06-1《過去》
4月2日 月曜日 時刻17時30分
なんとなく納得がいかないまま、僕は自分の学園寮の部屋に戻ってくる。
「ただいまー」
とは言っても誰もいないのだけれど…
僕は靴を脱ぎ、部屋に入ると私服に着替えてベッドに腰かける。
「はぁー忘れている記憶は光牙を通じて戻したらしいけど…一向に戻ってきたという感覚無し」
普通おかしいとは思わなかったのかなぁあの時の僕は…なんであの人が僕の過去を知っているのかとか
…まぁそれは多分過去に出会ったことがあるからだとかそういうのだと思うけどね。
でも、どうやってその記憶をデータ化して手に入れていたのか…
「そう言えば零さんが言っていた…」
――二次試験を行った内容は現実で操縦法を知らなければ、動かすことはできても戦闘など到底できるものではない。
ということは…植崎も知っていたのか?
ここが戦争を行う軍事施設であることを…
でも、最初はGWの操縦なんて出来ていなかったし…あいつは…本当にどうなんだろう?
知っていたのかな?
でも、あいつのことだから知っていたら話しているときにポロっと言ってしまっていそうだけど…
単に忘れているだけとか…先生が呼び出すのを
「…うーん考えていてもらちがあかないな。明日も早いんだし、さっさと寝よう」
僕はぶつぶつ呟きながら明日の用意、入浴、夕食を済ませてパジャマに着替えると生徒手帳をベッド上のスタンドに立ててから明かりを消してベッドの中に入り込み、瞳を閉じる。
・・・
7月末
キーン、コーン、カーン、コーン…
チャイムが鳴り、先生が前方の黒板モニターを消して手を叩く。
「はーい、これで今学期最後の授業を終わります。…さて、明日から夏休みです。ですが、ちゃんと8月が終わる前にあなたたちに配った課題ファイルをきちんと終わらせて私に送ってくださいね」
「「はい!!」」
先生の言葉に児童たちはみんな元気よく返事をする。…一人(ぼく)を除いて。
「……」
返事をしなかったことに先生は気づくことなく話を進め、子供たちを終業式のために体育会にゆっくりと誘導する。
「はぁ…だるぃ…」
ぶつぶつと呟きながらも返事をしなかった僕も体育会へ足を運ぶ。
ぼくの名前は慧。このクラス委員長 (ジャンケンで負けて決まった) 9歳です。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
「ん?」
ぼくが終業式後の帰りの会が始まるのを待つために読書をしていると同じクラスの女の子が声をかけてきた。
――えっとこの子は…あぁそうだ。近所に住んでるえっと確か名前は…ミナトって言ったっけ?
ぼくは図書館で借りた本にしおりを挟んで閉じ「なに?」と短く返事をするのと同時ぐらいのタイミングでドサッと『重要』と書かれたプリントの束が机の上に置かれる。
「…これは?」
「手伝って」
「はぃ?」
「だから、このプリントこれで全部なんだけど…運ぶの一人だと大変だから手伝って」
別にお昼前に小学校も終わるし、この後帰ってから特にすることも無かったから別によかったんだけど疑問に思い、聞いた。
「なんで、ぼくが?」
友達とかは?と聞こうとしたけれどその前に彼女の口が先に動く。
「あんたなら家も近いし、クラス委員長なんだから困っているそれも女の子を手伝ってくれるのは当たり前のことでしょ?」
「…後半はなんとなく納得がいかないけど、わかったよ」
「ふふっありがとう。私も半分手伝うから…あ、ちょうど先生も来たみたいだし、また後でね」
「ぅん、それじゃ」
ぼくは返事をしながら軽く片手をあげる。
帰りの会も終わり、ぼくは手提げバックに入っているものをランドセルに移し、頼まれたプリントを手提げの中に入れ始める。
数分後、きれいにバックにプリントを全て入れ、僕が彼女の家へプリントを運ぶ。
……あれ?
「ちょちょっなんでぼくが全部運んでるの?」
「え、どういうこと?」
「いや、だって君は学校で『私も半分手伝うから』って言ったじゃないか」
「えぇ言ったわよ」
「じゃあ…」
「だから私はプリントをあなたのそのカバンに入れるのを半分手伝ったわ」
「え?」
「それに道案内までしてあげるのだからむしろ感謝してほしいくらいなのだけれど」
「えぇ~~~~!?」
な、なんか騙された気分だ。
結局、ぼくが何を言おうが彼女に言い負かされプリントを全て持たされて学校を出る。
「ところで、なんでこんなにもの量のプリントがあるんだ?」
下校途中にぼくはふと思い、彼女に聞いてみる。
「あぁ、それは私のものだけではなくてお兄(に)ぃのものも含まれているの」
「ふぅん」
てか、お前の分もこの中に含まれてるんかい!……せめてそれくらいは自分で持てよ!
「というか君のお兄さん何日休んでるの?これ確実に今日一日ぐらいじゃ絶対にたまらない量だぞ」
「さぁ?数えたことないからわからないけど…一年は軽く越えていると思うわ」
「一年……君のお兄さんは病弱なのかな?」
「いいえ、引きこもりよ」
「……。」
予想の上をいく回答に僕は反応に困ってなんと返せばいいのかわからないで黙っていると彼女は少しムッとした表情になって握り拳を振り上げる。
「がっ!…なんで殴…?」
「あんたが黙ってるからよ…全く」
「いやいや、ちゃんと話は聞いていたからね…痛つつ」
「それならいいわ。じゃあさっさといくわよ」
ぼくは赤くなった頬を擦りながらゆらゆらと立ち上がり、彼女の後を追いかける。
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