「夢」ノハナシ

 「予知夢」

私はこれまで夢で見たことが現実でも起こるということが、度々あった。

例えば夢の中で暫く顔も見ていなかった旧友と会った次の日に街中でばったり会ったり、夢の中で新作ゲームの発表が後日本当に行われたり、夢で怒られたとおりに上司に怒られたり。良いことであれ悪いことであれ、夢で見た内容そのままに現実で起こるということが毎回でないにしろ、偶然で片付けられない程度にはあった。だからこそ、私は今とても恐ろしい。

今まで一度も見ることが無かった、知らない男に滅多刺しにされて殺されるという、自分が死ぬ夢をつい昨日見てしまったからだ。



 「警告」

四十歳を超えてもう叶わないと思っていた結婚が、ようやく叶おうとしている。

結婚相談所で偶然出会った女生と意気投合し、それから結婚ということになるまでトントン拍子だった。しかし、彼女との結婚が決まってから毎晩同じような夢を見るようになった。その内容はいたってシンプルで、毎回全く知らない違う男が出てきて「あの女と結婚するな」と私に言うのだ。きっと結婚に対する不安感がそんな夢を見せさせるのだろう。諸々の準備も終え、ようやく結婚式も挙げられた。そこで会った彼女の知人に「これで十回目の結婚だ」と言われたが、なんとなく気にしてはいけない気がして、考えないようにしている。そうでないと、夢に出てきたあの男たちの、生気のない顔が頭にこびりついて離れなくなるからだ。



 「夢か現か」

私の友人に都市伝説やなにやらといったオカルト趣味のある奴がいた。そいつはインターネットでオカルト系の情報を収集したりしていて、その中で気になったものは積極的に実践したり検証したりしていた。こっくりさんとかイマジナリーフレンドといったものから、心霊スポットなどによく足を運ぶこともあった。そんな友人がつい最近、夢日記を始めたらしい。自分の見た夢の内容を記憶の新しいうちに記録していくというもので、やっていくと現実と夢の境界が曖昧になっていくという怖さがあるらしい。友人はそんな話を目を輝かせて私に話していたが、ここ三日ほど友人の姿が見えない。いい加減心配になった私は友人の部屋を訪ねた。ドアをノックしても反応が無かったので、ドアノブを捻ってみると不用心なことに玄関は開いていた。不審に思いながら中に入っていくと、ベットに潜り込んで何やらぶつぶつ呟いている友人の姿があった。これはただ事ではないと思って慌てて友人に駆け寄ると、虚ろな目で私を見ながら、「まだ覚めない、まだ覚めない」と繰り返すばかりだった。近くにあった夢日記には646日目というありえない日数が記されていた。



 「夢占い」

巷で噂の夢占いがあった。気になる異性との相性を調べるというもので、方法はいたって簡単、その異性の写真を枕元に置いて夢に出てきた異性が笑顔であれば脈あり、とくに笑顔でなかったり悲しんでいたりすると脈無しというものだった。私もどうにか気になっていた異性の写真を手に入れ、それを枕のそばにおいてドキドキしながら眠りについた。翌朝、まだ寝ぼけた頭ではあったが、夢を見たことをなんとなく思い出していた。その夢には確かにその異性が出てきたけれど、見たことのない怒りの表情でひたすら「死ね」と連呼してくるという最悪の内容だった。

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