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「見つけたー」
突然の声に僕らは動きを止めた。だるまさんが転んだ、をしているみたいになった。入口からこちらを覗く二つの顔。一つはよく知っている。近所に住むヨオコだ。散髪屋の娘で、親同士が仲がいいので昔はよく遊んだ。肌は少し黒めで、髪はさらさらと肩まで、そしてひょろっと手足が長い。
もう一つの顔は初めて見る。色白で顎が細くて、くせっ毛を強引に後ろで束ねている。ヨオコの後ろに隠れるようにしているが、見たことのないようなきれいな顔立ちで、どうしても目をひかれてしまう。
「なんだよ、ヨオコ。何しに来たんだ」
最初に呪縛から解かれたのは武雄だった。
「最近静かだからおかしいと思ったの。夏休みは毎年うるっさくしてるのに」
ヨオコは腰に手を当てて仁王立ちだ。まるで僕らは容疑者のよう。
「その子は誰?」
そう聞いたのは久司。僕と同じ疑問を持っているようだ。
「従妹の冬美。しばらくこっちにいるの」
「……お世話になってます」
控えめな様子、上品な感じ、すべてが新鮮に見えた。彼女は都会から来たに違いない。僕がこれほど想像しているのだから、久司の中では目くるめく物語が出来上がっていることだろう。
「それにしても、こんなものよく作れたものねえ」
「最初からあったんだよ。作れるわけねーだろ」
「考えてみればそうね」
「三人で協力して、掃除したりしたんだよ」
「ふうん。じゃあ、手伝うわ」
三人は顔を見合わせた。
「何よ、私たちはのけ者にする気?」
「いやそういうわけじゃないけど……どうする?」
こういう時に武雄には決断力がない。僕の出番だ。
「どうせ断ったって引き下がらないだろ。その……せっかく従妹も来てるわけだし、みんなで楽しもう」
「さすが話が分かる。いいわね」
「わかったよ」
「了解」
そんなわけで、三人の秘密基地は、五人の秘密基地になった。
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