『街』【SS】『街 ~運命の交差点~ 特別篇』【PSP】『428 封鎖された渋谷で』【PSP】

 このエッセイの1話目の『かまいたちの夜』の時に神ゲーだと語ったサウンドノベル、『街』『428 封鎖された渋谷で』の二作を紹介します。

 ずっと語りたかったのですが、ノベルゲームなので失敗談とか書けないのでどうしようかと思っていましたが、とにかく紹介したかったのでします。


 『かまいたちの夜』をプレイして、サウンドノベルをもっとプレイしたいと思い、その後、色々なサウンドノベルや、アドベンチャーゲームをプレイしましたが、『かまいたちの夜』ほどに満足できる作品がありませんでした。

 しかしこの『街』と『428』は本当にハマりました。



『街』【SS】『街 ~運命の交差点~ 特別篇』【PSP】


 画像は実写で、時々動くこともあり。

 同じ時間軸に存在する8人の主人公をクリアに導くゲームです。

 選択肢を選ぶと、その話の主人公はもちろん、他の主人公にも影響が出る……ので詰まる時はとことん詰まる時がありますが、それがただ選択肢をしらみ潰しにすればいい、というゲームではなくなっていて、面白いのです。


 例えば、主人公を、牛尾うしお政美まさみで始めた場合。

 ヤクザをやめた男、牛尾はある女性にプロポーズを計画していました。その想い人のいる場所に行くため、渋谷の街を歩いていたましたが、しかし道中、男とぶつかります。

 無言の男に「コラっ、アイサツなしか」とか言って、男の肩を小突きます。しかし男はそれだけで倒れてしまいました。

 通行人の女性が悲鳴を上げてしまい、よろよろのコートを着た眼鏡の変な男が駆けつけてきます。


 肩をつかまれ問いただされますが、牛尾はそれを振りほどきます。

 すると、コートの男から携帯用のパソコンが落ちて壊れてしまいます。

 コートの男は叫んだかと思うと、牛尾に手錠をかけ逮捕してしまいました。

 バッドエンドです。


 それまで選択肢が1つもなかったのにバッドエンドです。

 どうすれば進めるのかというと、違う主人公、雨宮あめみや桂馬けいまでスタートします。


 少年課の刑事、雨宮桂馬(オタク。だが自称ゲーマー)は渋谷の街をパトロールしていました。

 何か騒ぎが起こっているのに気がつきます。どうやらヤクザの喧嘩のようです。ここで選択肢。


A 「ボクは少年係だ。彼らも昔は少年だった」


B 「ボクは少年係だ。大人は放っておきませう」


 Aを選んで騒ぎに近づいてみると、40代くらいの男が倒れており、そのそばにはヤクザっぽい男が立っていました。


 ヤクザっぽい男に肩をつかんで問いただしてみると「俺じゃねえ」と桂馬の手を振りほどきます。その拍子に桂馬がポケットに入れていた、ゲーマー刑事の命ともいえるミニパソが落下して壊れてしまいます。

 桂馬は絶叫し、ヤクザっぽい男を逮捕してしまいます。


 そのことで上司と喧嘩して刑事をやめてしまい、バッドエンドです。


 お読みになってわかっていただけたと思いますが、牛尾と桂馬の話がつながってるわけですね。

 桂馬でAを選んで、桂馬を牛尾の所に行かせてしまったのがバッドエンドの原因です。


 なのでBを選んでヤクザの喧嘩っぽい騒ぎを無視するわけです。刑事のくせにそれでいいのかとかその辺は気にしてはいけません。


 こんな感じで、話が交錯する主人公が8人いて、さらにクリア後のおまけで2人追加されます。


 その8人とそれぞれ話のタイトルとあらすじを紹介しておきましょう。


・雨宮桂馬 『オタク刑事、走る』

 自称ゲーマー刑事のオタク刑事は、ある日、渋谷のオーロラビジョンに爆破予告が映されるのを目にします。それは、映画のCMだったのですが、のちに本当の爆破予告だったと判明します。

 しかし誰も本当の爆破予告だと信じてくれず、桂馬は先輩の麻生あそうしおり、と、資料室の沼田ぬまた刑事と共に、ゲームをモチーフにした謎を解き、爆弾解除を目指します。


・牛尾政美 『The wrong man 牛』

 高嶺たかみねあやという女性にプロポーズするつもりだった牛尾。宝石店に勤める彼女に会いに行くと、宝石強盗が発生。その犯人は、ヤクザ時代の弟分で、なんやかやの内に一緒に逃げることになってしまいます。

