8

「えーと、『フェアリーテイル・ハイへようこそ! ここはあなたがなりたい自分になれる夢のハイスクール。お城のキャンパスに、クラスメイトはプリンスにプリンセス。みんなの憧れのスターにわが道をゆくウィッチにモンスター……。あなたもなりたい自分になっていろんな友達と一緒に魔法の放課後を過ごしてね』ですか。……要は18歳未満限定のSNS型スポットですね。理想のアバターを手に入れるためにレベルアップって形でガキにお金落とさせるっていう。アホくさ」


 ソラミちゃんはスマホに表示させたフェアリーテイル・ハイFTHの公式サイトの文面を読み上げる。


「ほら、行きますよセンパイ。いつまでグズってんですか」

「う、うん」

「とっととしないと日が暮れちゃいますよ! 19時半以降はスポットから強制退出させられることを忘れてるんじゃないでしょうね?」

「わ、分かってるけど……。どうしよう、あたしみたいのがFTHなんかに入ったら笑われない? カフェテリアに入ったギークの女の子みたいにならない? ブロンドのチアリーダーに『ほらみてよあの子、量販店の服着てる』とかクスクス笑われない?」

「……まあ十中八九そうなるとは思いますけど」

「! 否定しないんだ⁉」

「だってそんなの無理ですよ! ていうかステラさんに会いたいんじゃないんですか⁉ チアリーダーが怖くてあきらめちゃうんですかっ?」

「うう……それは嫌だぁ……」

「だったらいい加減腹をくくりなさい」

 

 ぐいっと、ソラミちゃんに腕を引かれてようやくあたしは決心がついた。

 カウンターにいる藤原さんの前にグリンピアの会員証を差し出す。


「あら、真帆ちゃん。元気だった? 今から学校?」

「そ、そうじゃないの。話すと長くなるんだけど……」

「すいません時間が無いんで。FTHに新規二人、今日の時間いっぱいまで。お願いします」

 

 ソラミちゃんがあたしを遮り、手短に用件を伝えてくれた。


「あら~、貴方たちがFTHで遊ぶなんて珍しいわね。……ああ、そうか。いまプロムクイーンイベント中だものね~」


 藤原さんは私がまだ把握しきれていないFTH内専門用語を口にしながら、あたしの会員証とソラミちゃんのスマホをスキャンした。これでプレイ用の料金が引き落とされる。


「真帆ちゃんはリルファンタウンでためたポイントが使えるみたいだけど、どうする? それ使う?」

 もちろんそうしてもらう。スポットゲームのプレイ料金はおおむねワンコイン未満だけど、つもりつもれば中高生のお財布に深刻なダメージを与えるのだ。

 ちなみにプレイ料金は平均して一時間100~200円前後。プレイ時間を延長したり、スポット内で販売しているグッズやフードを購入するとその都度会員証やスマホのアプリを通して料金を精算することになっている。欲望に負け無計画に遊ぶとお小遣いなんてあっという間に溶けてしまう。


 今は夕方の17時手前。グリンピアは食品フロア以外を20時には締め切る。その準備もあるので19時30分にはプレイヤーは全スポットから退出しなければならないという決まりがある。ルールを守らなければ強制退出の上、罰金なんかのペナルティも与えられる。管理人の藤原さんに悪質だと判断されれば出禁の処置だって下されることもある。


 というわけで、本日あたしたちに与えられた猶予は約二時間半。それまでにできればステラに会って伝えたいことを伝えなければならないのだ。


 藤原さんはあたしたちを大きな鏡に見えるFTHのスポットの前に立たせた。そして首からぶら下げてる鍵を一つ取り、スポットの表面に差し込んでまわす。

 ガチャン、と錠がまわる音がしてからすぐに波紋状にスポットがたわんだ。


「はーい、じゃあ行ってらっしゃ~い」

 手を振る藤原さんに見送られ、ソラミちゃんに引きずられる形で、あたしは絶対立ち入ることがないと思っていたFTHの世界に足を踏み入れた。


 

