一章 九話 アルタライト

第一章 「再会」

第九話 「アルタライト」


「あなた達はこの前の!」

「いやいや、この前はお世話になりました。國崎さん。」

「いえいえ…。鷹田さんと京川さんの援護がなければ、大変なことになるところでした。」

「いや~國崎さんがいなかったら皆無事じゃなかったよ~!私たちはその補助をしただけっていうか。」

「あれ?もしかして知り合いでした?」

「ああ、零。この前言った、私たちが手伝ったALPの方がこの國崎さんなんだ。お前が連れてきたってことは、知り合いだったのか。」

「ええ、都宮さんに前回お手伝いいただきまして。」

「ってことは零ちゃんがこの前報奨金持ってきたのって…!」

「はい、その時のものです。」

「いやはや…世間は狭いですなあ。ところで、今回はどのような…?」

「ええ、都宮さんに来てほしいところがあるって…。」

「そうなんですよ。タカさん。"例の事件"のことで…。」

「…なるほど。」

「例の事件?」

「まあ、立ち話も何なので、こちらへ。」

 國崎は鷹田に促されるままソファに座る。

 テーブルをはさんで國崎と鷹田が対面する。鷹田の隣に都宮が座り、京川がお茶を持ってくる。奥にはひたすらパソコンと格闘している男が一人。

「(あの様子だと俺がきたことにも気づいていないのか。)」

「ああ、彼は今ちょっと集中してて…。非礼をお詫びする。」

「いえいえ。」

「では、都宮があなたをお呼びした理由を説明しましょう。」


「まずは…、私たちの職業はこの地区を対象とした自警団的な存在です。」

「ちょっとそこで質問があるんですが。」

「どうぞ。」

「この前、都宮…さんがパワードスーツを着用していた件なのですが。」

 鷹田が都宮をみる。

「いやぁ、あの方が早く終わりますし…。」

「お前なぁ…。あれエネルギーも安くないから、使わなくても何とかなるなら、使わないでくれよ…。」

「その代わりに報奨金をもらったんで許してください…。」

「馬鹿野郎……。新しい装備品を買い込んじまったよ…。」

 鷹田の丁寧口調が崩れる。額に手を当て悩んでいるようだ。

「あの…。」

「いや失礼、お見苦しいところを。都宮がパワードスーツを着用していた件についてですよね?」

「はい。」

「実は私、先の内戦に参加していまして。」

「そうだったんですか。」

 國崎はあまり驚かない。今で50代なら内戦期は40代。十分活躍できた年齢である。

「國崎さんの戦果もよくこちらに届いてましたよ。私は元自衛官。北部の軍事基地を攻めておりました。内戦が終わった後自衛官の友人が武器製造の会社を始めましてね。その関係で、最新鋭の装備の試作品を頂いたり、安く購入させていただいているのです。」

「なるほど、そういうことでしたか。パワードスーツは一般人が容易く入手できるものではないので…。」

「いえ、確かにそれは誤解させてしまいますよ。まあでも、怪しいことをして手に入れたわけではありませんのでご安心を。」

「誤解はとけたかな~?」

 京川が会話の間に入る。

「しっかしこの前協力したALPの人が革命の英雄だったとはねぇ~。署で聞いたときは驚いたよ。」

「いえ…私はそんな大層なものではありませんので。」

「そんなことありませんよ!あの時もすごかったですし!」

「國崎さんは内戦の時の活躍も鬼神の如きだったそうで。その辺は私も分かっておりますよ。」

「あまり期待なさらないでください。」

「いえいえ。相当なものだと存じ上げております。そこで、"例の事件"に繋がるわけですが。」

「例の事件?」

 國崎は若干身を乗り出して聞く。

「國崎さんは~『アルタライト』って組織知ってる?」

 京川が言う。

「アルタライト??」

「やはり…。ALP内ではそのことを取り上げてはいませんでしたか。」

「どういうことですか?」

 鷹田は語りだした。


「アルタライトというのは最近になってここ南区を脅かしている武装集団です。彼らはパワードスーツ、レーザーソードなどの最新鋭の装備を携え、反レッツェル主義派の人物の暗殺を行っています。その数13件。」

