第5話「そして美少女と旅立った」

「さあタケル。その力で」

「ああ!」

 タケルは剣を構え、目を閉じて気を集中し始める。


「ぐ、ぬぬ、怯むな! 全員一斉にかかれ!」

「おお!」

 妖魔達がタケル目掛けて突進していく。


「……!」

 タケルは目を開き、そして妖魔達を睨みつけ

「でりゃああーー!」

 勢い良く剣を振り下ろした。

 するとそこから光り輝く竜が現れ、妖魔達に向かって飛んで行き


「な? ……ギャアアアアーーー!」

 一人残らず飲み込み、跡形も無く消滅させた。


「や、やった、ふう」

 タケルは汗を拭い、その場にしゃがみ込んだ。


「おお……」

 オウスはタケルの姿を見て思わず涙ぐんだ。


「・・・・・・思わずキスしちゃった。力を送るのは手をかざすだけでよかったのに」

 キリカはタケルを見つめ、頬を赤く染め

「どーしよ。ちょっといいかもと思っちゃったわ」 

 自分の心臓の鼓動が早くなっているのを感じていた。




 その後オウスと狸はキリカの回復魔法によって一命を取り留めた。


 そして数日が過ぎ、オウス達が完全に回復したので安心したタケルはキリカと旅立つ事にした。


「じいちゃん、行ってくるね」

「おう、気を付けてな。儂より先に死ぬでないぞ」

「わかってるって。きっと父さん母さんと一緒に帰ってくるよ」

 タケルは旅立ちの前に聞いていた。

 両親もまた世界を覆う闇をなんとかしようと旅立っていった事を。

「ああ。奴等は簡単にくたばりゃせん。きっと何処かで会えるじゃろうて」

「うん」 

 そしてオウスはキリカの方を向き

「キリカさんや。タケルをよろしくお願いしますぞ」

「は、はい!(え、まさか一生とか?)」

 いや、そんな意味ではないだろ。


「(あたしがおじいさんの面倒見ておくからね。頑張ってね)」

「うん、頼むな……姉ちゃん」

 タケルはしゃがんで狸と握手し、最後はボソッと言った。



 その後山を降り、街道に出た所で

「まずは港町へ行かないとな。飛んで行ったら危険だって言われたし」

「ええ。てかタケルを抱えて飛ぶのは無理よ」

「え、そういうもんなの? てか一気に目的地にワープできないの?」

「無理よ。でももっと修行したら出来るようになるかもね」

「残念。あ、そうだキリカ。大事な事言わなきゃ」

「え、何?(まさか告白?)」

 するとタケルは手を差し出し

「これから長い旅になると思うけど、よろしくな」

「え、ええ。一緒に闇を祓おうね(違うのね~、キスもしたのに)」

 キリカはちょっとガッカリしながらもタケルの手を取ろうとしたが


 ふにっ。

「え?」

 タケルはキリカの胸に触れていた。


 ドバキイイッ!


「な、何すんのよこの変態!」

 キリカはタケルの顔面を思いっきり殴って叫んだ。

「ご、ごめん。ちょっと魔が差した」

「魔が差したって……はっ? もしかして闇の影響?」

 いや、そいつは若さ故の過ちであろうさ、たぶん。


「しっかし柔らかいんだな。もう少しさわ」


 ズ ガ ア ン!


 キリカはタケルに疾風迅雷落としを喰らわせた。


 


 ……何はともあれ、ここから二人の、そして多くの仲間達の旅が始まった。



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