 ほんの数十分前、ソラミちゃんに促されるようにして、あたしが出した結論は「ステラに直接会って話をする」だった。

 で、確実にステラに会える場所はどこかと考えて出たのが、現在オーディションが行われているというFTHの中ということになり、グリンピアのスポットルームにすっとんできたってわけだけど……。



「ハイ、あなたたちは新入生? フェアリーテイル・ハイにようこそ。でも……、ウ~ン、その恰好じゃあダメダメ、ダメね。まずあなた自身が‶なりたいあなた″にならないと入学許可は出せないわ」


 FTHに足を踏み入れた直後、城門の前に現れると着せ替え人形みたいなプロポーションの妖精たちがやってきてあたし達を値踏しだす。この展開に心をベッキリ折られそうになった。


「まずあなたたちの所属するドミトリーを、プリンセス、ウィッチ、モンスターから選んで頂戴。そのあとコスチュームを選んで」



「たかがチュートリアル作業でしょう? 何泣きそうな顔になってるんですか?」

 ソラミちゃんは迷わずウィッチ寮を選び、妖精が見せるコスチューム一覧から黒いシンプルなワンピースととんがり帽子にブーツというシンプルな魔女コスチュームに変身していた。サッシュベルトを巻いて体の線を強調し、50年代風のちょっとレトロなメイクも妖精たちに施してもらう。大人っぽいコケティッシュな魔女の姿になって結構ご満悦だ。


「リルファンタウンと違ってこっちのドレスはなかなか趣味がいいですね」

「……さっきアホくさって言ってたくせに」

「何かいいました?」

「ううん、何にも」


 あたしも寮はウィッチを選択し、チュールを重ねたようなスカートが可愛い黒いドレスを選択する。髪の色はやっぱりすみれ色でロングのツインテールにする。

 そんなあたしを見てソラミちゃんがもらした感想がこれだ。


「センパイは根っから、トイザらスかポニーのアニメなセンスの人なんですね……」

「いいじゃない、これが‶なりたいあたし″になった結果なんだから! もう!」


 多少のいざこざは残したものの、着せ替え人形みたいな妖精はワーオ! と派手に腕を広げて驚いてくれる。


「あなた達とっても素敵! それじゃスクールライフを楽しんでね! 青春は一度きり、楽しまなきゃダメよ!」



 ……のっけからこのノリだ。

 ライフを半分ぐらい削られたような気持ちになりながら、妖精が杖を一振りしてくれたおかげで開いた門の向こうへ向けて歩き出す。



「……FTHのこの雰囲気についていける人の気が知れない……」

「ステラさんに会って話せばそれで終わるんですから、我慢してくださいよ」


 

 開け放たれたお城の扉の向こうの世界は、とにかくきらびやかで目がくらみそう。市松模様の床にシャンデリアのぶら下がる大広間。

 きらびやかなドレスやコスチューム姿のプレイヤー女の子と男の子、壁にはモニターがかけられ現在行われているライブが放送されたりイベントの情報を流している。


 カラフルでキラキラなコスチュームに身を包んだプレイヤーのおしゃべりにダンスミュージックが反響して、とにかく視覚的にも聴覚的にも刺激がいっぱい。あたしはクラクラする。


 戸惑っているとまた、さっき私たちにコスチュームを選択させたのとは別の妖精がやってきてあたし達の頭の上を旋回した。今度は地味な事務員のようなスーツをきてメガネをかけている。


