06-4
次の日
昼過ぎなった頃、家を出た僕は今日もりょうとあのゲームで遊ぼうと椎名家のインターフォンを鳴らす。
「あれ?」
待ってみてもインターフォンから声が聞こえてくることはなく、静かに扉が開く様子もなかった。
またいつもの調子でおちょくっているいるんだな。
ぼくはそう思って30分ほどそこで待った。
そしてもう一度インターフォンを鳴らす。
が、返事はない。
「おーい!気づいてるだろ!ぼくだよ防人だよ!詐欺じゃないぞぉ!!おーい、はやく玄関開けてくれよぉ!」
いつもりょうのいる部屋の窓に向かって叫ぶがやはり返事はなかった。
「…またふざけてんだな。そうなんだな!」
ムカッとした僕は玄関の前で立ち尽くすことにしてみた。
しかし一時間、二時間と携帯で時間を潰しながら待っていても一向に扉が開く気配はない。
「……本当に……いないのかな?」
ぼくは最後にもう一度だけインターフォンを鳴らし、1分ほど待ってから肩を落として自分の家に帰ることにした。
◇
その夜
夕御飯とお風呂を済ませたあと、パジャマ姿でりょうからもらった腕時計をベッドに寝転がって眺めていた。
―― 一体どうしたんだろう?…あいつが家にいないことなんて今まで1度もなかったのに…
「家族みんなでの旅行…はないか」
―― あいつの両親は共働きでほとんど帰ってくることがないって言っていたしな。
「偶然今日がその帰ってくる日だった?」
――いや、それはないな。もし、そうだとしたらさすがにメールか電話かで伝えてくれているはずだからな。
「じゃあ何でいなかったんだろう?」
――わからない。 分からないけれど…何か変な気持ちだ。
心配とか怖いとかそういうのをぐちゃぐちゃに混ぜあったのがなんというか心のそこから沸き上がってくるようなそんな感じ。
「…こういうのを胸騒ぎって言うんだったけ?」
――どうなんだろう?
ぶつぶつと呟きながら考えているとバタンと扉の閉まる音が一階の方から聞こえてくる。
「父さんたち、帰ってきたのかな?」
―― なら、友達が出来たこととかプレゼントを貰ったことを話さないといけないな…
そう思って腕時計を腕につけて直してから部屋を出て階段を下りる。
下からぶつぶつと話す声が聞こえてくる。
「…目標(ターゲット)はどこ?ヒロ」
「上じゃないか?たいちょー」
「…適当だな」
―― …違う…父さんたちじゃない。
「まさか泥棒が?…玄関の指紋認証をどうやって」
ぼくは足音を立てないよう静かに廊下を進み、角の所から玄関を覗きこむ。
―― 子供?歳は僕と同じくらいだけど何で……でもあいつらくらいならぼくでも追い払える。
ぼくは急いで部屋戻り、とある銀髪のサムライを真似るためにネットショッピングで買っておいた木刀を掴み、一応と引き出しからゴム製のクナイや手裏剣をポケットに詰める。
「ここ?」
「んー多分…じゃ、こっちは俺がやっとくから昨日の所(とこ)とここの証拠隠滅っての?任せたわ」
「了解」
ぼくは聞き耳を立てて部屋に入ってくるのを待ち構える。
カチャリッ
「はぁ!」
扉が開くと同時に木刀を振り上げ、入ってきたヤツに向けて木刀を振り落とす。
「!?」
「あっぶないなぁ~」
目の前の男は両手で降り下ろしたぼくの木刀を右手にもったサバイバルナイフで止められる。
「くっ」
「まぁ、良かったよその剣さば…お?」
ぼくは後ろに下がり、ポケットに入ったゴムのクナイ、手裏剣をそいつに向かって投げる。
「いやぁ~びっくりした。まさかそんなものまで持ってるなんてね。…でも」
彼は身を低めると同時に床を蹴ってぼくの懐に飛び込んでくる。
「遅いよ」
「がっ」
ぼくは彼の持つサバイバルナイフの柄でみぞうちを突かれ、意識が飛びかける。
ぼくは手に持った木刀を床に落とし、彼が離れると同時に前のめりで倒れる。
「さて…ん?なんだこの手裏剣ゴム製じゃん。…ほんとにこいつ矢神さんが言うほどの重要人物なのか?」
「ヒロ…」
「ん?たいちょー…こっちは問題ないよ」
「…知ってる」
「…そうかい。で、そっちは?」
「終わってる。…もう少しでキッチンが燃えてガスに引火する」
「了解。んじゃさっさと連れていこうか」
――何なんだ、こいつらは?…もう…だめだ。
家に入ってきたドロボー二人の会話を聞きながらうっすらと開けていた瞳を閉じる。
揺れを感じ、うっすらと開けた目の先には燃えている自分の家があったが、かろうじて残っていた意識はすぐに暗転した。
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