第7話 私もし占い師なら冒険なんて絶対行きませんけどね
ま、そんな気がしてたんですけどね。
やっぱり数日後にアポロさんが来ました。
「魔王!どうなってんのあいつ!」
あいつとはきっと、いや確実にエルさんの事でしょう。
大体アポロさんのところで足踏みする勇者なんて未だかつていませんでしたから。
「まぁ少し落ち着いてください。サディちゃ〜ん!アポロさんに紅茶と何か羽が休まるものを!」
もうね、あの温厚なアポロさんが怒りの形相です。
始まりの村エリアでは『咬ませ犬のアポロさん』と村人からも親しまれている優しいあのアポロさんをここまで怒らせるとは、エルさん一体なにやってるんでしょう?
「魔王!」
「はい…」
「魔王でしょ?あいつにパーティ組めって言ったの!」
「はい…。その方が早く先に進めてアポロさんの体が休めると思って」
「あいつのパーティの編成知ってる?」
「いいえ。けど普通なら戦士とか武力系が1人と魔法使いと僧侶が基本ですよね?」
「普通ならね!あいつ、ギャンブラー、踊り子、占い師で来やがった!」
戦う気ゼロですね。
「魔王!ギャンブラーの攻撃力は?」
「レベル5ならゼロか1000。攻撃を仕掛けたら1発でアポロさん倒せますよね?」
「仕掛けたらね!じゃあギャンブラーが攻撃を仕掛ける確率は?」
「100分の…8」
「私にそんな100分の8に賭ける必要ある?普通なら5ターンあれば余裕で勝てますよ?あいつなに考えてんですか?それにターン数が進んだって分母減らないんですよ?毎回100分の8抽選なんですよ!だからいつまで経ってもギャンブラーは『くっ!出目が悪い』しか言わないんですよっ!」
アポロさんが相当溜まっているみたいでした。
「あと踊り子ね!毎ターンなにしてると思います?」
「踊ってる」
「はい正解!戦えよ!コマンドあるだろ!何特殊能力使いたがってんだよ!」
「で、アポロさん眠るんですか?」
「眠んなきゃしょうがないでしょ!かかってませんよ?かかってないのに寝たふりするんですから!」
「じゃその間エルは何してるんですか?」
「守ってます」
「は?」
「あいつ1ターン目からずーっと守ってます!私寝たふりしてても守ってんですよ?あいつバカですか?それとも私のことバカにしてんですか!…って、痛ててて」
「アポロさん、あまり興奮すると羽に触ります。サディちゃん!アポロさんに羽の休まるもの早く〜!」
「あと占い師ね!あの占い師も戦闘中何してると思います?」
「占ってる」
「はい正解!『アポロの残りヒットポイントは、300よ』しか言わねぇの!そりゃそうだよね!誰も攻撃してないもん!」
ようやくサディちゃんが紅茶と霧吹きを持って来ました。
サディちゃんがアポロさんの羽にそっと霧吹きをかけると
「あ〜…濡れるわぁ。気持ちいい〜」
と少しだけ癒されたみたいでした。
「で、毎回私がイライラして倒しちゃうんです。パーティ全滅するから一向にレベルも上がらないし、もう私も我慢の限界ですよ!」
それは、さぞかし大変だったでしょう。
「わかりました。私からの助言が少し言葉足らずだったみたいですね。深く反省しています。もし次に来てもアレだったらアポロさん死んだふりしてもいいですから。チャチャッと勇者達に先進んでもらって構いません」
「良かったぁ。今日は一応それの許可をもらいに来たんですよ。さすが魔王、話が早い」
いいえとんでもない。アポロさんの苦労に比べれば何でもないです。
アポロさんにテレポをかけ、その後すぐサディちゃんにメイルさんを呼んでもらいました。
「魔王…俺もうあいつのとこ行きたくないです」
「ええっ!どうしたんですかメイルさん。勇者になにかされ…るわけないですよね?」
メイルさんは非戦闘員だから出会っても戦闘画面に切り替わらないですもんね。
「倒されかけました」
えええええ!!!!
「倒されかけたって、だってメイルさん非戦闘員じゃないですか?コマンドが出て来ませんよ?」
「出てないのに攻撃してくるんです…」
そんなことあるんですか?
「すみませんメイルさん。ケガはなかったですか?」
「ケガはないですけど俺もうあいつに会いたくない!」
「わかりました。無理強いはしません。すみませんでした。あ、今月の給料に危険手当出しておきますね」
「…行く」
「え?でもメイルさん危ないんじゃ?」
「危険手当出るなら行きます!」
あとで聞いたらこの頃メイルさん課金ゲームにハマってたみたいです。
「まぁ危険手当なら出しますけど、本当に大丈夫ですか?」
「あの時は初対面だったから、今度は大丈夫だと…思いたい!」
予測ではなく願望なんですね…。
「わかりました。じゃあお願いします」
2時間後、全身包帯だらけのメイルさんとエルさんがお城に来ました。
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