「あなたたちは新入生ね? 何に困っているの?」

「ああああの、えーと、友達を探してるんです!」


 これ以上こんな空間にいたらステラに会うまでに神経がやられてしまう。あたしはメガネの妖精にこれ幸いと縋った。


「友達? 名前は?」

「ステラ! 鈴木星子ステラって言います」


 ふん、とメガネをかけた事務員妖精は宙をホバリングしたまま手にしていたファイルを広げた。すると宙にマップが浮かび上がる。


「スター寮のステラね。彼女はいまカフェテリアにいるわ。場所はわかる? このフロアからまっすぐ中庭に出てすぐよ」


 宙にうかんだマップに小さな杖で指し示し、事務員妖精は説明してくれた。

 カフェテリアの一言にあたしにのしかかるストレスが重みを増したきがしたけれど、そんなことは言ってられない。


「ありがとうございますっ」

 ソラミちゃんと一緒に案内された地点へ向けて歩こうとすると、去り際にその妖精は呼び止めた。


「ちょっと待って、あなた達その子から招待状はもらった?」

「……はい?」


 招待状?

 あたしとソラミちゃんは顔を見合わせた。


「ステラさんが今いるカフェテリアはスター寮の生徒専用のエリアにあるのよ?

 新入生は彼女から招待状を受け取らなきゃ入れないわよ」


「⁉」

 

 声も出せない衝撃があたし達を襲った。

 カフェテリアで意地悪なチアリーダーからいじめられるイメージは散々していたけれど、まさかそのカフェテリアにすら入れない可能性があったとは!

 そんなの全然想定外なんですけど⁉


「新入生がそのエリアに立ち寄るにはどうすればいいんですかっ?」

 絶句したあたしにかわりソラミちゃんが質問してくれた。


「簡単よ。ライブをする、友達と研究をする、創作活動に打ち込む、何でもいいからさまざまなパフォーマンスで注目を集めてランキングを上げなさい。そうすればスター寮に入寮できる資格が得られますから」


 こともなげに事務員妖精は教えてくれたけれど、どう考えてもそれ簡単そうじゃないんですけど⁉ すくなくとも後二時間半で達成できそうじゃないんですけど⁉

 お母さんに叱られながらもリルファンタウンでお年玉とお小遣いをつぎ込んでランカーになったあたしの経験がそう叫んだ。


 どうやら思っていたよりFTSは難しそうだぞ、という気配を察したソラミちゃんが矢継ぎ早に事務員妖精に質問する。


 その解答から得られた情報からわかったことは以下のようなこと。


①FTHの新規プレイヤーが選べる属性(ここでは寮と呼ばれる)は、プリンセス、ウィッチ、モンスターの基本的に三つ。それぞれ自分たちの個性や特性に合わせてパフォーマンスをし、ほかのプレイヤーである生徒からイイネを集める。また、‶教員″という形で参加している各種企業の大人たちからは成績という形で評価をつけてもらう。

 こうして自分自身のランクを上げる。


②‶教員″による評価でA+を五つもらうと、特別な属性であるスター寮へランクアップできる。スター寮の生徒には、有名デザイナーがデザインしたコスチュームを無料でもらえる、高級なカフェテリアやおしゃれなサロンを自由に利用できるなどの特権が付与される。

 つまりはFTHでグレードの高い友達と知り合い、優雅な学校生活を楽しむならパフォーマンスに力を入れなければならない。



「超~ガッチガチの実力階級社会なんですね、FTHってば。しかもこっちの世界の大企業が多数絡んでますし」

 

 分からないことがあればとりあえず掲示板を見なさい、という事務員妖精のアドバイスに従ってあたしたちはホールから少し離れた場所にある掲示板に移動した。

 そこには様々なポスターが貼ってある。


 プリンセス寮にいた生徒の誰それちゃんが、自分の提案したSNSで着回しコーデを提案した結果‶教員″であるファッション誌が目にとめて晴れて読モデビューが決定、スター寮に編入。

 ウィッチ寮にいたナントカさんが投稿した小説を、これまた‶教員″の大手出版社が目にとめて書籍化決定、スター寮生に。

 モンスター寮のカントカさんが独自に開発したゲームアプリをIT企業の‶教員″が買い取って彼女もスター寮入り……。



「要するに、ここは才能の青田買い市場なんですね。うわっ、北米版FTHなんかもっと派手ですよ? モンスター寮のギークガールチームの研究結果を企業が買い取るとか。こんなもんどうせチャラチャラしたきせかえSNSとばかり思い込んでいましたけど考えが変わりましたよ。……あれ、センパイ、どうしました?」


