第35話「飛竜王、ゲットだぜ!」

 タケル達がやってきたのはゴツゴツとした岩山、その高さは500m程といったところだろうか。

「ここの頂上に飛竜がいるはずですが、登るとなると登山に慣れた者でも一苦労ですよ、これ」

 ディアルが山を見上げながら言う。

「うーん、俺は山育ちだからいけそうだけど」

「俺も登れなくはないが、時間が掛かってしまうな」

 タケルとイーセも見上げながら言う。

「そうだ。皆、ちょっとここで待ってて」

 ユイがあっという間に頂上まで飛んで行ったかと思うと、すぐに戻ってきた。


「よし、これで転移魔法で全員連れていけるわ」

「ユイ、流石ね! 転移魔法は一度言った事ある場所なら行けるものね!」

「ふふん、もっと褒めるがいい」

 キリカが褒めたので、ユイが無い胸を張って得意気になっていた。

「ホント凄えな。しっかし飛んで行く時に見えたけど、今日は紐パンなんだな」



「あの~、それは後にして急ぎませんか?」

 ディアルがタケルを踏みつけているキリカとアキナに話しかけた。

「あ、すみません。じゃあユイ、お願い」

「うん、……転移魔法!」

 

 そしてタケル達はあっという間に頂上に着いた。

 辺り一面岩だらけだが、そこから見える景色は絶景であった。


「なあ、ここで待ってれば飛竜が来るのか?」

 アキナが辺りを見渡して言うと、ディアルが首を傾げながら

「どうでしょう? ここに集まるのは確実ですが」

 

「飛竜~! いたら返事してくれー!」 

 タケルが空に向かって叫ぶと


「俺を呼ぶのは誰だ?」

 身の丈5mはありそうな飛竜がバッサバッサと羽音を立てて降りてきた。


「あ、あっさり出てきましたね。というか、喋ってる?」

「竜って知能高いし、人語を話せる者もいるって聞いた事あるわ」

 ディアルとキリカがそう話していると、タケルが飛竜に話しかけた。

「ねえ飛竜さん、俺達の仲間になってくれよ」

「ん? 俺が何故お前の仲間にならなければいかんのだ?」

 飛竜は低い声で尋ねる。

「あんたらの同族や人間達を死なせない為だよ」

「ほう? 詳しく聞かせてもらおうか」

 タケルは飛竜に事情を話した。




「なるほど、それで俺や仲間達を使いたいと」

「うん。出来る限りのお礼はするよ」

「ふむ、仲間になってやってもいいが、条件がある」

「条件って何?」

「俺と戦ってお前達が勝てば仲間になってやろう」

「え、それでいいの?」

「ああ。だが俺は弱くないぞ」

 飛竜は口元をニヤリとさせながら言った。

「わかったよ。じゃあ早速」

「ああ、遠慮せずにかかって来い」


 タケル達と飛竜の戦いが始まった。




「鳳凰一文字斬!」

 タケルの剣から衝撃波が放たれるが

「ふん!」

 それは飛竜の羽ばたきでかき消された。

「な、なんだって!?」


「それなら肉弾戦だ! でりゃああ!」

 今度はアキナが飛び上がって蹴りを放つ。

「はああっ!」

「うわあああ!?」

 飛竜の口から吹き出した炎がアキナを包んだ。


「つ、強い! あれはただの飛竜ではない!」

 イーセが驚きながら言うと


「そうだ。俺は飛竜族の王で竜神の血を引く者でもあるからな。並の飛竜とは訳が違うぞ」

「な、何だってー!?」

 タケル達は飛竜の言葉を聞いて驚き叫んだ。 


「さあどうした? 俺を仲間にしたくないのか?」

「真空魔法!」

「む!?」

 ユイの魔法で飛竜の翼に傷がついた。


「いくら強くても羽が傷つけば飛べないはず、ってえええ!?」

 飛竜は何事も無かったかのように宙に浮かんでいる。

「そんな事もあろうかと浮遊術も習得しているわ!」

「な、何そのチート?」

「では行くぞ、はああっ!」


「キャアアアアーー!」

「うわああー!?」

 タケル達は飛竜が吐いた光の霧を浴びて倒れた。



「ぐ、な、なんちゅう強さだ」

 タケルが突っ伏しながらも飛竜を見上げる。


「ほう、あれを喰らってまだ意識があるか?」

 飛竜が感心していると


「な、なんとかバリアーが間に合った」

 ディアルの体が光り輝き、それがタケル達を照らしていた。


「こ、これって、聖騎士が使える防御光?」

 キリカも辛うじて意識があるようだ

「俺は一応聖騎士なんですよ、う」

 ディアルも気を失った。


「なるほどな。だがお前とその女以外は意識がもうないな。どうだ、降参するか?」

「だ、誰が、く」

 飛竜が忠告するが、タケルはまだ諦めておらず、なんとか立ち上がろうとしていた。

「そうか。ではとどめと行こう」

 飛竜は大きく息を吸い込んだ。


「ぐ……あ、そうだ。キリカ、俺に力を送ってくれ」

「え? う、うん。わかった」

 キリカが手をかざすとそこから光が放たれ、それがタケルに吸い込まれていく。


「ようし……くらえええ!」

 タケルは剣に神力を込め、力一杯それを振り下ろした。

 するとそこから光り輝く気が現れ、飛竜目掛けて飛んで行き


「ぬおおおおーーー!?」

 飛竜はそれをまともに喰らって落下した。


「ど、どうだ!?」 

「ぐ……見事だ。俺の負けだ」

 飛竜はそういった後、気を失った。


「ふ、ふう。あの変態で試してた技が飛竜王も倒せるなんて。うん、いつかこれを究極奥義にしよかな?」

 タケルはそんな事を呟いた。

 



 その後キリカが仲間達や飛竜を回復させた。


「ふはは、お前が伝説の神剣士だったとはな。それなら勝てないのも当然だな」

 タケルの素性を知った飛竜が笑いながら言う。

「うん。でもあんたもマジで強かったよ。ところでさ」

「わかっている。俺と仲間達全員でお前達に協力させてもらおう」

「ありがと。あ、そうだ。今頃だけどさ、あんたって名前あるの?」

 タケルが尋ねると

「俺の名はトランだ。よろしく頼むぞ」

 飛竜トランは前足をあげ、タケルと握手の形を取った。

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