第2話「美少女の胸触ろうとしたら狸にぶたれた」

「え、え? って早く助けないと!」


 タケルは川に入って少女を抱きかかえ、とりあえず岸に寝かせた。


「このままじゃ風邪ひくよな。てかさ」


 タケルはじーっと少女を見つめた。

 濡れてるせいで白いローブが少女の体に張り付き、形の良い胸が少し透けている。


「乳首がピンクって。じいちゃんのエロ本と違って実際はこうなんだ。よし、ちょっと触ってみよう」

 タケルは真顔で戯けた事をほざいた後、そ~っと少女の胸に手を近づけた。


「きゅー!」

「ギャアアー!? って、あれ?」

 いつの間にかタケルの隣に可愛らしい狸がいた。

「(あんた何してんのよ)」

「い、いや。俺はこの子を介抱しようとしてたんだよ」

 これは狸が人語を喋ってる訳ではない。

 どうやらタケルは動物と話す事ができるようだ。

 あとこの狸は雌らしい。


「(介抱? おっぱい触ろうとしてたように見えたけど~?)」

 狸がジト目でタケルを見た。

「う……知られたからには生かしておけん。とっ捕まえて狸汁にしてやる」

 タケルはうつろな目になり、狸の首を絞めようと手を伸ばした。


「(え? きゃーやめてー! あたし美味しくないわよー!)」


 バチイインッ!


 狸は飛び上がってタケルの頬を己の尻尾で打った。


「はっ? お、俺今何しようとしてた?」

 タケルは頬を手で押さえ、辺りを見渡しながら言う。

「(ほ、正気に戻ったわね。まああんたもお年頃だもん、魔が差す事もあるわよね。でも気を失ってる子襲っちゃ駄目)」

「う、うん。ってこの子どうしよ?」

「(ん~、あんたは枯れ木集めて火を起こしなさいな。その間にあたしがその子の体拭いといてあげるからさ)」

「ああ。ありがと。それとごめん」

「(いえいえ)」


 そして狸はタケルから乾いた布を受け取り、少女の体を拭いてあげた。

 タケルはその間に枯れ木を集め、火を起こして少女の体が冷えないようにして様子を見ていたが、一向に目を覚まさないので家に連れて帰る事にした。



 森の中にある古ぼけた丸太小屋。

 ここがタケルの家だった。

「じいちゃんだだいま~」

 タケルは少女を抱えて手が塞がってるので、足で器用に扉を開けた。

「おう、遅かったの……おいタケルや」

 老人はしかめっ面でタケルを見つめた。

「何?」

「なんじゃその子は? 美少女は食べ物でないぞ。はっ? まさか別の意味で食うつもりで攫って」

「ち、違うわい(しそうになったけど)この子は」

「言わなくていい。そうか、そんなに溜まってたのか……よよよ」

 老人は顔を両手で覆って泣きだした。

「じいちゃん、あのさ」

「って冗談じゃわい。で、その子はどうしたんじゃ?」


 タケルは少女をベッドに寝かせた後、先程までの事を話した。

「空からのう。では浮遊魔法か転移魔法に失敗して落ちてきた、といったところかの?」

「この子光ってたけど、それって魔法力?」

「光っていた? うーむ、もしや」


 その時少女が目を覚まして起き上がった。

「ん……あ、ここは?」

「気がついたようだね、君が川に浮いて気を失ってたから俺がここに連れてきたんだよ」

「え? あ、そうだわ。私は空から落っこちて……あの、ありがとう」

 少女はタケルに向かって礼を言った。

「怪我がなくてよかったの。そうそう、儂はオウスという者じゃ。そしてこれは孫のタケルじゃ」

 老人、オウスが自己紹介した。

「あ、私はキリカといいます」

 少女も会釈して名乗った。

「キリカさんかい。あんたは空から落ちてきたそうだが、魔法の練習でもしてたのかいの?」

「いえ。北の大陸からこちらへ飛んで来たんですが、途中で魔物に襲われて。それはなんとかやっつけたんですけど力尽きちゃって、それで」

「なんと? それは無茶をするお嬢さんじゃのう。あそこからここまで結構な距離じゃぞ。それに浮遊魔法を使いながらではロクに戦えんじゃろうに、よう勝ったのう」

 オウスがやや呆れながら言う。

「あ、魔法じゃないです。私は最高神様の力が使えるから、それで」

「は? 何それ?」

 タケルはキリカが言った事の意味が分からず、首を傾げた。

「なんと? キリカさんや、あんたはもしや『聖巫女』かの?」

「え? は、はいそうですけど」

「おお……そうか、とうとうその時が来たか」

 オウスは俯きながらそう言った。


「あ、あの。おじいさんは聖巫女をご存知で?」

 キリカがおそるおそる尋ねた。すると

「知っとるとも。そしてキリカさんは『神剣士』を探しているのじゃろ?」

「!? は、はい、その事を知っているって事は」

「ああ。神剣士の居場所も知っとる。というかの」

 オウスはタケルの背中を押し

「我が孫、タケルこそが神剣士じゃよ」


「「え!?」」

 タケルとキリカは同時に驚いた。

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