 心なしかワクワクしているソラミちゃんとは反対に、華々しいFTHスター寮生に関する情報の洪水にあたしは酔っていた。しゃがみこんで眩暈に耐える。

 

 違う……あたしとこの人たちはあまりに違いすぎる……。


「ソラミちゃん……あたし、これ以上FTHにいると息ができなくなる……」

「また! とりあえずステラさんに会うまではしっかりしていてください!」

「……ていうか、あたし本当にステラと会えるの……?」

「……。とりあえず彼女がいるっていうスター寮専門のカフェテリアのそばまで行ってみましょう」


 どうやらソラミちゃんまで、今の状態であたしとステラがここで会えるのかどうか不安を感じているようだった。

 よれよれのあたしを引きずるような恰好で、ソラミちゃんはさっき事務員妖精が教えてくれたスター寮生限定のカフェテリアのそばまで移動することにする。


 

 市松模様の大広間を突っ切った先にある中庭は、緑色の青々とした芝生と虹のかかった噴水が美しい、夢みたいな空間だった。

 それまでの息苦しさを忘れて思わず、わあっと歓声を上げる。ここで聞こえるのはサラサラパシャパシャという噴水の軽やかな水音のみ。


 噴水は、蓮の浮かぶ大きな池につながっている。その池のほとりにあるオープンテラスつきの気持ちよさそうなカフェが、あの事務員妖精が言っていたステラのいるらしいカフェテリアだと見当がついた。


 だってちょっとでもそっちへむかって歩こうとしたら、また着せ替え人形みたいな妖精がピリリリ……と警笛を鳴らしながらすっ飛んで来たから。


「あなたたち新入生? あのカフェテリアはスター寮生限定よ! 招待状を出しなさい」

 

 違う場所から接近しようとしても同じようにピリリリ……と警笛を鳴らしてやってくる。それを三度くらい繰り返してから、あたしたちは作戦を見直すことにした。


「もう17時半回ってますよ。こんなことで30分近く時間を浪費してしまいました」

 

 中庭の植え込みの陰で、ソラミちゃんも多少ぐったりした声で呟いた。


「……こうなったら長期戦に変更しましょうか。わたしとセンパイで何かパフォーマンスをしてA+評価を集めてスター寮生になるっていうのはどうです?」


 どうやらFTHの実力階級社会は意識の高いソラミちゃんには魅力的に映ったみたいで、その声には結構本気っぽいものが漂っていた。でも、あたしの表情をみて「冗談ですよ」と撤回してくれる。


「おそらくペーペーの新入生がスター寮生になるにはどんなに才能がある人でも最低一年はかかりそうですしね」

「……」


 そうか、一年か……。

 あたしとステラが別れたのが去年の夏の終わり。そして今が秋の終わり。

 ステラがダンス部の子たちと一緒にFTHで遊ぶようになったとして、大体一年か……。


 その間で、アイドルとしてのパフォーマンスをしてリアルでもご当地アイドルとして地道に活動して、それから大手プロダクションに声をかけてもらえるようになって、スター寮生になったんだ……。


 その間のステラの努力を想像して、あたしはまたダラーっと涙を流す。

 あたしの友達は、本当にすごい子だったんだ……。


 ソラミちゃんが「また泣く!」と叱る前にティッシュで涙をぬぐって鼻をかむ。


「とりあえずスター寮生だろうがペーペー新入生だろうが、グリンピアのスポットルームからやってきた人間は19時半までには必ずあのカフェテリアから出てこなきゃいけないわけですから、それまで待ちましょう」

「……うん」


 こうしてあたし達は植え込みの陰に足を投げ出して座ることにした。

 そうしながら、時々カフェテリアから出てきたプレイヤーたちをチェックする。

 

