第8話 クラス委員
「自己紹介も終わったことだし早速、クラス委員を決めるとするか」
渡辺先生は最後の一人の自己紹介が終わると教卓の上に両手をつき、少し前かがみでそう言った。彼女のボディーバランスだと、どうしても胸が強調されてしまう。
「クラス委員の仕事はこういった決めごとや行事ごとで私の代わりに司会や点呼をしてもらう。月一で委員会があって、その他雑用もある。リーダーシップをが要求されるため真面目で優秀な奴に頼みたい。できれば立候補で決めたいんだがやりたいやつはいるか?」
そういうと渡辺先生は姿勢を正し胸の下で腕を組む。先ほどとは違う形で胸が大きく強調される。
クラス内は静寂に包まれる。当り前だ。誰がそんな大役を好き好んで受けようものか。しかし物静かだった教室内に声が響く。春岡だ。
「先生、時間の無駄だぜ。クラス委員なんてかったるいことやりたがる物好きなんているわけ……」
先ほどまで放心状態だった春岡が急に粋がりだしたが彼の虚勢はすぐに遮られる。
「先生。よろしければクラス委員。私にお任せいただけないでしょうか?」
そう言って品よく手を上げたのは如月さんだ。
春岡は先ほどの如月さんとのやり取りで恐縮しているようだ。彼女がそういうと彼は言葉を中断されたことを何も言わず俯く。意外と小心者のようだ。
如月さんも彼の話しを止めたことに罪悪感を感じていないようだ。傍から見ても彼女が春岡にいい印象を持っていないのが窺える。まあこれは、春岡の自業自得だろう。
「そうか如月、やってくれるか」
「はい」
「では、如月にクラス委員を任せたいと思う。異論がなければ拍手で答えろ」
そう言って渡辺先生は両手でパチパチと音を立てる。それにつられと続々と拍手が送られる。
「如月さんがクラス委員ならきっと何もかも上手くいくは、もう何も怖くない」
「私、如月さんと同じクラスになれてよかった」
拍手喝采である。クラス内の誰かが声を上げているが彼女はまだ特に何もやっていない。唯一やったことといえば春岡をクラスで浮く状態にしたことだろう。自業自得だけどね。大丈夫だ春岡、お前を俺たちは一人にしないぞ。
女性陣が感極まって理性をなくし、キャーキャーと感情を剥き出しにしている間に俺たちは宛らニュー○イプの如く意思疎通を行っていた。
「それじゃあ、もう一人クラス委員を決めたいんだが、他に立候補はいるか?」
クラス全員のほぼ全員が静かに手を上げた。なんて奴らだ先ほどまで、あんなにやりたくなさそうにしていたのに如月さんがクラス委員になるやいなやクラス委員に立候補しようとは、なんて卑しい奴らだ。
春岡も何食わぬ顔で手を上げている。お前は、いったい何者なんだ。メンタル強すぎないか? お前はもう諦めろ。
ん? 俺? もちろん上げてるよ。当り前じゃん。
「おいおい、どうした? さっきまであんなに嫌そうだったのに。フフ」
渡辺先生は少し笑い気味にそう言った。どうやら脳筋機械女ではないらしい。可愛すぎないか? 俺に春香がいなければこの場で告白していただろう。……は!? そういやクラス委員になれば渡辺先生とも絡む機会が増えるのではないか?
こうしちゃいられない。俺はクラス委員になるべく計略を編むことにした。
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