ファンタジーな異世界と現実が繋がり、なんやかんやで平和に交流できるようになった時代。「スポットゲーム」と呼ばれるリアルTRPGのようなシステムで異世界を気軽に満喫できるようになり、幻想と商業主義の入り混じったキラキラギラギラした世界と子供たちの遊び場が地続きになった、そんな日常のお話です。
主人公・真帆は異世界の魔女学校に編入した女の子です。女児向けとされるファンシー趣味を引きずったせいで周囲になじめず、唯一の友人であるソラミちゃんにはいつも呆れられる、そんなうだつの上がらない日々。
そんなある時、自分のせいで仲違いしてしまった親友・ステラとうっかり再会しちゃったことで事態は急変します。彼女はスポットゲーム内の実績を買われてアイドルになり、地元を離れるつもりだったのです。もう会えなくなる前に仲違いの件を謝らなきゃ! と一念発起するものの、過去のトラウマやら子どもたちのエグい階級社会に立ち向かわなきゃいけなくなて……というお話です。
全体的に優しいお話です。けれど、優しいだけじゃないです。タイトルこそ「魔女学校」ですが、主人公が立ち向かうのは過去に清算できなかった負い目や引け目です。
大きくなって(といっても中学生だけど)女児アニメ的なファンシー趣味を持っている主人公はバカにされまくりだし、その対極にいるような陽キャの元親友はギラギラしたスクールカースト社会でひどく傷ついています。ファンタジーがごく身近な遊び場として存在する世界で、照らし出されるのはどこまでもリアルな世知辛さです。もう、どうしようもないくらい現実的なんです。
だからこそでしょうか、ファンシーでごく平和的な魔法が優しい力を持っているように思えます。陰キャで奥手でダメダメな主人公の、ほんの少しの奇跡を起こすための必要十分な力がとても眩しいのです。憧れを捨てなかった女の子は、本当の魔法を掛けられる。ミクロな救いがそこにあります。