 はてさて、選ばれしスター寮の生徒たちはみんな独特のオーラを纏った子たちだった。 

 奇麗なプリンセスドレスの子、モンスターのようなパーツを身に着けた子、おしゃれな子、個性的な子、見た目は様々だけどみんな自信にあふれていそうだ。


 ……うう……あたしとは全然住む世界が違う……。


 卑屈な気持ちになってまた膝を抱えそうになった時、あたしたちのそばにポトンと何かが降ってきた。


「な、何っ!? 」

 あたしよりソラミちゃんの反応の方が速い。芝生の上に落ちたそれを確認してさっと眉を吊り上げる。


 そらから降ってきたのは、紙にくるまれたチキンの骨だった。


 その直後、キャラキャラと池の向こうのカフェテリアから笑い声がする。明らかにあたしたちの反応をみて笑っている。茂みのこちらから伺うと、池のほとりのカフェテリアに陣取っているカラフルなドレスの女の子たちがこっちを見てはしゃいでいた。


「ほら、やっぱ魔女子とハロウィンだよ!」

「うっわ、なんでこんなとこ来てんの? ウケるんだけど」


 笑い声にまじってそんな声が聞こえてきた。つまりあそこにいるのはダンス部の子たちってことだ。

 テラスから立ち上がってあたし達を挑発するドレスの女の子達の中、一人だけ席にすわり不機嫌そうに腕を組んでいる、黒いミニドレスの女の子がいた。ステラだ!

 あたしはとっさに立ち上がって手を振る。


「おーい、ステ……」

 

 ラ、と続けようとしたその時、よりにもよってあたしの頭にチキンの骨が命中した。キャハハハ、とダンス部の子たちがはしゃぐ笑い声。

 さらにもう一つ二つ、チキンの骨の爆撃が続く。立ち上がったあたしはあの子たちにとっていい的だったらしい。

 

 それでもステラがこっちに気づき、立ち上がったのが見えた。


 ステラは席から立ち上がり、テラスを抜けてこっちへ回ってくる。

 ヒールのある靴を履いているのに関係ない、小学生の時と同じ奇麗なフォームで。

 

 あたしは慌てた。

「どどどどうしよう、ステラがこっちに来ちゃうよ、ソラミちゃんどうしよっ!」

「よかったじゃないですか、手間が省けて。……ていうかFTHはプレイヤーの素行に注意はしないんですかね。食い散らかしのゴミ投げてくるやつなんか真っ先に追い出さなきゃでしょ?」


 くるりと池のふちにそってやってきたステラは、あたしたちの姿を見つけるとゆっくりと速度をおとし、歩きながらやってきた。


 ゆっくり、悠々と。

 あたしはまた逃げ出したくなる気持ちを押えて、その場で立っていた。



「真帆……」

 ステラのくっきりした二重の眼が、まっすぐこっちを睨んでいる。怒っている時の眼だ。あたしは知っている。


「真帆……!」

 ステラが再び走りだした。こういう時のステラがどういう行動に出るかあたしは知っている。それに備えてぎゅっと目を瞑り、奥歯を噛みしめた。


 次の瞬間、バーンと何かが破裂するような衝撃が顔の左側で炸裂して、脳天がくらくらした。痛いという感覚はなかなかやってこなかった。


 ステラに横っ面をひっぱたかれたあたしは、そのまま胸倉をつかまれ馬乗りにされる。さらにそのあと二~三回、往復で叩かれる。


 顔がぬるぬるする。鼻血が出たのかもしれない。


「真帆っ、真帆っ、クソ! このっ……! 今頃こんなとこ来やがって……」


 あたしの上にまたがって、吠えた。ギラギラした眼とは反対に、ステラの口から言葉は出てこない。ギリギリと歯が食いしばられている。

 

 

 ようやくやってきた痛みにしびれてあたしは動けず、ステラのなすがままになっている。

 

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る