第6話 パーティーって最初聞いた時は宴会のことだと思ってました

「なに魔王〜!俺アポロ倒すのに忙しいんだけど?」

初めてここに来た時と同じ装備で勇者は現れました。

「その事についてお話があります」

「手短にねっ」

「あのねエルさん。冒険て1人でするものじゃないんですよ?」

基本中の基本ですよ?

「知ってるよ笑。バカだなぁ魔王は」

それはあなたですよ。

「俺は1人が気楽でいいの。最初っから最後までぜーんぶ俺1人で倒して行くつもりだよっ」

超初心者のくせにセルフでエクストラモード選択ですか…。

「いや、さすがにそれは…。途中で仲間がいないと進めないイベントとか出て来ますし。傷ついたら治してくれるヒーラーとかいたらよりスムーズに事は運びますよ?」

それでもエルさんは笑って言うのです。

「大丈夫。俺、サディちゃんの攻撃も耐えたから」

「あとから聞いたんですがサディちゃんかなり手加減してくれてたみたいですよ?」

「え?そうなの?俺、あれでイケるって思ったのに」

無駄に自信家なのやめてもらえないですか?

エルさんの顔がみるみる曇っていきました。

「魔王だから言うけどさぁ」

前置き、おかしいですよ?

「俺、親以外の誰かと一緒にいるの苦手なんだよ。気遣ったりするのもめんどくさいし、回復魔法使ってくれたらいちいちありがとう言うのもめんどくさいし」

とんだめんどくさがり屋ですね。

「ありがとうはごめんなさいと同じくらいコミュニケーションで大事な言葉だと思いますよ?それに、1人で全部やろうとしたらレベル800は必要です。今でレベル2ですよね?逆にめんどくさくないですか?」

「そんなにかかるの???…確かに、めんどくさい」

めんどくさがり屋がRPGしちゃダメだと思うんです。

「それに冒険して行くにつれて徐々に友情とか芽生えて来ると思いますよ。もしかしたらパーティ内恋愛とかのイベントがあるかもしれません」

「恋愛!?どんな?どんな?」

とたんに食いついて来ますね…。

「毎回生き死にかけて戦闘をするんです。守った守られたで恋が芽生えるなんてよく聞く話ですよ」

「いいねぇ、いいねぇ。それ、凄くいいねぇ」

「だからパーティは組んでおいた方がいいです」

「じゃ俺、誰か1人女の子パーティにしてイチャイチャしながら進んでく!」

「ダメです!」

目的がおかしくなってます!

「え〜!なんでぇ、ケチぃ」

ケチとか言う問題じゃないです。

「考えてみてください。2人っきりだとうまく行ってない時ギスギスしちゃうじゃないですか?」

「じゃあアレだ!俺以外みんな女性に、、、」

「ダメです!」

「え〜、デブぅ」

デブじゃないです!これマントです!

「いいですか?恋のライバルは逆に2人の絆を深めます」

ちょっと無理がありますかね?

「あ〜!わかるぅ!」

バカでよかったです。

「なので男2、女2のパーティをお勧めします」

「わかった。そうしてみる」

バカだけど素直なところだけは良いですね。

「それから!」

なに帰ろうとしてるんですか!

「あのね、アポロさんあぁ見えて結構もうお歳なんですよ。慢性的な羽痛にも悩まされてるんです」

「あぁ、だから戦闘中あんなしんどそうな顔してたんだ?」

そんなアポロさんにも勝てないんですか…。

「アポロさんあと2年で定年なんですよ。今年の初めに初孫が生まれたばかりですし私としてはこのまま穏やかに引退して欲しいと思ってるんですよ」

孫が産まれました、と報告に来たアポロさんはそりゃもう嬉しそうでした。

娘さん溺愛しすぎて結婚反対してたアポロさんの説得は骨が折れましたが、やっぱり孫は可愛いですよね笑。

「わかった。パーティ組んだらすぐに倒しに行くよ」

「ダメです!」

「え〜、引きこもりぃ!」

そういう役職です!

それに昨日ゴミ出しで外に出ました!

「アポロさん倒すにはレベル5くらい必要です。ちゃんとパーティ全員レベル5まで上げてから行ってください!」

「は〜い」

渋々な返事ですがまぁいいでしょう。

「ねぇ魔王」

「なんですか?」

「テレポで帰して」

どこまでめんどくさがり屋なんですか!

「早くレベル上げてテレポ覚えてくださいよ」

「テレポってレベルいくつで覚えるの?」

「大体18くらいです」

「まだまだだなぁ」

「まだまだですねぇ」

「じゃ覚えるまで魔王よろしく」

「まったくもう。はい、テレポ」

エルさんの姿がゆらゆらと揺れる。

「あ、サディちゃんは?」

「生理休暇です」

多分昨日遅くまで飲んでただけだと思います。

「サディちゃんによろしくね」

「伝えておきます」

揺れが激しくなり、スッとエルさんが消えていきました。

「あ!装備のこと言うの忘れてしまいました」

また呼ばなきゃならないんでしょうねぇ、多分。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る