03-4
「うっ…ぅー……はぁ、戻ってきた。……さて」
今朝よりも人の数の減っているその教室で慧は大きく体を伸ばした後、机角に一つだけ表示されたメニューから“マップ”のアイコンを開き、食堂の位置を確認する。
今朝の騒動で弁当を作れなかったからこれはいい情報だった。
「ん?」
確認中、表示されたアイコンに触れるとマップに表示が一つ追加された。
これは……あぁさっきの試験結果がもう出てるのか。
場所は食堂前みたいだな先に確認しておくか。
「あー腹へったなぁ~」
「あ、君も合格できたんだね」
「あたりまえじゃない」
「さぁ、早く行くっあぁ待ってくださいっす~」
合格した他の受験生がガヤガヤと食堂に向かう波にのって慧も食堂へと向かう。
食堂入り口そばの大きな掲示板にて表示された一次試験結果の表を見つけると上から順に確認を始める。
01位 00018&00001 総撃墜数 14,076機
02位 00035&00021 総撃墜数 7,005機
03位 00077&00008 総撃墜数 6,957機
・・・
10位 00256&00614 総撃墜数 6,057機
・・・
うーん……さすがにまだ出て来ないか。
というか一位の人たちずば抜け過ぎだな。
・・・
21位 00545&03710 総撃墜数 5,379機
21位 00542&00356 総撃墜数 5,379機
へぇ~同点の人がいるのか。
なんとか無双みたいに簡単に敵が倒されていくのにすごい偶然もあるもんだ。
しかしまだか?
23位 00624&00795 総撃墜数 5,068機
・・・
「あ、あれ?ない。」
い、いやあれだけ倒したんださすがにもう出てくるだろう。……たぶん。
・・・
51位 00794&00554 総撃墜数 4,536機
52位 00723&00234 総撃墜数 4,525機
53位 00152&00623 総撃墜数 4,520機
・・・
「……。」
さすがに慧はゆっくりと言葉を失い、静かに目線を下ろしていく。
・・・
91位 00143&00764 総撃墜数 3,411機
92位 00098&00036 総撃墜数 3,408機
93位 00082&00698 総撃墜数 3,405機
94位 00617&00638 総撃墜数 3,399機
やっとあった……しかし最下位か。
無駄口叩いていたのが失敗の原因か?
「はは……」
笑えないけど……笑うしかないな……。
「ん?」
落ち込んでさらに下げた目線の先に気になる1文を見つける。
※このスコアに納得がいかない人たちのために練習用のシュミレーターを設けました。
(場所は机の地図参照)
おお!いいのがあるな。昼食をとったら植崎誘って行ってみるかな?
慧はうどんの食券を選び、現物を受けとるとどんぶりをがつがつと食べている植崎の座る席と同じテーブル席に腰かける。
「おう、慧やっと来たか……うまいぞここの親子丼!」
「あ、そうなのか……ってそんなことよりも、お前さ入り口に表示されてた順位表見たか?」
「ん?いや、まだ見てないが……それがどうかしたのか?」
植崎はどんぶりを傾けながら飲んでいるかのようにかっこんでいる。
「どうしたもこうしたもないよ。僕らの順位が94位……最下位なんだぞ?」
「ぅーん…ふぉれで?……」
口の中にご飯を含みながらクチャクチャと音を立てながら特に気にしてないような顔で返事をする。
「それでって……まぁいいや。それでその表に書いてあったことなんだが……どうも訓練用のシュミレーターがあるみたいなんだよ」
「ほぉ?…」
「このままじゃ最下位のまま入学することになって……みんなから蔑まされた目で見られることになってしまう」
「はんがえふぎしゃないか?」
「はんが……何言ってんだ?口の中のもの呑み込んでから喋れよ」
「ンク……考えすぎじゃないか?」
「いやいやそんなことないっていいか?学内での格差を作り出すのは色んな物がある。成績や部活動や人付き合いの他にも恋愛・性愛経験や容姿にファッションセンスなんてものも含まれる。部活動自分で決められるし、趣味なんかも今や色んな物があるから問題ない。なら格差を作り出すのは他のものだ。人付き合いの悪さは中学のとき酷いものだってのは実証済みだ。なら同時に恋愛経験なんかも皆無だ。容姿だって俺もお前も月並みだ」
慧がそこまで言った時、植崎は口に含んでいた最後の飯を飲み込み、口を開ける。
「容姿って見た目のことだろ?ならお前は十分に人気だったじゃねぇか」
「なにがだ?」
「ほら、中学の学祭ん時に劇だったかなんかで女の格好してよ。人気だったじゃねぇか」
「やめろ、それは言うな。あの時ほどじゃんけんに弱い自分をどれだけ責めたものか」
「でもノリノリだったじゃねぇか」
「吹っ切れて半分やけくそだっただけだよ」
「でも化粧してマジで女なんじゃねぇかって思ったぜ」
「体毛が薄かったのと部活も体育館で日に当たってなくて肌が白かったからな」
そういやあの時は湊も嬉しそうにしてやがったな。
あぁ、くそっ忘れかけていたところだったってのに……。
頭を抱える慧を全く気にしてない植崎は先程の話を完全に切り替えて平然とした顔で聞く。
「……ところでよ」
「ん?」
「お前は飯を食わないのか?」
「ん?あぁ……そうだな……」
慧は大きく息を吐いてから下げていた顔を上げてその手に箸を握りしめる。
「それじゃあ詳しくはご飯を食べてからにするか」
「おう、そんじゃ俺様は少し待ってるぜ」
「……お前試験だってのにゲームなんか持ってきてたのか?」
そう言ってどんぶりを片付けた植崎がポケットからゲーム機を取り出して電源を入れるのを見て先程の話を完全に頭の片隅までに追いやった慧はすすったうどんを飲み込んで聞く。
「おう、こういう時、暇潰しに遊べるようにと思ってな」
「それで、中身はなんなんだ?」
「“ブラックレパード・阿修羅道”だ!」
「あぁ、あのオールバックでジャージ男が主人公として出てくるゲームか……プレイするのは構わんが音を出すのと繁華街にあるミニゲームだけは絶対にするなよ」
内容はプレイ済みだから知ってるし、この前バス内で大音量でゲーム内の女性との楽しそうな会話が流れたときは側にいるこっちが恥ずかしかったからな。
まぁそれ以前にこんなところでゲームをやるという……いや、別に今じゃ携帯のアプリでゲームしてるやつなんて相当数いるか……。
でもこいつみたいに本体を買ってやってるやつは少ないがいないということもないだろう。
試験の内容だって勉学に関することではなくゲームで多数の敵を倒し続ける何て内容だからな。
「それぐらい分かってるぜ」
彼は相も変わらず親指をしっかりと立てながら言った。
「ふっ……ならいい」
食事を手早く終え、二人はシュミレーターのあるという部屋に向かう。
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