第9話 クラス委員2
(うむ、全く思いつかない)
よく考えたら俺はそこまで頭がよろしくない。ちょっとやそっとじゃ人を出し抜いて上に立つなんて妙案が思いつくはずがない。だが、人を蹴落とすくらいならできる。取りあえず春岡を退場させよう。
「春岡、手を下げろ。お前がクラス委員になるのは万に一つないぞ」
俺の言葉がクラス内に響く。
「そうだ引っ込め春岡」
「お前はそのヒトデみたいな頭をどうにかしてからにしろ」
「顔が濃いんだよテメー」
男子たちが俺の言葉に乗っかり声を荒げる。酷いな~顔が濃いは言い過ぎだよ。
「そうよそうよ。あんな醜態さらしといてどの面さげてて上げてんのよ」
「さっさとその汚い手を下ろしなさいよ! このヒトデ野郎!」
「この豚野郎!!」
女子たちも俺の言葉に股がり奇声を上げる。こいつら最低。この人でなしぃ!
春岡も負けじと「うるせえ! 俺が何をしようと俺の勝手だ馬鹿野郎」と吠える。しかし、そのような戯言を述べたところで言い分が通るわけではなく、逆に皆の反感を一斉に買う。
「ボケが! 頭燃やすぞ」
「ヒトデが喋ってんじゃないわよ。この豚野郎!!」
クラス内が徐々にヒートアップしていく。ちなみに春岡は太ってないよ。名前忘れたけど、あの女の子、多分”豚野郎”て言いたいだけだから気にしないであげて。
クラスメイトが春岡を狩るべく一致団結していく中、それを鎮めようと声を上げる者が現れる。
「ちょっと皆、いい加減にして。こんな風に言い争ったところで何も解決しないわ」
そう言って輪に入って来たのは、山本 唯。髪が綺麗なストレートで腰のあたりまであり、吊り目であるが顔が整っており美人だ。胸もそこそこあり、手足はスラっと伸びている。春香には劣るが性欲のそそる体をしている。
「そうだ、こんなこと言い争っても意味がねえ。女子の如月さんがクラス委員として決まっているんだ。必然的に次は男子から選ぶべきだろう」
山本さんの言葉で春岡一人を蹴落とすことよりもクラスの半数を振るい落とすとんでもない策を主張するものが現れた。こいつ天才か……。
「は? バカじゃないの? それなら女子同士でやった方がアンタたちみたいな猿と一緒にやるよりも効率的でいいでしょうが」
「それじゃあ俺たちの意見が通らなくなるだろうがボケが。脳みそついてんのか!?」
先ほどとはうってかわって男女でいがみ合いが起こる。山本さんとしてはもう少し利口な話し合いを求めていたのであろうが彼女の願い叶わず罵声から口論に変わる。まあ春岡は救われたよ。蚊帳の外に置かれた形だが。
「やめなさいってば、私はもう少し落ち着いて話し合おうと思って……」
「うるせえ、元はといえばお前が出しゃばったからだろうが! それにお前、立候補するしないで手を上げてねぇじゃねぇか! 外野は引っ込んでろ」
男子生徒がそういうと他の男子も「そうだそうだ」と相槌を打つ。
それにしてもこいつよく見てるなぁ、よくしゃべるし、俺より喋ってんじゃね? モブキャラのくせに。
「……そういうこと言うんだ。……へぇー、あー、そう……ホントこれだから男は嫌いなのよ」
山本さん激おこじゃん。なんか知らないけど男全体の評価が下がってるし。あのモブ野郎許さねぇ。
「君たち、ちょっといいかな?」
そう言って我関せずを貫いていた渡辺先生が皆に呼びかける。先生、よく今まで野放しにしていましたね。人を豚野郎とか言って罵っている人いましたけどどう咎めるつもりですか?
「意見が分かれて討論が白熱しているようだが、一つ提案させてもらうと、既にクラス委員になった如月に話を振ってみてはどうだ?」
渡辺先生がそういうとクラスメイト達は「津子先生がそういうなら……」と皆、先ほどまでの騒ぎが嘘のように静まり返る。そして皆、口裏を合わせたかのように如月さんを皆で見つめる。
俺もそれに倣い彼女を見る。さあ、拝聴しようじゃないか。彼女の言葉を。
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