第8話 職業ってその人のそれまでの生き方とか性格反映されますよね
「ウソつきっ!」
「え?何がでしょう?」
突然のウソつき呼ばわりは心外です。
「パーティ全員レベル5だったらアポロ倒せるって言ったじゃん!」
言いましたよ?けどパーティ総出で非戦闘員のメイルさんに勝てないのならアポロさんには絶対勝てません。
「あのね、色々言いたいことあるんですが、まずメイルさんはメッセンジャーなので戦わないで下さい」
「勝てそうだったから…」
「勝てませんでしたけどね!」
この人どうやってレベル上げたんだろう?
「で、今日は何?」
「パーティの編成についてお話があります」
始まったよ…みたいな顔するのやめて下さい。
「ちゃんと男2、女2にしたじゃん!」
「ジョブがおかしい、というお話です」
「なんで?ギャンブラー、踊り子、占い師。いいじゃん!」
「その職種にした理由はなんですか?」
「だってさぁ、考えても見てよ。戦闘能力が高い職種に魔法使いに僧侶って、『ザ・普通』じゃん!そんなのつまんないよ」
確かに私も「あ〜、またかぁ」とは思いますよ?
けど普通って1番バランスが取れてるんです!
だからみんながそのパーティ組むから普通なんです!
「どうしてギャンブラーなんですか?」
「当たったらデカいじゃん」
「ほぼ当たりませんよ?」
「違うよ〜。そういうロマンが欲しいの!戦闘に!」
「踊り子は?」
「衣装」
それは、まぁ、私も強くは否定できません。
「じゃあ占い師は?」
「あ〜、まぁぶっちゃけて言えば雰囲気。けどこないだご飯食べる時口元隠してる布外したの見たんだけど…」
「出っ歯でした?」
「アゴが長かった」
ちょっとだけ、嫌ですね。
「とりあえずアポロさん倒したいのなら今のパーティは解散です」
「え〜、せっかくレベル5まで上げたのにぃ?」
「アゴの長い女占い師と長く旅を続けられるんですか?」
「自信ない。わかった、解散する」
「で、私からのオススメはまず剣闘士ですね」
「なんかゴツゴツした男とずっと一緒ってやだな〜」
「誰が男性だと言いました?」
キラッとエルさんの目が光りました。
「女の、剣闘士…。なんか響きだけでコスチュームがエロい!」
「上はゴーンとした強靭な鎧なのに下は太もも露(あら)わとか、良いですよね?」
「決定!1人目は女剣闘士!」
「性格キツイから気をつけて下さい。次は黒魔術士です。これは間違いなく男性をオススメします」
ですが私の提案にエルさんはあまり良い顔をしませんでした。
「魔王、なんかさ、黒いローブに顔に刺青あしらってて普段口数少ないのに戦闘では活躍する男って…俺よりカッコよくない?」
甘いですね。
「パーティ内恋愛イベントが発生するという前提でお話ししますけど、たとえ黒魔術士さんがカッコよくても絶対に女性はエルさんを選びます」
「なんで!?」
「だって黒魔術士になるくらいですよ?絶対性格暗いに決まってるじゃないですか!休日はトカゲとかカエル捕まえて鍋でグツグツ煮るんですよ?キモいですよね〜。普段聞いてる音楽も中島みゆきだですね。無口なのだってアレ絶対ただのコミュ症ですよ。詠唱だってブツブツ言ってるからよく聞こえないですけど、多分半分以上は愚痴だと私思ってます」
ものすごいエルさんがうなづいてました。
「私400年魔王してるから色んな人と会いましたけど社交的な黒魔術士なんて見たことないです。確かに最初はそんな怪しい雰囲気に女性はコロッといきますが、デートでカエル捕まえたりしてたら100年の恋も冷めますって。そうなったらアラ不思議?勇者さんが凄くステキに見える、っていう算段です。だから長い目で見たら黒魔術士は絶対に男性です!」
「決まりだな」
はい、これは400年で得た真理です。
「で、最後は回復系ですけどこれはもちろん女性なのですが…僧侶だけは絶対に避けて下さい!」
「なんで?回復系といえば僧侶じゃん?」
「僧侶の女性は身持ちが堅いんです!」
エルさん、鱗が目から落ちましたよ。
「なので白魔術師がオススメです。多少ですが攻撃魔法も使えますし、僧侶よりも断然結婚願望があります」
「おぉっ!」
「ですが…白魔術師って腐女子が多いんですよね。脳内でエルさんと黒魔術子さんのあんなことしてる事とかこんな事してる事とか妄想されてる場合があります」
「やだなぁ。他に回復魔法使える職業ってないの?」
「黒と白の両方使える賢者ってのもいますがある程度のレベルになってから転職しないとなれないですし、それに賢者になると悟っちゃうので恋愛に興味なくなっちゃう場合が多いです」
「却下」
「魔法効力が下がりますが同じく黒白両方使える灰魔術師っていうのもアリっちゃアリですが、優柔不断です」
「却下」
「導師っていうのも白魔法使えますけど、読んで字のごとく自分の色に染めたがるみたいです」
「マトモなのいないな」
「なので冒険序盤は白魔術師をオススメします」
「わかった、魔王の言う通りにする」
「ちゃんと自分でギルドに言えますか?」
「ん〜…自信ない」
「もぉ、勇者なんだからそろそろそういうのちゃんとして下さいよ。今回は私がアンちゃんに伝えときますけど、今度からちゃんと自分でギルドに申請して下さいね」
「うん、ごめんね魔王」
「エルさん、こういう時はありがとうですよ?」
「ありがとう魔王!」
「はい、どういたしまして」
私段々エルが可愛くなってきました笑。
「ところで今日もサディちゃんいないの?」
「いますよ?」
「こないだのこと、謝ろうかなって思って…」
「そうだったんですか?隣の部屋で伝票整理してるから行ってみたらどうです?」
「ちょっと行ってくる」
「口説いちゃだめですよ?」
「…うん、今回はやめとく」
毎回ダメですよ!