 気づけば自分も宝石強盗の一味にされていることに気づく牛尾。しかもプロポーズのために買おうとしていた指輪とネックレスをまだお金を払ってないのに持っている……これでは言い訳もできない。

 しかし、なんやかやあって、なぜか牛尾は俳優と間違えられ、映画撮影の現場で役者をやることに……。


馬部うまべ甚太郎じんたろう 『The wrong man 馬』

 強面で大根役者の馬部。役者としても、恋人がしてくれたプロポーズに関しても、全く自信がありません。

 しかし彼に仁侠映画の主役という大チャンスが巡ってきます。

 なのに、なんだか人間違いで、気づくと宝石強盗と行動を共にすることになります。

 そう、馬部は牛尾とそっくりだったのです。

 偽物とバレたら殺されると考えた馬部は、死に物狂いでヤクザの兄貴分を演じるのです。


細井ほそい美子よしこ 『やせるおもい』

 昔はぽっちゃりとして可愛かった。しかし今では、ブタだ! トドだ!

 彼氏にそんな風に言われた美子。5日間で17キロ痩せないと別れる。という無茶ぶりをされてしまいます。

 捨てられたくない美子は痩せることを決意しますが、この体を作ってきた食欲には勝てるわけもなく……。


篠田しのだ正志まさし 『七曜会』

 大学生の正志は、、と名乗る美女にあることで脅され、七曜会という奇妙な組織に強制的に入ることになります。

 その組織は、秘密をつかんで人を脅迫し、1万円だけ取っていく、という変な組織でした。そして組織の仲間は月曜日から日曜日までをコードネームにした七人。

 その中で、高校生の美少女、に正志は恋してしまうのです。


高嶺たかみね隆士りゅうじ 『迷える外人部隊』

 フランスの外人部隊から脱走し、3年ぶりに渋谷に帰ってきた隆士。

 平和な街、かつての家族、かつての友達、かつての恋人。それらになじめず、焦燥を募らせながらも、渋谷の街で何かを探してさ迷います。


市川いちかわ文靖ふみやす 『シュレディンガーの手』

 テレビプロットライターの市川は、眠っている間に作品が出来上がっている、不思議な体験をしています。しかしその作品は、市川が嫌悪するような出来の作品だったのです。しかもそれがヒットしてしまうという不本意な事態に。

 純文学を書くことを貫きたい市川は、大作目指して作品を書きますが、寝て目覚めると、自分の描いた作品は消され、また市川が嫌悪する作品が出来上がっているのです……。


飛沢とびさわ陽平ようへい 『で・き・ちゃっ・た』

 プレイボーイの陽平。本命の彼女ともいい感じなのに、一晩遊んだだけの名前も憶えてない女から、「赤ちゃん、できました」と言われる話。


 これ+クリア語のおまけで二作。さらに、PSP版は、追加シナリオで、主人公たちが時々出会う、変な格好をした謎の男、パトリック・ダンディの話と、牛尾編、馬部編で出てくる、撮影現場の助監督サードのサギ山の話が入っています。


 それぞれ五日分の話があります(牛、馬だけ三日)。

 ときどき、話を進めていると暗転して『つづく』と出て続きが読めなくなることがありますが、他の主人公を読み進めていくと、『つづく』で終わっていた主人公の名前が出ていて、その文字が緑色になっており、それをチェックすると、読み進められなかった『つづく』の続きが読めるようになるというシステムになっています。


 そのジャンプできる文字が、なかなかいやらしい配置になっていることもあります。

 文章の中で出てくる、青文字の単語をチェックすると、その単語の意味や、人物の詳細や、様々なエピソードが読めます。

 その中にさらりと他主人公へのジャンプポイントが混じっていたりするので、青文字もきっちりチェックしなければいけません。


 しかしその青文字の中身は、なかなかにユーモアに富んでいて、思わず笑ってしまうことが多々あります。本文がシリアスなのにボケてくることもあるのは、好き嫌いがわかれるかもしれませんが、私は好きです。


 一番好きなシナリオは『迷える外人部隊』ですね。

 初見時は、昔のトラウマや、どうすればいいかわからない現在の心情などに、共感したものです。

 しかし、大人になってからプレイし直してみると、彼に反論する元恋人の意見にも共感するようになりました。それでより複雑な感情が入り混じる、感慨深い作品になりました。


 あっちのシナリオの恋人がこっちの重要人物だったり、あっちのモブキャラがそっちの重要キャラだったり、そっちのモブキャラがこっちでモブキャラだったりと……しかしモブキャラにも名前をチェックすると彼らの彼らなりの物語があったり、と、本当にいろいろなところで話が交錯しているところが、本当に魅力的な作品です。