「13件!?聞いたことないぞ!!?…しかしそこまでの大事なら確かに取り上げるはず…。」

「そうなんですよ。どうやらALPでは何も動きはないようだ。と、なれば私たちのような自警団が動くしかないでしょう。」

「ああ…。そうですね…。」

「今のところ私共の推察といたしましては彼らはレッツェル主義者またはそれらに関係するものと考えております。」

「犯行の内容的に…妥当な線でしょうな。」

「犯行現場などに共通した点もあり、実際に黒いローブを着た者たちがいたという目撃情報も後を絶ちません。同一犯だということはほぼ確定だと思われます。しかし、ALPやマスコミも動かない。…さすがに不自然ではありませんか?」

「ああ、おっしゃる通りです。」

「我々には優秀なハッカーがいましてね。このことを鑑みて、ALPへのアクセスも少々行いました。」

「……まあ。」

「許していただけたようで何よりです。」

「それは話をすべて聞いてから判断しますので。で、そこにいるお方が…?」

 カタカタカタカタ。パソコンを目にもとまらぬスピードでタイピングをしている。

「ええ。彼は本当に優秀でして。ハッカーだけでなく戦闘員としても活躍してくれます。今みたいに集中してると周りのことが全く見えなくなるのが、玉に瑕なのですが。」

「その、アルタライトについてまだ情報はあるんですか?」

 國崎は若干食い気味で話を聞き出そうとする。

「ええ、彼らが様々な違法行為をこの地区で行っている以上自力で色々調べ上げました。その結果アルタライトの構成員にはある特徴があったのです。」

「特徴?」

「その特徴は二つ。全員が恐らく10代であるということ。」

「随分若いな…。もう一つは…!?」


「…全員が『片明院』出身の者である、ということです。」

「片明院!?!?」

 國崎が大声をあげて立ち上がる。それに対して事務所のメンバー全員がそれぞれ反応を返す。

「國崎さん~。近所迷惑。」

「(カタカタカタカタ)」

「私もちょっとびっくりしちゃいました。」

「…まあ、驚くことも無理はありません。あなたは片明院襲撃作戦において最も功績の大きかった人物。彼らが連れていった子供たちがここで出てくるとは思いもよらないでしょう。」

「まさか…あの子たちがか・・・!?」

 國崎は信じられないといった様子でソファにドサリと座り込む。

「参ったな…。でも、なんであの子たちが武装をできるほどの資金を…?」

「それに関してはまだわかっていません。何者かが裏で手を引いている可能性もありますし。」

「……彼らがこの社会に対して反抗する理由は十分にある。だから、今回の件もそれを考えると何らおかしくはない。」

「理由…ですか?」

 都宮だけが疑問の顔を浮かべている。

「知らないのか…?」

「ええ、彼女はあの内戦を経験していませんし、何せ純粋です。ALPの人と話をするときが適当かと思いまして。」

「いい加減な…。」

「ほら、はてなといった顔つきですよ?」

「そうか…。零のために説明しよう。」

「あ、ありがとうございます!!」

「片明院っていうのは『片明萬重郎』が設立した孤児たちを教育する施設なんだ。」

「そんなのが…。」

「問題だったのは孤児ができた原因とその目的だ。レッツェル主義下では激しい言論弾圧が行われた。そこで孤児問題が大きくなった。政権はその孤児たちを集めて、レッツェル主義への忠誠心を植え付けた優等生の『開発』する施設として片明院は作られた!」

「それは…ひどい、ですね…。」

「そこで俺たち義勇軍は、この片明院を襲った。」

「え、子供たちがいるのにですか?」

「ああ、俺達の目的はその『子供たち』だったんだ。」

「どういうことですか?」

「俺達はその子供たちを攫うことによって、世間に『悪しきレッツェル主義政権から子供たちを救った!』と大々的に広めることができると考えたんだ。それで世論を味方につけて戦力を拡大する。言い方は悪いが俺たちが内戦で勝つための道具として使おうとしたんだ。」

