を駆け巡る。



 どうする?


 どうするんだ?


 どうすれば?



 そんなの時、突然手に埋め込まれていた石が光り出す。


「なんだ?」


 俺の手が勝手に前へと動き、突き刺さっていた剣へと手が伸ばされていた。明らかに自分の意思ではないが、石を通じて自分のやるべきことが伝わってきた。


「これで俺に戦えって言うのか・・・あの数を相手に」


 返答はこないが、そんな展開としか思えない。普通なら動揺していただろう。だが、俺は今まで読んできたアニメやラノベの影響で、ある確信へと変わっていく。


「やれやれ・・・しかたないか」


 剣を軽々と抜き放ち、戦場へ飛び込んでいく。

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