第27話 妹? 5
(ファ!? こいつの母親やべえ奴やないか!)
彼女は顔に紅を染めながら「その時見た、お兄様の愛くるしいお姿に一目惚れいたしまして日々お兄様を観察するのが日課になりました」と危なげな表情を浮かべる。
「それからの私の人生はとても充実していました。中でもお兄様が盗んだ女子生徒のパンツを同級生の池沼という方に擦り付けてまんまと逃げ果せた時はその鮮やかな手際に私、感服いたしました」
そう言って彼女は俺の過去の過ちを赤裸々に語り始める。違うんだ! あれはたまたま池沼君にしか擦り付ける相手がいなかっただけなんだ! 決して君がイケメンで春香のことを好いているからとかそういうことで君をハメた訳じゃないんだ池沼君。
「わかった。君が俺について詳しいことはよくわかった」
「そうですか。せっかく山形母子凌辱計画編の話をしようと思っていましたのに……」
大文字さんは残念そうにしょぼくれる。(こいつ、まさかそこまで……)
俺はいろいろと知りすぎてしまった。大文字をどうするかで思考を巡らしていると彼女がうっとりとした表情で口を挟む。
「どうですかお兄様。私の愛、存分に伝わりましたでしょうか?」
「うん? ああ、そうね。キモイぐらいには」
俺はありのままの気持ちを告げる。
「そうですか、嬉しい。私たちこれで両思いですね」
??? 何を言ってるのかなこの子は? 頭に虫が湧いてるのかな?
「何を言っているんだい? バカなのかな? 俺は別に好きとか言ってないけど」
「そんな、バカだなんて。酷いですはお兄様。確かお兄様が愛用している『また君に会いに行こう。ホーリングマイマイ』、『妹にマイチング』、『妹ホール』という世でエロゲーと呼ばれるものの中に妹が兄の日常をメチャクチャにしてそれでも兄は妹のために全てを失ってでも妹に尽くす純愛ものではありませんか?」
大文字さんは「それなのにどうして?」と詰め寄ってくる。確かにこいつは口を開けば俺の大事なものが奪われている気がする。
「それは妹として共に過ごしてきた過去があるからだろ? 俺と君は今日初めて会ってなんの感慨もない。それに実妹とは恋仲になれないという現実があるからこそ、それを創作物というものでその欲求を満たしているだけだ。俺は妹萌えであっても妹に手は出さない」
俺が妹萌えについて熱く語ると大文字さんは「そんな……」と絶句する。そう、俺は妹萌えだ。それに妹が俺の理想とかけ離れているからこそ創作物に頼るしかなかったのだ。もし俺の理想の妹……春香のような妹がいれば俺はタブーを犯していたかもしれない。
「……それに春香もいるし……」
俺がポツリと呟いたとき、心ここに在らずといった様子の大文字さんに魂が宿る。まるで今まで使えていた下僕が自分より身分の低い女に寝取られ錯乱する悪徳令嬢のようだ。
「……山形 春香……。やはりあの女ですわね。あの女狐、許さない」
大文字さんの顔が今までにないくらい猟奇的になる。怖ぇー。女の嫉妬は怖いと聞くが顔だけでここまで恐ろしくなるのか。
俺がブルブルと震えながら「だ、大文字さん?」と聞くと「四季です!」と言われてしまう。(そんな、俺に怒鳴らなくても……)
彼女は”はっ”と俺に声を荒げたことに気づいたのか「申し訳ございませんお兄様」と言って頭を下げるも言葉を続ける。
「でもお兄様もお兄様です。あのような下賤な女にどうしてご執心されるのです? このようなモノまで作って」
「おい、春香は下賤な女なんかじゃ……って!?」
大文字が”スッ”とどこからか取り出したのは真っ白なカバーのアルバムである。あれは俺がこの世で一番大切なものであって、この世で誰にも見られるわけにはいけないものであった。
「あの下賤な女の顔写真を使って別の女性の裸体と組み合わせるのは……、さすがにどうかと思います。お兄様……」
大文字は若干、引き気味でそういう。そうあれは、俺が長年制作してきた、春香のアイコラ写真集である。
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