07-4

「防人ちょっと来い」


ショートホームルーム終了後、四時間目と放課後に行われる先輩たちの部活紹介を植崎と共に見て回ろうしたところを智得先生に呼び止められる。


――ちょうどいいや。昨日は精神的ダメージがでかくて聞きたいこと聞けなかったし、ついでに聞いておくか。


「何ですか?先生」

「まぁ、ちょっとついて来い」


そういい教室を出ていこうとする智得さんについていく。

そして教員寮のフロントのソファーに向かい合って座る。


「あの、何のようなんですか?」

「今さらかもしれんが別にこんなところまで来る必要はなかったかもしれんな」


――えぇ、ほんとそうなら今さらですね。


「…でだ防人なぜ昨日は休んだのか説明してもらおうか」

「休んだ?何をですか?」

「授業をに決まっているだろう。まぁ別に学園施設の紹介をしただけだがな」

「え?」


――授業を休んだ?僕が?いや、そんなことはないはずだよ。だって昨日は少し早めに寝たし、あーでもなんかよくは覚えてないけど長い夢を見た気はするし、もしかしていやでもまさかそんなことって、…朝日付も確認しとけばよかったな。

そうすれば多少は頭のなかで整理つけられたかもしれないのに…。


「あの、すいません今日何日ですか?」

「4月4日だが?」


―― …てことは一日中あの夢を見ていることになってたのか。そういえばきの…一昨日零さんが記憶を戻すと言っていた。

じゃああの夢がそうだったのかな?

うーん僕が子供の頃くらいの夢を見たような気がするんだけれど……ダメだ。ほとんど夢の内容を思い出せない。


「どうした?」


僕が頭を悩ませていると姉さんが心配したように聞いてくる。


「あ、いえ何でもないです」


――考えるのは後にしよう。


「それでえっと、何のようでしたっけ?」

「なぜ昨日は休んだのか、だ」

「あぁ、えっと…」


――あれ?これどうやって答えよう?


『一日中寝てました』…なんて言えるわけないし、 それっぽいことを言ってごまかした方が懸命なのかな?

『昨日は休みではなかったのですか?』…わかって言っているのがバレバレだ。…うーんなんて答えれば。


「どうした?なぜ昨日は休んだのか早く答えないか」

「あ、えっと…」


―― これ以上黙っているのもまずい。

何も思い付かないし、正直に言おう。うん。


「寝ていました」


――あーばかばか言葉が全然足りないよ。

あーほら、すごく怖い顔になった。


「ほぅ、つまり私の授業などどうでもいいと思っているということか」

「あ、いやそういう事じゃなくて…」

「ならばどういうことなのか教えてもらおうか」


姉さん…いや、先生になら別に本当の事を話したところで特に問題ないか。


「零さん…学園長に昨日呼び出されて、えっと記憶を僕に戻したらしいです」

「……そうか」


僕がそう言うと彼女は目を見開いて驚いた表情になる。

その顔はとても珍しくて印象的だった。

でもそれは可愛かったとかそういうのじゃあないんだけど……何だろう?


何かしらの違和感がある……うまくは言えないが、今まで無かったものが気づかないうちに存在してそれがいつの間にか日常に組み込まれていた。そんな違和感を感じる。


「ねぇ、姉さん」

「どうした?」

「なんで姉さんはこんなところにいるのですか?」

「…何か思い出したのか?」

「いえ、単に疑問に思っただけで」

「なら、話は簡単だろう。お前も零…彼から聞いたように私もこの世界のことを知っていてそれでここで教員を行うことにした。…それだけだ」

「それだけ……ですか?」

「ん、それだけだ」

「そう、ですか」

「もういいか?」

「あ、はい…ありがとうございます」


まだ満足はしていないがこれ以上植崎を待たせるのも悪いしな。


「 じゃああの、部活見てみたいんでそろそろ」

「…防人、見て回るのは構わないがお前は部活に入れないぞ」

「はい?」

「いや、正確には部活に入れるが行く暇があまりないと言う方が正しいか」

「それってどういう…」

「お前は昨日休んだからな。余った1枠に自動的に入ることになった。それがこれだ」


そう言って彼女は僕の生徒手帳に一通のメールを送信する。


「これって、本気ですか?」


僕はその役割に驚愕の声を上げる。


「何を驚くことがある?」

「いや、でもここは……僕には荷が重すぎますよ」

「仕方あるまいこれが最後まで残った役職だ」

「そんな…」

「諦めろ」

「うぅ…分かりましたよ」

「…では決定だな。今日の放課後活動があるのでちゃんと向かうようにな」


やりたくないけど…仕方ない。

休んだこっちが悪いんだし、ちゃんと向かわないとな。

僕は頷き、了承してから自分の部屋に戻る。

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