第4 てんてるこうりん
私はてんてる。そのように名付けられた。さて私は誰だろう。
私は空から全てを見ている。どこまで高くとも、どこまで低くとも、関係はない。さて私は誰だろう。
私は涙をこぼしはしない。涙は頰を伝い心を濡らす。涙は私には似合わない。さて私は誰だろう。
私はひらひら宙を舞う。風に揺られてくるりと舞う。風がなければ舞うことはない。舞う必要がないからだ。さて私は誰だろう。
私は感性が豊かである。時には笑い、時には泣く。もちろん涙はこぼさない。しかし何もないとしても、たとえ無であっても、一つの表現たりうる。さて私は誰だろう。
私は存在する。存在しなければ、私はただの空想で懇願で記憶の彼方に住まうものである。存在することに意味がある。さて私は誰だろう。
私に善悪の差などない。まして、完成未完成なども関係はない。未完成な人間だと笑われる者もいるが、私は誰に対しても平等に、恩には恩で返すつもりでいる。さて私は誰だろう。
私は常に白を纏う。白は穢れなく、白は眩しく、白は絶対である。ただ時には色に染まるのも一興である。さて私は誰だろう。
私は己を第一としない。私の存在理由はそこにない。他を活かすも潰すも私次第。私は願いを叶えるために存在している。私は願いの結晶であり、橋渡しである。さて私は何だろう。
私が私がたるには、己のみではいられない。常に引き寄せ続け、断固として離れない決意のもとに繋がるからこそ存在している。しかし決意の固さだけでは悲願は成就せず。表を願おうと、裏と成す顛末もしばしば。さて私は何だろう。
天には太陽がよく似合う。てんの文字を受け継ぐ私も、太陽が似合うものでありたいと心がける。しかし、てんは誤りだ。転々と変化せず、常に照るものでなければならない。さて私は何だろう。
さて、私は降臨した。明日を願わば私と共に。不安憂鬱を吹き飛ばし、明るく爽やかな日を共に迎えよう。そのために私はうまれてきたのだ。
私はてんてる。私はてんてる。そのように誤って名付けられた。
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