第4話 虚の目的

「ほう……?この大会には色んな個性を持つ者がいるのか。皆今まで戦ってきた者達とは格が違うな……」


 虚は大会のエントリー表を見て考察をしていた。


「不死……かこれはこれで決着はつかなそうだな。俺を永遠に楽しませてくれそうだ……」


 虚は今回のこの大会の目的は自分を常に満足させてくれる奴を捜しての事だった。そいつが見つかれば虚は満足だ。そして元の世界に戻った後に自分を満足させた対戦相手の世界に行き永遠に付き纏う事を考えていた。はた迷惑な話である。


「ふむふむ、俺の干渉をも無効化か……面白い」


 虚は、自分の直接無干渉の特性も良く思っていなかった。物を掴むことも相手に触れる事も触れられる事も出来ないのだ。勿論直接の攻撃も不可能であるが故に自分の出来る事、手段が限られるのだ。それは楽しむ方法も減ると言う事なのだ。そして干渉無効を突破したとして何なんだと言う話だ。虚には実体が無い。存在ごと消滅させるなりなんなりしなくては虚は倒されないのだ。


 さらには今まで何度も強敵と戦ってきた虚である。流石に一瞬で消される事は無い位の対抗する力はある。それに普通の移動で次元を移動する速度だ。回避する事は可能であろう。その上で虚は自分をそこまで楽しませた相手を認めるだろう。だが、ずっと干渉無効を解除されたならば虚は楽しみを増幅させる。存在に干渉出来る事は虚にとっても嬉しい事なのだ。


 そうなればそこで初めて虚の戦闘はセカンドステージに突入する。虚は次元魔法で戦う。次元の狭間で押し潰すなり、場外に飛ばすなりして攻撃するのだ。そこからが本当の虚だ。虚は敢えて干渉無効を解除出来る相手に遭遇したならば自分から当たりに行く可能性も高いだろう。自らのさらなる楽しみの為に。


「俺の同一意思を無効化できる者は少ないか……そしてスキルや能力の発動を俺より早くするのは難しいか……」


 虚は少し肩を落とす。自分の同一意思は発動では無く常に存在認識発動である。相手がいると認識した時点で発動する。そして、神をも従える強さの同一意思が故に中々無効化するのは難しいだろう。あくまでこれは状態異常の毒とは違うのだ。これに対する耐性を持つ者は少ない。虚にとってはこの個性が一番嫌いだった。自分と相手が同じ事を考える。だがあくまで同じ内容なのでぶっ飛んだ思考の奴だったら捉えるニュアンスによっては違う動きになる事もあるが相当ぶっ飛んだ思考の相手でない限りそれは無いだろう。どいつと相対しても相手の反応は自分の思考と同じ……これほどつまらない事は無い。


「移動に関しては問題ないか……?」


 虚は次元を跨いで普通にすり抜けて移動する。一種の瞬間移動的な移動の仕方だ。


「ほう、こいつは下手をすれば俺は消されるな……」


 虚が興味を持ったのは現実を改変するという能力を持った者だった。無限次元を持ち、全ての事象も弄れると言うのだ。それを二回使えば虚は消される。一回目だ干渉無効の無い世界に改変した上で消されるのだ。無限次元なので抗うことは虚でも難しいだろう。だが、虚には同一意思があった。


「!?こいつは!」


 虚はある存在のエントリー表を見て心を躍らせた。


「精神生命体、 多重意思か!素晴らしい!」


 虚は酷く感動した。多重意思と言うことは何個か意思があると認識していても全ては認識出来ず相手は思考能力が多少落ちようとも関係無く動けるだろう。こいつならば虚の同一意思に対抗できる。


「ニュクスか。これは俺には効かないな……先ず俺は生物では無いし直接干渉無効がある」


 だがそいつはどんな武器でも呼び出せるらしい。それならば干渉無効を突破する武器もありそうだ。そして未来予知も可能と。それならば虚が回避する先も予想可能だ。だが、虚には実体は無い。相手に見えているのはあくまで映し出している姿だ。予知が出来たところで問題は無いだろう。


 だが最後のニュクスと言うやつで引きこもられたら勝ち目は無いだろう。しかし、負ける事も無い。だが虚はこいつと戦えれば満足だろう。そうなのだ同一意思に対抗出来る者。それだけで虚にとっては感動物だ。


「色々興味深いな……どれでも良いんだ……飽きた世界に改変を……」


 虚は写しだした仮の実体に笑みを浮かべエントリー表の前から立ち去った。

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