古き世界と新しき世界


この世界の前に、

ふるき世界があった。


今のように、

様々な種族が暮らす世界が。


しかし、

そこに住まう者達は、

みなたがいを憎み合っていた。



何故なぜなら、

彼等を生み出した神々が

「優しさ」と「いつくしみ」を

心に入れ忘れてしまったからだ。



神々にとっては、

心にがあるのが当然だったので、

生み出した生き物達がその心を持っていないとは、

思いもしなかったのだろう。



たがいに思い合う「優しさ」が在り、

る者を「いつくしむ」心がるからこそ、

世界に住まう全てはバランスを取って暮らせるのだ。



それらを持たぬふるき世界の者達は


毎日、たがいに言い争い


毎日、小さないさかいをり返し


毎日、憎しみを深めていった



・・そして。



やがてそれは、

世界を巻き込むいくさへと変わった。


全ての種族があらそい、

どちらの物かわからないほどの血を流し続けたが。


いくさは、

五つ目の夜明けを迎えた時に

突然終わりをげる。



・・世界の全てが崩壊し、


る者も


大地も


空も


光も


完全に消滅してしまったからだ。



この世界を造りだした2人の神は、

一欠片ひとかけらだけを残し、

闇と無に包まれた世界を見てなげかれた。


そして、

その後何百年も話し合い・・

今一度、世界を造りだす事になさったのだ。



今度は、

全ての命る者に


「優しさ」と「いつくしみ」


この大切な2つの光を、

心にあふれるほど与えて。



新しく造りだされた世界で、

新しく誕生した命る者達は、

静かに目をます。



初めて目にした、

世界中にあふれる光。



そして、

その温かさに包まれ、

彼等は心からその美しさに

感動をおぼえた。


そんな命る者達に、

全てを造り終えた2人の神は

姿を現し、こうげられた。



「全ての種族は、

あらそってはならぬ。


あらそえば、

ふるき世界のように、

世界は全て無へと消え去るだろう。」


「全ての種族は、

手を取り合わねばならぬ。


手を取り合うならば、

世界は美しい物であふれるだろう。」



新たに生まれた命る者達は、

決して忘れぬよう、その言葉を魂に刻み込んだ。


・・そして、

目の前にいる者と手を取り合い、

笑顔で最初の言葉をわした。



それが、この世界。



「優しさ」の神、

人間の姿の神「スァルト」



いつくしみ」の神、

異形の姿の神「ヴェート」



この2人の神の名を持つ


「スァルト・ヴェート」の始まりの日。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る