2日目、第6試合 前編
ラスティア:(いやー、困った困った。最強決定戦トーナメントというものだから筋骨隆々な人たちがいると思ったら最初の相手がこんな小さい女の子なんて。あー、こんな事ならちゃんと他の人の試合とか出場者とか確認してれば良かった。)
※うちの王様は面倒くさがりなので受付したらすぐホテルに直行して寝てました。
はぁ、とラスティアはため息をついた。
愛梨菜:「おじさん、げんきないけどだいじょうぶ?」
やる気のなさを越えて対戦相手に心配されるという始末である。
そんなことは耳に入ってないのか眠そうな顔でチラッと後ろを見る。
ラスティア:(ゲードまで10mか。めんどいからこのまま何も言わずに棄権しちゃおうかな。)
何とこの王様、始まって2分も経たないうちに“棄権”という行動を実行しようとしているのだ。さすが今大会一やる気のない男(多分)。ここまでいくと清々しいくらいだ。
実況の人:「両者どちらも動きませんね。」
解説の人:「えぇ。ですが、ラスティア選手はチラッとゲートの方に目をやりましたね。」
実況の人:「えっとつまり?」
解説の人:「棄権、しようとしたのではないでしょうか。」
すると会場内に少しの沈黙が走り、少しして
観客:「ふざけるな!ちゃんと戦え!」
などの怒りの声が次々と聞こえて来た。
その瞬間ラスティアは
プツンッ(何かが切れる音)
キレた。
キレた瞬間、体から怒気と熱量操作の高熱が体から漏れ出した。
彼の内にある感情は棄権できない虚しさと棄権しようとしていると告げた解説への途方もない怒りである。
ラスティア:「あの解説、終わったら殺す・・・。影も残さずモヤシテヤル!」
下を向きながらボソボソと呟く。今の彼はとてもお見せできない顔になっている。これが小説で良かったと心から思う。
てか、この王様がキレる事はとても珍しいことである。よっぽど逃げ出したかったのだろう。
愛梨菜:「だ、だいじょ」
ラスティア:「大丈夫だよ、お嬢さん。」
顔は笑顔を作っているが隠しきれない怒気と高熱で余計怖く感じる。てか、怖い。動物なら本能的な何かで距離を取るぐらい怖い。
実況の人:「おっと!ラスティア選手の体から炎が飛び出た!いきなり決めるのかー⁉︎」
んなわけ無いだろうと連れの2人が呆れて聞いていた。
キレた頭を何とか落ち着かせ、ラスティアは状況を確認した。
ラスティア:(相手は女の子、しかも子供だ。殺すのは簡単さ。でもそれをしたらまた観客からヤジが来る。棄権は・・・あの解説のせいで無理。・・・あれ?これどっちに転んでも詰んでない?)
そう、彼女を殺してもヤジが来て、棄権しても非難の嵐。どうあがいても絶望とはまさにこの事である。
ラスティア:(考えろ。ない頭使って考えるんろ!)
彼の顔には珍しく焦りの色が見えていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます