第11話 クラス委員4
「そうですか。それでしたら仕方ありません。山本さんに無理強いするわけにはいきませんので別の候補者を募りましょう」
そう言って如月さんは話を振り出しに戻す。まあ仕方ない。彼女には正当な理由でクラス委員を辞退したのだ。ここで如月さんが食い下がるのはおかしな話だ。
如月さんが山本さんを懐柔すると思っていた聡は、彼女のあっさりとした物言いに拍子抜けしてしまったのだろう、「思っていたのと違うなぁ……」と言い深々と椅子に座りこむ。
山本さんがもう一度「ごめんなさい」と謝罪の言葉を述べているところで渡辺先生が口を開く。
「山本、風紀委員になるには、教師三名以上の推薦が必要だから基本的に一年生で立候補するものはクラス委員になって他の生徒よりも教師との接点を多くするものだぞ」
「もし君が風紀委員をやりたいのであればクラス委員をやるのは近道になるぞ?」
渡辺先生は「それでもやらないか?」と言い。山本さんの顔を見る。
「先生がそう言うのでしたら……わかりました。クラス委員、やらせていただきます」
山本さんは一度は断ったものの渡辺先生の説得によりクラス委員をすることを承諾してくれた。
渡辺先生は如月さんの時と同様に皆に拍手を求めるが拍手が起こらない。如月さんが言い出したこととは言え、皆相当にクラス委員をやりたかったらしい。しかし、そんな親戚の集まりで子連れのお母さんが子供に母乳をあげ始めて微妙な空気に似た感じを張り詰めた教室内で”パチパチパチ”と音が鳴る。
その音の発信源を探るとそこには優し気な顔で拍手をする如月さんがいた。俺は、すかさず両手を縦にパチパチを音を立てる。まるでシンバルを持った玩具の猿のように。
クラスメイト達も如月さんの清らかな拍手に誘われ続々と拍手が起こる。
こうして不満はあるだろうが無事、クラス委員が決まり、司会進行を如月さんと山本さんに任され他の委員を決めることになった。
順調に各委員が決められていき、なぜか俺は図書委員になった。渡辺先生の「生田、お前、趣味が読書とか言っていたよな? ならちょうどいいだろ。お前やれ」と先生の独断で決められてしまった。
俺は一応、「趣味に読書と言いましたが図書委員になるほどの読書量ではないですよ」と反論してみたが渡辺先生は「尚更良いじゃないか。図書委員になるのに相応しい読書量を身に付けてこい」と訳のわからないことを言われ、俺の言い分は却下された。
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