エルさん、緊張しながら隣の部屋に入って行ったんです。
ちゃんと謝れるかなぁ?って思いながらも、それよりサディちゃん許してくれるかなぁ?って方が気がかりでしたけど笑。
「魔王!魔王!ちょっと魔王!」
悪い予感がしました。
「サディちゃん怖いっ」
全身黒焦げでした。
「今度は何したんですか?」
「スリーサイズ聞いただけなのに」
謝るんじゃなかったんですか!
「必要あります?」
「お詫びに下着プレゼントしようと思ったから…」
いきなりハードル高いプレゼント贈ろうとしないで下さい。
「はい、ポポイ。もう…早く帰って下さい」
「うん、そうする」
「はい、テレポ」
エルさんの全身が揺れ始めました。
「始まりの村に戻ったらギルドによって下さいね。あとメイルさんには攻撃しちゃダメですからね!」
「わかったぁ〜」
素直なのはいいんですけどねぇ。
「またねぇ、魔王〜」
「ハイ。また」
揺れが激しくなって、そして消えていきました。
「あ!また装備のこと言うの忘れてた…」
やっぱり思い出した時にすぐやっとかなくちゃだめですよね。
大切なことなら特に。
「サディちゃ〜ん!キクさん呼んでもらって良いですか?」
しばらくすると白髪の人型をしたキクさんがやって来ました。
見た目の通り私より歳上で、特殊能力をもつ一族の集落で村長をしているおばぁちゃんです。
「ご無沙汰してますキクさん」
「そんな挨拶するくらいならたまにはウチの集落に顔出しな。で、今日はこんなババアに何の用?婿ならいらないよ?」
私どちらかといえばロリコンなので遠慮します。
「キクさんの所にいるお人形さん4体お借りできますか?」
「そりゃ魔王から言われたら貸すしかないけどねぇ」
「ありがとうございます」
「けどヒトからモノを借りるときは理由が必要だよ。あれかい?最近活動始めた勇者の…エルって言ったっけ?そいつに使うのかい?」
「…………」
「あんたを最初に倒した勇者の名前だねぇ」
「…………」
「うちのトコでも噂になってるよ、勇者が最近頻繁にこの城に出入りしてるの。あんた一体何考えてるんだろうって思ってたけど…そうかい。お人形ねぇ笑」
「キクさん…ご足労ありがとうございました。気をつけてお帰りくださいね」
「話勝手に終わらせるんじゃないよ。…あんた、魔王だろ?私ら含むモンスター全てを束ねる長だろ?この城はそこらの上級モンスターでも気楽に入れない場所だってのにナニ勇者なんか出入りさせてんのさ。あれかい?親交深めて油断させるのが狙いかい?情けないっ。その上お人形まで使うって…あんた一体何しようとしてんだい?そこまでしなきゃそのエルって奴に勝てないのかいほど老いぼれたのかい!」
「お言葉を返すようですけどお人形さん使って戦闘が有利になることなんて、ないですよ?」
「だろうね、そういうもんじゃないからね。じゃあどうしてあんたはお人形なんか使おうとしてるんだい?貸すからにはその理由を聞かせてもらおうじゃないか」
「…………」
「言えないのかい?だろうねぇ、きっとバレたら恥ずかしい程の姑息な手なんだろうねぇ。あ〜あ〜可哀想に、久々に現れた勇者に怯えちゃって笑」
「サディちゃんっ!キクさん今すぐお帰りですっ!」
「そうかいそうかい。じゃ、お人形は貸せないね」
「キクさん…」
「ウチらは先代魔王に仕えた一族だ。特別あんたに義理はない。ましてやこんな臆病な魔王に仕えるなんて誇り高い我が一族の恥だよ。あんたと袂を別つ餞別にそのエルって勇者を倒してこようか?そしたらあんたも安心してぐっすり眠、、、」
「メテオ」
上級魔法なんて久しぶりです。ちゃんと撃てるでしょうか?
「そうですか、わかりました。お人形も結構です。私は別に交渉するためにキクさん呼んだわけじゃありませんから」
「あんた…なにする気だい?」
わぁ〜、お城のすぐ上に小さな太陽があるみたいに明るい…って、そのままですね笑。
「お人形さんは貸さないっていうし、キクさんとこは抜けるっていうし、じゃああの集落なんて灰になれば良いと私思います」
「ちょ、ちょっと待っとくれ」
「いや、もう良いです。待てば待つだけデカくなるし、メテオ維持するの疲れるんですよね」
「わかった、貸すから。貸すからやめな!」
「だったら最初から余計な詮索しないで下さいよ」
ここまで育ったらキャンセルなんて出来ないじゃないですかもうっ!
だから私窓から飛び出して自分でメテオ食らいましたよ。
「こんなにMPもHPも減らしたの久しぶりです」
「…………」
「キクさん」
「はいっっっ」
あ〜、すっかり怯えさせてしまいましたね。
「明日からエルさんのパーティにお人形さん貼り付けておいて下さい」
「はいっっっ」
「それから、私これでも魔王なんで。お忘れなく」
「はいっっっ」
「気を付けてお帰りください」
「し…失礼します」
キクさんの帰ったあと、タンスの防臭剤のような匂いがしばらく取れませんでした。
どうして年寄りってああいう匂いするんでしょうね?
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