第10話 クラス委員3
今、まさに如月さんが我らが問いに答えようとしていた。
「私はどなたでも構いませんがあえて選べというのなら山本さんを推薦いたします」
彼女はそう言って山本さんの方を見た。
なんて奴だ。どなたでもいいということは、お前たちじゃ私の役に立たないということだろう。彼女からしたら俺たち皆、すべからず役立たずのレッテルを張られているに違いない。しかし山本さんだけ、その枠から外れているようだ。彼女は立候補すらしていなかったのにいったいどうして?
「どうしてなんだい如月さん。山本さんはクラス委員に立候補していないよ?」
「そうですよ如月さん。私たち納得できません」
俺と同じ疑問をクラスメイトたちも思ったのだろう。彼女の回答に皆が理由を問う。
「皆さんが討論をしている間、山本さんだけが話をまとめようと動いていました。彼女の行動はクラス委員として重要な役割でありその行動を誰に言われるでもなく行った彼女にならクラス委員を任せられると判断しました」
なんかすげえ真面目に答えるなぁ。正直、クラス委員ごときになんでこんなに揉めてるんだろうと我に返ってしまった。おっぱいデカくて美人で金持ちでも春香と比べたらそんなステータスたいしたことなかったわ。
皆はどうやら彼女の言葉で自分たちがいかに醜いい言い争いをしていたかに気づき、「如月さんがそういうなら」と渋々納得する。
「あの……ごめんなさい、如月さん。私は風紀委員会に入ろうと思っているのでクラス委員としてお役に立てないと思います」
如月さんの申し出を山本さんはあっさり断った。風紀委員会て身だしなみとか生徒の粗相を注意するのが仕事のやつだろ? クラス委員と一緒にやるのになんか不都合でもあるの?
「山本さんが言っている風紀委員会は主に生徒の身だしなみや挨拶運動、ここ桜花成瞬高校では生徒指導も兼任していて授業以外はほとんどクラスにいられないと思うから彼女がクラス委員を断るのは無理ないよ」
そう言って隣の席でニヤケ面をこちらに向けるのは纐纈 聡だ。お前……いたのか……。
「……お前……いたのか」
思わず口に出してしまったが仕方ないだろう。教室に入ってから急に口を固く閉じ、空気と同化して今の今まで一切、言葉を発しなかったのだから。
「いたよ。一緒に教室に入ったじゃないか。そんなことより如月さんどうするんだろうね? あっさり断られたけどどう言いくるめるんだろう?」
そう言って聡は如月さんの方に顔を向ける。言いくるめるって、俺みたいな物言いだな。根性曲がってやがる。
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