一章 四話 任務

第一章「再会」

第四話 任務


「國崎真人特位捜査官到着しました。」

 現場に到着した國崎真人が機動隊指揮官倉本聯太郎に報告する。

「よく来てくれました國崎殿。この膠着状態を打ち破れるのはあなたしかいないと思いまして。」

 人質立て籠り事件の現場は物々しい雰囲気にあふれている。時刻は午後7時。初秋ということもあり薄暗い。だが現場は、建物周辺に止めてあるパトカーや装甲車のランプでやけに明るい。

「御覧のとおりのありさまでして。発生した午後二時からずっと粘っています。犯人は過激派レッツェル主義者集団『鉄血』です。要求は去年逮捕した前リーダー赤星亮と三名の幹部の解放。先月建てられた平和記念館を襲撃。人質は13名。三時間前に半数以上が解放されました。多かったので管理しきれないと判断したのでしょう。敵はおそらく10名。解放された人質の証言から推測されました。」

「なるほど。で、私は何をすれば?」

「この記念館には裏口があります。あなたにそこから内部へ潜入していただきたい。」

「正気ですか?潜入がばれたらどうなるか一目瞭然でしょう。」

「承知しております。ですがこの膠着状態を打ち破るにはこれしかありません。じつは犯人が今から30分後に要求が満たされなければ人質を一人殺すと言っているのです。時間がない。あなたは内戦時代、潜入任務もこなしていたと聞きます。腕前も相当なものだと…。」

「私が潜入するまでもないと思いますが。」

「…実は人質解放の時、それに乗じて突入する計画があったのですが失敗に終わってしまいまして。裏口などの警戒度が上がってしまったのです。裏口には現在三名の武装した敵がいます。どれもバリアスーツを着ています。」

「なるほど…。かなり攻略は難しくなっていますな。これはつまり…、あなた方の尻拭いをしろと言われるのですな?」

 倉本は國崎をしばらく見つめ、表情を変える。

「そういうわけではありません。あくまであなたの腕前を見込んで」

「自分らが失敗したとき、私に責任を押し付ける気でしょう?」

「…國崎特位。あなたは自分の立場をお分かりですか?あなたがALPにおいてもらえてるのはその戦闘能力や任務遂行の確実さが高いからです。逆に言えばあなたはそこでしかその力量を示せないのです。お判りでしょう?」

 國崎は(もともとはそちらのミスが原因でしょうに。)と言いたい気持ちを抑え、耐え忍ぶような表情をしたのち、ニヤリとし

「わかりました、成功すれば手柄は私のものですからな。その任務引き受けましょう。潜入任務となればパワードスーツの方がいいな、ありますか?」

「もちろん。」

「それと、」

 國崎は無線マイクに手をかけ

「伍快!居るか!?」

 と大声を上げる。人ごみの中から、重装備に身を包んだ背の低めな男が現れる。

「はい!伍快巡査、ただいま到着しました!」

「俺の任務に同行しろ。」

「本当ですか!?」

「ああ、それと、」

 國崎は再度無線マイクに手をかけ

「楽原!狙撃部隊に連絡しろ!俺が合図するまで手を出させるな!」

『了解しました。ただいま狙撃部隊は建物玄関から見て、十二時の方向に控えております。常に二階の敵影は捕捉し続けています。』

「頼む。」

 そして國崎は装備品のあるトラックに行き、パワードスーツを着込む。装着中に

『やあ、國崎君。』

「博士!どうやって通信に!?」

『今回君が装備室で着けた装備品は私の最新作ばかりだからね。サポートするよ。』

「そうか、助かる。見た目は旧式と変わらんから、気づかなかった。」

『私もわかりやすいデザインにするべきだったね、すまない。』

「いや、いいんだ。」

 倉本が近づき、

「ところで國崎さん。裏口のバリアスーツ持ちはどうされるのです?」

「バリアスーツ持ちが三人。これを簡単に攻略する方法がある。」

「それは一体?」


 國崎は裏口近くの塀に身を潜めている。無線で倉本の声が聞こえる。

『しかし、電磁パルスグレネードとは…。盲点だった。』

「バリアスーツも電子機器。破壊すれば機能はしません。バリアスーツ対バリアスーツに重きが置かれているので、そこを突くべきでしょう。」

 電磁パルスグレネード。爆発したら電磁パルスを発生させ、電子機器を破壊しつくす。電子機器に頼り切りな現代において脅威となりえる強力な武器。

 國崎が伍快に待機の指示を出す。國崎のつけている眼鏡には敵影が立体的に映っている。國崎は狙いを定め、電磁パルスグレネードのピンを抜く。

「(1…2…)」

 3のタイミングで三人の敵影の真ん中に来るように投げる。敵の声が聞こえる。

「なん…っ!」

 グレネードが弾け、電磁パルスが周囲に発生する。一番左の敵の眉間に風穴があく。裏口に一番近い敵が気づき、小銃を構えようとする。だがそれは叶わない。

 構える前に、敵の喉元にナイフが突き刺さっている。國崎が左手の逆手で直接突き刺した。一番右手の敵が無線に手をかけるが次の瞬間には膝から崩れ落ち、地に臥せる。頭から大量の血が流れる。

「す…すごい。」

 伍快が戦慄する。そして國崎が無線にこう告げる。

「今から、人質救出作戦を開始する。」


第四話 了

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