第3話 勇者さんご来城

だいたいね、4人が基本なんですよね、パーティって。

勇者と職業別が3人のパーティで来ることが多いかな?

ま、戦士か武闘家、魔法使い、僧侶が無難かな?

正直「あ〜、またかぁ」って思うけど顔には出さないようにしてます。

むしろ勇者以外3人とも踊り子とか「バカにしてんのかな?」って思いますし、戦士3人も「本気かよ笑」って思います。

極たまに召喚魔法使える人を連れて来たりするんですけど、サマナーの召喚する召喚獣って基本私の部下なんですよね。

勇ましくグワーッて召喚されて直後はオラついてたりするんですが、私の顔見た瞬間

「えぇぇぇぇぇ…マジでぇぇぇ…」

みたいに嫌そうな顔してますからね。

私テレパスで

「いいから、あなたも仕事だから遠慮なくやっていいから」

って言うんですけど、やっぱ私会社でいうところの社長ですからね、手加減するんですわ。

で、引っ込む時も「なんか、すいません」みたいな申し訳なさそうにしてるのがホント忍びないですね。

さて、今日はどんなパーティかなぁって楽しみにしてたんですよ。

そしたらね、門番Aさん連れてきたの勇者1人だけなんです。

ボッチです。

最初の印象は

「あれ?性格悪いのかな?」

って思いましたよ。

だって普通私ラスボスなんですよ?

パーティ組んで来るの普通じゃないですか?

それを1人で来るなんて、そりゃもうパーティ組めないくらい性格に難ありとしか考えられないじゃないですか。

けどまぁ私も魔王としての仕事はキッチリこなさないと部下に示しがつきませんからね。

「よく来たな、勇者よ」

って言ったんです。そしたら

「あ、違う違う。今日まだ倒せない、ムリ笑」

って笑うんです。

おかしいでしょ!?

ここ、冒険の1番最後に来るところですよ?

倒せないならなんしに来たの?って思うじゃないですか?

よくみたら装備も木刀に私服、道具なんて薬草2個しかもってないじゃないですか。

村から出る時の装備じゃないですよね!

で、さっき門番Aさんの言葉思い出しましたよ。

「あ、そういえば私に相談あるんでしたっけ?」

戦闘の構えを解いてそう尋ねたんです。

そしたら

「そうなの、ちょっとさぁ、一緒に考えて欲しくて」

って勇者が言うんですよ。

この人何言ってるの?ってなりましたね。

私この考え方あまり好きじゃないですけど、いわば勇者って正義の側で、私は悪の側な訳です。

その対極にいる2人が一緒に考えるってなんでしょ?

けどね、ひとつ思いついたんですよ。

その対極に存在している私たちが一緒に考えられるとしたら、それは『共存』しかないじゃないですか?

私ちょっと反省しました。

見た目でこの勇者を判断して、大事な事見落としてたんですね。

ヒトの中にもちゃんと私たちのこと考えてくれている勇者がいるなんて、私ちょっと泣きそうになりました。

「決められないことがあって」

とその勇者が困った顔するんです。

共存にはルールが必要です。

その中には優先エリアというのがあります。

ここのエリアはヒトの、こっちのエリアは私達のといった線引きが必要です。

すでにあるフィールドをいかに公平に二分するか、その話なんだなと思いました。

「何に困っているんですか?」

サディちゃん、早くこの方にお茶を差し上げて。

今日のこの話は少し長くなりそうです。

けど次の勇者から出た言葉に私びっくりしましたね。

未だかつてそんな勇者いませんでしたから。


「名前。ギルドに登録する俺の名前なにが良いかなぁ〜って。決められないんだよねぇ〜。一緒に考えてくれない?」


私、魔王の息吹を食らわせたい衝動を抑えるのに必死でしたよ。

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