「ええ!?そんな、子供たちを大人の理由で内戦につき合わせたってことですか!?」

「それは…認めるしかない。だけど、子供のことを何も考えていなかったわけではない。俺達は道具として使いはしたけれども、革命がうまくいったら我々が手厚く保護、つまり教育機関などを与えて、自立できるようにするはずだったんっだ。」

「はず…?」

「そうだ。それはただの空想に終わった。レッツェル政権の独裁的な政治からの脱却として軍関係の者は、つまりは武官が政治に参加できないようにされた。あとから湧いて出てきた、それでいて狡賢い政治家によって。これがどういうことか分かるか?零。」

「ええと…つまり、自分たちが革命前に思い描いていたことは上手く実現できなかったってことですか?」

「そう。俺たちが成し遂げた成果を殆ど横取りされたような感じだ。何の痛みも伴っていない連中が政治を仕切り、俺達をその下に置いた。…片明院のことも散々長い議論をした後で棚上げさ。」

「ってことは…。」

「…彼らは何の訓練も教育も受けれず世間に放り出された。彼らを雇ってくれる所は殆ど無かったそうだ。悪とされた連中の教育を幼少期に受けた恐ろしい子供としてな。」

「……そんなの、理不尽すぎます…。」

「ああ、彼らは本当に理不尽な目にあった。俺らにもその責任の一端はある。むしろ、彼らからしたら俺たちが、いや、今のこの日本が憎しみの対象だ。」

「改めて聞くと、本当に不幸な連中だねぇ。」


しばらく、事務所で沈黙が流れる。


「そこでなんですが。國崎さんには是非このアルタライトの一件に参加していただきたい。」

「…俺が、か?」

「ええ、我々はこの一件に参加していただけるALPの方を探していたのです。零があなたをこちらに呼んだのはそれについてです。」

「だが、都宮はアルタライト…片明院のことについて全く知らなかったが…。」

「彼女のような性格の者は、理由よりもしたいことだけを伝えた方が上手くやってくれますし。今回だって『ALPに知り合いができたらここに連れてこい』という任務を上手くやってくれたでしょう?理由は後からでもいいタイプの人間はいるんです。」

「(…こいつ、油断はできないタイプか…?)」

 國崎が一考したあと、

「何故ALPの力が?聞いたところ、戦力や装備はみなさんで十分ではないんですか…?」

 現政権を憎む組織がある以上國崎も動かないわけにはいかない。しかし、この鷹田という男。なかなかの策士であるという可能性もある。國崎はこの件に乗らない理由はあまりないが、"乗る理由"がいまいち感じ取れてなかった。

「あなたがこの件に関して我々と協力するメリットは…正直あまり。」

「「「ないのかよ!?」」」

 身内からも突っ込みが入る鷹田。

「しかしです。彼らの装備品もかなりのもの。手加減していてはこちらに危害が及ぶ可能性が大です。と、なれば敵を殺さざるを得ない局面があるかもしれない。だが我々は全員武装市民ですが殺しを許されているわけではありません。正当防衛というには少々きついものがあります。我々が彼らを追っているのですから。」

「…つまり?」

「我々が唯一確実に殺しを合法化できる方法はただ一つ。」

「………ALP警官が許可を出した時…。」

「…そうです。事後承諾でもいい。この区の治安を維持するためにアルタライトと激しい戦闘になるのは目に見えています。…ALPも動きませんしね。」

 そう。ALPが動かない、ということの重大さを國崎は理解していた。ALP上層部がもしもアルタライトと繋がっていた時「レッツェル主義者、およびそれに通ずる反社会的集団との戦闘における武装市民による処刑の許可」が出辛い。それならば、味方となるALPの人間を作っておいた方が都合がいいというわけである。