『428 〜封鎖された渋谷で〜』【PSP】


 『街』と同じ渋谷が舞台の作品です。システム的には『街』とほぼ同じなのですが、『街』の10年後、と仄めかす描写がところどころにあります。

 『街』はそれぞれの五日間のストーリーですが、『428』は1日のストーリーです。『街』は1日で区切りがつき、8人全員の1日を終えなければ先に進めませんでしたが、『428』は1時間が区切りになっています。


 5人の主人公がいます。それぞれを紹介します。


加納かのう慎也しんや

 新米刑事の加納をはじめ、多くの刑事がスクランブル交差点で張り込みをしていました。加納の視線の先には女性が。


 大沢ひとみ19歳。彼女が持つアタッシュケースには5000万円が入っています。彼女の双子の姉が誘拐され、そのための身代金です。


 外国人がひとみに接触し、身代金が渡り、逃げられてしまいます。

 追跡班が身代金を持つ人物を見つけ、身代金は別の人間の手に渡っていると報告が来ます。

 その犯人を泳がせ尾行するのですが、違う人物、また違う人物と、次々に身代金は受け渡されていくのです。果たしてその謎の行動の意味は――


遠藤えんどう亜智あち

 電気屋の長男の亜智は長髪で強面。しかし渋谷の街の清掃と、困っている人を助けるのを日課にしているナイスガイです。


 その日も日課のごみ拾いをしていましたが、ハチ公前で美女がアタッシュケースを持って立っているのを見つけます。

 見ていると、彼女のアタッシュケースを奪っていく外国人、それとともに飛び出してその外国人を追いかける人々……。


 一体何事だと、彼女に声をかけようとした亜智でしたが、彼女に拳銃を持った男が近づきます。

 亜智は男にタックルを喰らわせ、彼女の腕を引き、逃げることに。

 二人の逃走劇が始まります。


御法川みのりかわみのる

 フリーライターの御法川はスーパーカブで60キロで爆走していました。

「バカやろう死にたいのか」そんな罵声に「違う! 死なせたくないんだ!」と叫び返します。

 昔からの知り合い、編集長の頭山とうやまが、売り出した雑誌の、当たると十万円のスクラッチが、下からライトを当てると透けてしまうというミスを犯したのだそうです。莫大な人数の当選者が……。


 そして来月号を落としたらさらに借金が増え、もう死ぬしかないというのです。しかもその締め切りは今日の午後8時。

 なんとか頭山が自殺する前に止められましたが、普通なら無理な仕事量。

 しかし御法川は「おまえのためじゃない、(おまえの娘の)花ちゃんのためだ」と協力することになります。


大沢おおさわ賢治けんじ

 ウィルス研究の第一人者で大手製薬会社の研究所長を務める大沢は、穏やかで凪のような生活を望んでいました。しかし、娘の、双子の姉、マリアがさらわれてしまいます。

 そしてその身代金受け渡しには、妹のひとみが行っています。

 仲がうまくいっていなかった娘のことを想いながら、様々な疑惑を抱えながら、家に来ている変な刑事に苛々しながら、大沢は娘の無事を祈ります。


・タマ

 ネコの着ぐるみ。可愛いんだけど中の人はとても暑いらしい。

 か弱い乙女なのだそうな。

 あるものがどうしても欲しくて、でもお金がなくて、着ぐるみのバイトをすることになりました。

 画期的なダイエット飲料、バーニングハンマーの試供品を配るバイトをにわとりの着ぐるみとやっています。


 タマは可愛くて、そこの場面だけやたらプレイしてます(笑)


 『街』のストーリーはそれぞれ独立していましたが、あらすじを見てもわかる通り、『428』は大沢姉妹の姉、マリア誘拐事件が、それぞれの話に絡んでいます。

 そしてその事件の終息の仕方が本当に鮮やか。

 

 おまけも盛りだくさんで、アニメ調、感動系、キャラ系、そしてチュンソフトのサウンドノベル名物(?)の隠し要素もあります。

 その当時、PSPのアナログパット、あれ、音声が出るところと思っていたんですよねー……。この隠し要素で初めて左手親指をかけやすいところにある丸いヤツが、操作できるものだと知りました(どこでどう操作するのかは秘密です)


 さて、この辺で語るのは終えておきましょう。

 本当はもう一作、サウンドノベルを語りたかったのですが、長くなりそうなので止めておきます。いつかあるかないかわからない、次の機会に。


 それではまた。

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