03-2

「あ、行っちゃった……」

「これで良かったんですか、A.T?」


慧が見えなくなってからしばらくして先程の二人は通信モニターを開き、話しかける。


『あぁ、こんなところで終わらせたくはないからな。礼を言う宏樹』


そう言われ、宏樹と呼ばれた黒髪の男はバイザーに隠れた目を少し細める。


「それにしても珍しいですね。あなたと言う人が、一人の人間に執着するなんて……」

『ふん、まぁ一応は幼馴染みだからな。気にもなるさ。それよりも初心者向けに設定したの私のガーディアンにやられるなんてことはないようにな。宏樹、アリス』

「それはなんだか答えになってるようでなってない気が……」

「何か言ったか?宏樹」

「いえ、別に……それにしてもこの試験をする意味ってあったんですか?」

『ん?なぜそんなことを聞く』

「いえ、ここを受験する人は皆覚悟を決めて来た人達ですよ。確かにここのことを知らないで受験する者もいますがそういう人は一次の時点で不合格にすれば良かったのでは、と思っただけですよ」

『ふん、そんなことかそれはな、単に忘れていただけだ』

「ちょ、いいんですか?そんなことで」

『ほらあれだ。……試験もかなり難しくしておいていたのだが満点を取っていた一般人もいたのでなさすがに不合格にするわけにもいかんだろう。だから今回は私がしっかりとモニターして一般人は確実に落とそうと』

「完全に不正ですよそれ、訴えられませんか?」

『大丈夫だ、問題ない。私がモニターしていることはお前たちにしか伝えていないからな、お前たちがうっかりと口を滑らせない限りはな。それにな、この試験は過去に我々と同じ境遇の仲間のうち即戦力となりうる人材を見極めるためでもあるのだ』

「……その理由初耳ですね。今思い付いて言いませんでしたか?」

『そ、そそそ、そんなことはないぞ。(震え声)』

「全部口に出して言わないでください。バレバレですよ全く……その自由さが少し羨ましいです」

『なら真似してもらっても構わんぞ』

「慎んで遠慮させていただきます」

『なんだ。つれないな』


二人だけで話しをしていることにアリスと呼ばれた金髪の少女は頬を少しだけ膨らます。


「あの、A.T……?」

『どうした?アリス』

「いえ、えっと……で、では我々も生き残れるように今からそのガーディアンたちを落としていきたいと思います」


アリスと呼ばれた金髪の人はいじわるそうに言うとモニターの向こうでの短い沈黙、僅かな苦笑。


『ふっ……まぁいい。それでは二人とも頑張ってくれ。期待しているぞ。アリス』


そう言われてアリスの表情は明るくなる。


「はい!頑張りま…」


プツンッ――っとアリスがそう言う終える前にA.Tからの通信が切れる。


「ああ、もう!なんであの人は用件だけ言って勝手に切っちゃうのさ?」

「そう言う割にはなんだか嬉しそうに見えますけど?」

「そ、そりゃあ久しぶりだったからね。嬉しいのは普通だと思うけど?」

「それは……まぁ知り合いに久しぶりに会ったりしたら嬉しいからわからなくもないですけど…あの人はあまり変わってなかったですね」

「みたいだね……でも変わらない方がいいよ。……いきなり変わっちゃうと前と変わらず仲良く出来ないかもしれないからね……」


アリスは少し顔を赤らめる。

それを見て宏樹はやれやれと言う顔をする。


「おい?」

「な、何?」

「いや……時間も押しているし、次へ急ぐぞ」

「あ、うん、了解」


二人は武器を構え、センサーを確認し敵の固まっている所へと移動する。

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