「…俺が"向こう側"のスパイという可能性は考えなかったのか…?」

「結果論ではありますが例が偶然革命の英雄を連れてきましたので…。革命の英雄ともあろうお方がレッツェル主義者と通じている可能性は低いですし、零があなたのことについて熱弁していました。『あの人のような人こそが!日本をよくしていくんですっ!!』ってね。零は正直な子ですし、何気なく人の本質を見抜いたことをいう子でもあります。そのことを総合的に判断したうえでペラペラと喋りました。」

 國崎が机にを踏んずけて鷹田に向かって銃を向ける。

 その瞬間。 

 國崎の首の右側には都宮の刀の切先、左側では京川が國崎の頭に拳銃の照準を合わせている。鷹田は手で制止の合図を出している。

 机のお茶がこぼれタイピング音が鳴り響く。

「いや失礼。これなら"大丈夫"だ。」

「でしょう?」

 國崎は両手を上げ、足を下ろし、ソファに座る。

 鷹田は笑顔で答える。

 構えてたものは武器を仕舞う。

「楓恋、机を拭いてお茶のお代わりを。」

「はいはい~っと。」

 京川が奥の部屋のぞうきんを取りに行った。

「(…何が大丈夫なものか。左手の位置。アレは確実に二丁目を取り出す仕草。さらに言えば首が若干斜めを向いていた。零の刀をかわすためだろう。……それに机を踏みつけて音こそ出していたものの本気の殺意は感じなかった。手加減してあの反応速度なんだろう。彼が本気を出した場合…皆無事では済まなかっただろうな。)」

 鷹田は冷や汗が頬をつたうのを感じ取った。

 京川が雑巾でお茶を拭き取り終える。

「まあ、いいです。わざわざ殺人が起きる可能性やALPのことやアルタライトのことを聞いた以上、私に断る理由はないかと思います。」

「おお、引き受けてくれますか!?」

「断る理由はありませんが、受ける理由はありません。今のところそちらのメリットが大きい。なんならALPを独自で調べることも可能です。私が参加する理由は"まだ"足りない。まだ情報があれば教えて頂きたい。」

「そうですよね…。やはりそちらのメリットは最初に言った通り少ない。うむ、やはりきつかったか…。情報…、ああ、そういえば何とか撮ることができた写真がありました。零、頼む。」

「あ、はい!」

「そういえば何故アルタライトという組織名が分かったんですか?」

「我々は彼らが起こした事件に当初から関わっていました。しかし彼らは装備品がそこらのチンピラと違い、充実しており未だに追い詰められていません。数件目から同一犯でありそこそこ大きな組織的な犯罪であるということが分かりました。今は割愛しますが本当に苦労の連続でした…。何とか居場所を突き止めたり、ハッキングで指示などのメールを覗き見たりして組織名や構成員の特徴をつかんだという次第です。」

「案外、泥臭いというか地道な方法で追い詰めてきたんですね…。」

「あ、失礼します。写真を持ってきました。」

 都宮が十枚にも満たないほどの写真の束を机に置く。

「それが現段階の成果ですかね…。隠しカメラの中でも中々解像度の高い奴で撮れました。最近では追えるレベルまで来てるんですが、この戦力だと後手に回るとどうしてもきつくてですね…。」 

「そうなんですか…。なるほど…。」

 基本黒のローブ。夜間ということもあり写真越しだととくに見づらい。時折覗く顔は10代ほどの幼げな顔つきの面々が多い。

「お代わりです~。」

 京川がお茶のお代わりを持ってくる。

 するりするりと写真を入れ替えながら見ていく。

 しかし、最後の一枚。それが國崎を驚愕させた。


 ガタッと國崎は立ち上がる。

「何かありましたか?」

 鷹田と都宮は一瞬驚き、視線を向けた。

「ああっ!お茶がぁ~…。」

 京川の悲嘆に暮れた声が聞こえる。

「何で…こいつが…。」

 國崎は投げるように机に写真を置き、もう一度、ソファにどさりと座り込む。

「彼が…何か?」

「そいつは…元ALPいや、元義勇軍の鞍馬春人だ。」

「何!?義勇軍の者が!?」

「え…それって大変なことなんじゃ!?」

「これは…凄いことになってきたねぇ。」

「……参加する。」

「え?」

「俺はこのアルタライトの一件に参加しよう。何としても聞きださなければ。それに、ALPの者が直接参加してるとなればいよいよ独自で調べるのは難しい。あんたたちの力を借りたい…。」

