消えた記憶と新しい記憶

あれから、2、3日がたった。


私はあの日、何もない社のお賽銭箱の前で意識を失っていました。

こんなところがあったのだろうか?

と不思議に思いながら、目の前の階段をおりてゆく。家の裏の階段なんて覚えがない。

山を出て、家の敷地内に入ったとき、


また...風鈴が鳴るころに...


どこからかそんな声が聞こえたような気がした。優しく囁いたような声だった。私には聞き覚えのない声だったが、何処か懐かしい。

家へ戻り、玄関を開けようと手をかける。

いつの間にか目から涙が溢れ、手がふるふると震えている。これは何処からくる感情なのか、私には分からなかった。



「あら、かなちゃん」


後ろから聞こえた声に体がビクッとする。急いで涙を拭いた。


「おばあちゃん、どうしたの?」


祖母はどうやら畑仕事へ出掛けていたようだった。


「畑の行きしなにねえ、あんたの友達に会ってねー」


祖母は自分の後ろに目をやる。祖母の後ろから三人ほどの人が顔を表した。


「かなちゃん、久しぶりー」


真ん中のショートヘアーの子が私にひらりと手を振る。

私はふふっと微笑みを漏らし、


「久しぶり」


手を振り替えした。

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風鈴が鳴る頃に 枯崎 情 @zyou_1351

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