眠り

「心拍、安定しています」


「眠ったようだね」


康気こうきくん、今回は随分と幸せそうな顔で眠ってますね」


「だな。夢の中くらいは、幸せでいてほしい」


結揮ゆいきさんが亡くなってから、康気くんが一番悲しんでたし、今だって悲しみのどん底にいますもんね」


 規則的な短音が、突如長音に変化した。


「先生!」


 二人は、病室へ駆けつけた。が、相澤あいさわ康気こうきは幸せそうな表情で生き絶えていた。


「……お迎えが来たんですね」


「覚めることのない幸せな夢、か」


「やっと、幸せになれたんですね」


「これで、良かったのかもしれんな。自殺未遂を繰り返しても、結揮ゆいき恵里花えりかが戻ってこない限り、彼は変わらなかったんだろうから」







 これは、救済が与えられた少年と、救済を与えた少女の話。

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病室で僕は ヤト @touri_0925

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