第24話 妹? 2

「はい、お兄様。私、大文字 四季と申します。お初にお目にかかり恐縮でございます」


 そう言うと彼女はもう一度、お辞儀する。やはり彼女と俺は初対面のようだ。取りあえず俺は彼女に浮かぶもう一つの疑問についてお伺いする。


「……は……はい。初めまして、自分、生田 夏樹っていいます。えっと……お伺いしたいことがあるのですが先ほどから私奴を”お兄様”と言っておられますが、自分とあなたは、その……どういう関係で?」


 俺はできるだけ失礼のないように彼女と自分の間柄を聞いてみた。失礼のないように、とは言ったものの相手の素性を詮索しているし、言葉使いもなっちゃいないが今の俺にそのことを気にしている余裕はない。


 こんな美人が家の中で俺を出迎えてくれてましてはお兄様だなんて言っちゃってくれているのだ。自分の日常が今まさに漫画やアニメのような状況に陥っている。それだけで興奮が隠せない。これはもうこのままHシーンが始まることは間違いない。グッバイ俺の初めて、今までありがとう。


 俺が15年という重責を終えて退職届を執筆してくれている。”童貞”に別れを告げていると美しく座している、大文字さんが俺との関係を語ってくれる。


「はい。私、生田 誠様。お父様の隠し子に当たります。つまり、生田 夏樹様とは異母兄妹ということになります。」


 なるほど俺と彼女は異母兄妹という関係らしい。まさか俺の初めてが異母兄妹で行われるとは……。ん? 兄妹?


「異母兄妹ってことは”キョウダイ”てこと? 親戚の妹とかではなく?」


 俺が彼女にそう聞き返すと彼女は「はい。そうですが?」と小首を傾げる。なんだそうか。まあ、そうだよな。こんな美人と都合よくちょめちょめすることはできないよな。”キョウダイ”でそう言った関係はご法度。犯罪である。


 俺は執筆中だった退職届を心の中で破くと大きくため息をついた。いや待てよ? 隠し子? そんなの都合よくいる訳なくね? て言うか親父何浮気してるの? 犯罪じゃん。


 俺がため息を吐き親父がとんでもない奴だったことに驚愕しているのを見て彼女はどう思ったのか「反応が思ったのと違う……」とか「……やはり貴女の推論は間違っていたのでは?」などとぶつくさ呟いている。


 俺は彼女と何を話せばいいか分からず沈黙を貫いていると彼女が重々しい雰囲気で話し始める。


「お兄様は確か妹萌えとお伺いしていたのですが、お間違いありませんか?」


 彼女からとんでもないことを聞かれた。俺は今、今日合ったばかりの自称”妹”の大文字さんに今まで誰にも打ち明けず隠し通して来た、俺の秘密をまるで周知の事実の如く。さも当然のことを否定されて困惑し、その事実確認をするように彼女は聞いてきたのだ。


 ただ事じゃない。ここで彼女の疑問を認め、俺の性癖が皆にバレてしまっては妹の秋穂、両親、それに春香に顔向けできない。


 俺はこのような事実を容認することができず、大文字さんの質問の意図に頭を働かせないまま答えた。


「なっ……何を言っているのかな、大文字さん。ぼ……僕は別にい……妹萌えなんかじゃないですよ……」


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