週5日の日常


きりーつ、れーい。


やる気が一切感じられない号令に、

生徒達はだらだらとした動きでこたえる。


「気を付けて帰れよー。」


教師もその光景に慣れているらしく、

若干じゃっかん、間延びした緊張感の無い声で、

帰りと締めの挨拶をまとめて言った。


すると、

何人かがそれに返事を返しながら、

号令の時とは打って変わった俊敏しゅんびんな動きで

廊下へと飛び出して行く。


それが合図だったように、

教室のあちこちで何人かが集まり、

華やいだ声音で楽し気に、

これからの予定の相談を始めた。


「ねぇ、何処どこに行こっか?」


「そういえば、

駅前に新しいカフェが出来たって言ってなかったっけ?」


「ケーキセットがおすすめだって聞いたよ!」


「楽しみー!」


「ゲーセン寄って、

その後カラオケにも行こうぜ!」


「ゲーセンはいいけど、カラオケは却下きゃっか。」


「お前、マイク放さねーじゃん。」


「今日はちゃんと渡すって!」


「え~・・。」


心なしか、

生徒達全員のテンションが高い。


まあ、それも仕方が無いだろう。


何故なぜなら、今日は金曜日。


明日から2日間、

宿題や塾、部活をのぞけば、

他は基本的に休みだ。


2日間という短くも長い休みを満喫まんきつしようと、

遊ぶ相手と予定の吟味ぎんみを重ね、

其々それぞれの方法で青春を謳歌おうかしようとしている。


そんな中、

部活に急ぐ者達に混ざり、

慌てた様子で教室を飛び出して行く少女がいた。


彼女が急いでいるのは、

部活動で目標に向かい汗を流すためでも、

マネージャーとして、

頑張がんばる仲間の応援をするためでもない。


そんな少女が何故、

週末の予定に華やぐ集団に混ざらず、

走り去って行くのかというと。


それは、

少女自身の言動に理由があった。


勿論もちろん

この後の用事のためでもあるのだが、

それよりもわかりやすい理由というのが。


そう。


少女はぼっち「うるさい。」・・だったのだ。




○     ○     ○     ○     ○ 




どうも皆さん初めまして。


モノローグにディスられた、

17歳女子高生の田柘綾花たつみりょうかと申します。


言い訳ではないのですが、

私は別に何かがあって、

1人で行動している訳じゃありません。


何処どこに行くのも、何をするのも、遊ぶ事さえ。


・・人と一緒に行動するのが、

あまり好きではないんです。


クラスメイトとは普通に話しますし、

班分けでも、特に余る事などもありません。


ただ、

1人で行動している方が落ち着くし、

好きなんです。


そんな私の、

クラスメイトからの評価は

「変わっている普通の人」だ。

(変わっているのか普通なのか、どっちなんだろう?)


まあ、それはさておき。


私が何故なぜ急いでいるのかといいますと、

明日から2日間、泊りがけのバイトがあるからです。


・・え?

「泊りがけのバイトなんて、よく親が許可を出したな。」

ですか?


それには2つ程理由がありまして。


1つ目は、

私がこのバイトを始めてから、

約1年が無事に経っているという事。


その間に職場でも学校でも、

問題が起こった事はありません。

(まあ、職場では毎日ハプニングだらけですが。)


2つ目は、

このバイトは当然両親も公認で、

協力してくれているから。


ですが、

私の担当者兼、上司が挨拶と説明に来た時は、

流石さすがに2人共驚いていました。

(しかし、

5分程会話をした後は、

すっかり打ち解けていました。凄い。)


まあ、そういう事で。


今週末の2日間、

今回も頑張がんばって労働にはげもうと思います。

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