「!!そうですか!」

「本当ですか!?」

「おお~いいねぇ~。」

「ああ…俺はこのことに対してケリをつけなければいけないような気がする。よろしく頼む…!」

「改めてようこそ、南区自警団組織『ヴェヒター』へ!!」

「よろしくお願いします!國崎さん!」

「私のこともよろしくね~。あ、苗字呼びづらいから真人君でいい?あたし年上だと思うし…。」

「ああ…。だが俺は25だが…。」

「あたし28。」

「えっ!!見た目がすごい若い!!」

「おおう、素直に褒めて貰えてお姉さん嬉しいな~?」

「勘弁してください。」

「拒否!?」

「まあまあ、いいじゃないか。では、"國崎君"。ここからは私もタメ口で行かせてもらうよ?」

「あ、ええ。お願いします。」

「君もタメ口でいいよ。敬語苦手なのが地味に出てたよ?」

「ああ、バレてたか…。」

「國崎さん!よろしくお願いしますね!!」

 都宮が國崎に微笑む。

「ああ!よろしくな!!」

「っしゃー!!終わったあああああ!!!!」

 パソコンと格闘してた男が宣言する。眼鏡をはずしたら長髪で左目が隠れてた。

「おお!お疲れ様!!」

 鷹田がねぎらう。

「…ったく、経理をハッカーに任せんでくださいよ…。あっお客さんって、あなたは!?」

「ああ、國崎真人だ。今日からこの自警団と協力することになった。」

「俺です!!覚えてませんか!?俺、義勇軍出身です!!片明院の二階であなたを手伝った!!」

「……。ああ!あの時の!!」

「はい!黒河優人(くろかわりゅうと)です!!」

「なんと…知り合いだったか!國崎君、これは暇しないで済むんじゃないか?」

「ああ、ALPと違って、楽しめそうだ。」


 夕日は沈み、夜となっている。國崎と都宮は帰路についている。

「國崎さんが参加してくれて百人力って感じですよ!!」

「おいおい。…だが、今回は本気で挑ませてもらう。ALP内部で何があってもだ。」

「その、お知り合いがいたからですか?」

「それも大いにある。だが一番は『過去の清算』ができそうだからだ。」

「過去の清算?」

「たとえ、文官どもが孤児たちを投げたとしても、…俺たちがなんとかできたはずなんだ。」

「え?」

「自分たちで出資して施設を創ったり…な。だが、それに対しての努力もしなかった。義勇軍は大半がALPとして雇用された。知っていたはずなんだ。皆。」

「…。」

「だけど俺たちはそれに対して"見て見ぬ振り"をした。みんなもう関わりたくなかった。俺も例外じゃなかった。革命前は教育機関を作るなんて言ってたが、そんなことはできなかった。口先だけだった。」

「それは…、でも、仕方のないことじゃ…。皆さんも疲弊していたのかと…。」

「そんなこと、彼らの将来を考えたら言い訳にはならない。踏ん張るべきだった。だけどみんな、政治家たちに文句を言うだけで終わった。革命の英雄なんて、名前負けさ。」

「そんなことは!」

「俺は、そんな現実から逃げた自分を、過去を清算する。いや、この件を解決しても清算なんて大層なことにはならない。自己満足で終わるかもしれない。でも、俺との縁が深すぎるこの事件には、これだけは確実に言えると思う。だから関わろうと、お前たちと協力しようと思った。」

「それは…?」

 國崎は夜の星空を見ながら、いや、星空ではない何かを空に思い映しながら言った。





「これは…俺の戦いだからだ。」


第九話 了

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