第4話 お約束
怪人災害対策統合組織、通称ヒーロー。
いったいいつから続いていたのか知る由もない、ヒーローと怪人の戦い。
その戦いは、一般人には伝えられず、ひっそりと、しかし、劇的に繰り広げられている。
子供の頃、誰もが一度は憧れるヒーローであるけれど、誰でもなれるわけではない。そこには条件があり、条件に適応しなければヒーローになれないのだ。
ただ、逆に、条件に合ったならば、いかなる場合でもヒーローにならなくてはならない。
そして、進藤はヒーローの条件を満たしてしまい、ここにいる。
怪人と闘うために。
「今回の案件は、緊急度A、難易度C、属性『制圧』だよ」
「げっ、『制圧』っすか」
「それを私とラックくんとアンジェちゃんでやるの? ちょっと荷が重くないかしら?」
ラック(圭佑)とロゼが否定的な意見を述べていると、アンジェ(進藤)が首を傾げた。
「ねぇ、よねが、……ラック、私にもわかるように説明してちょうだい」
「あぁ、わるい。要するに力仕事なんだ、今回の仕事は」
ラックは、少し間を置いてから説明した。
「緊急度と難易度は、まぁ説明しなくてもわかるよな。仕事にはそれに加えて属性がある。『制圧』、『交渉』、『探索』、『捜査』などだけど、僕達が対応するのは、だいたいこの4つだ。言葉でなんとなく仕事の内容はわかると思うが、『制圧』は、暴力的な怪人が現れたから、武力によって制圧してくれ、って仕事」
ふぅん、とアンジェは頷く。
「で、あなたは弱いから『制圧』をこなせないと」
「ずばり、そういうことだ」
「胸を張って言うことじゃないよ、ラックくん」
ロゼはそう言うが、事実なのだから仕方ない。
「ねぇ、井之頭博士、やっぱり無理じゃない?」
「頼むよぉ、ロゼちゃん。緊急度Aなんだもん。早く対処しないと上の人に怒られちゃうよ」
「せめてレッドくんを待った方がよくないかしら」
「レッドくんは、別の『制圧』の仕事をしていて、来られないんだよ。時間稼ぎだけでもお願いできない?」
レッドと呼ばれたのは、この支部のエースであった。その名の通り、戦隊モノのヒーローのような格好をしており、レッドというコードネームは若干いじめくさいと圭佑は思っていた。
だが、その力は歴然としたもので、制圧任務において彼の存在は大きい。
「なんとか切り上げさせて、呼び戻しなさいよ」
「むり言わないでよ。レッドくん、今、難易度Aの制圧をしてもらっているんだから。彼がやらなかったら、この街、一瞬で消し炭だよ」
アンジェはぞっとした表情を浮かべているが、まぁ、よくある話だ。レッドは、その豪腕で何度も世界の危機を救っている、らしい。
それでも、しばらくロゼはごねていたが、
「もう仕方ないわね」
やれやれと肩をすくめ、納得の意を示した。
まぁ、バイトのラック達と違い、ロゼは正式にヒーローを担っている。ここで断ることなどできないだろう。
「それじゃ、ラックくん。出動するわよ」
「マジすか」
ラックは仕方なしというふうに、ロゼに従って立ち上がった。
「アンジェちゃん、早く支度するの」
「支度って?」
ハテナを浮かべるアンジェに対して、ロゼは軽い口調で告げた。
「変身に決まっているでしょ」
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