第3話「姉ちゃんが欲しいと言ったら美少女に殴られた」
「え、彼が神剣士!?」
「じいちゃん、神剣士って何だよ!?」
二人が同時に叫んだ。
「タケルや、とうとう話す時が来たようじゃ」
オウスがタケルを見つめながら言った。
「え、何を? まさかじいちゃん、どっかに愛人と隠し子がいるとか」
「アホか! これから話すのは我が一族の事じゃ」
「へ? うちの一族って何?」
タケルは首を傾げた。
「まあ聞け。まずこの世界を創られたのは創造神イザナキ様とイザナミ様。それは知っとるな?」
「うん、お伽話読んだ。それで?」
「そのイザナキ様とイザナミ様の長子が最高神アマテラス様で、末子が武神スサノオ様。儂らはそのスサノオ様の子孫なんじゃよ」
「マ、マジで!?」
タケルは驚き叫んだ。
「マジじゃ。そして神剣士というのは」
「この世が闇に覆われし時、神の力を使い、剣を持ってそれを斬り裂き祓う者の事よ」
キリカが言った。
「その通りじゃ。さすが聖巫女。既に『神託』を受けていたかの?」
オウスはキリカの方を向いて尋ねた。
「いえ、兄に教えてもらいました」
「ほう、お兄さんにかい? だがこの事は我が一族以外に知る者はいないはずじゃがのう?」
「い、いえ。兄は最高神様に聞いた、と言ってました」
「おや? 最高神様の神託を受けられる者は聖巫女、もしくはそれに準ずる力を持った女性だけのはずじゃがのう?」
オウスは首を傾げていた。
「そ、それは置いといて下さい。で、私は聖巫女として神剣士を探しに来たんです」
キリカは慌てて話を戻した。
「俺が神剣士ってのもよくわかんないけど、聖巫女って何?」
タケルも首を傾げながら言うと
「聖巫女というのはな、さっき言ったように最高神様の神託を受けられる者であり、最高神様の力を借りて使える者、じゃ」
「そしてその力を神剣士に送り、サポートをする者よ」
オウスとキリカが続けて言った。
「でもあなたが……うーん」
キリカは顎に手をやり、考えこむようにタケルを見つめていた。
「ん、何だよ?」
「いえ、あなたってまだ神力が使えないみたいね」
「神力って?」
「さっき言った神の力よ。神力とはね、使い方次第ではどんな事でも出来るようになるのよ」
「え、なんでもできるの!?」
「ええ。空を飛んだり何もない所から物を出したりとかも」
「そうなのか!? じゃあこういうのも出来る!?」
「え、何をしたいの?」
「美人で巨乳の姉ちゃんを出して一緒に寝たり風呂入ったり」
ドゴオッ!
キリカはタケルの顔面に強烈なパンチを放った。
「何すんだよ痛えだろが!」
タケルが鼻を押さえながら叫ぶ。
「そんな邪な事に神力使おうとするな-ー!」
「何が邪だ! 俺はただ純粋にだな」
「どこが純粋よ!」
「まあまあキリカさんや。こやつには兄弟がおらんからの、そういうものに憧れとるんじゃよ」
オウスが二人の間に立った。
「あ、そうなの?」
「そうだよ。父さんと母さんは行方不明だし。じいちゃんがいるけどさ、どうせなら姉ちゃんがいたらなあ、と思ってさ」
「うーん、って今さり気なく重い事言ったわね。ご両親が行方不明って」
「ああ。俺が物心ついた時は既にいなかった。あとばあちゃんは俺が子供の頃亡くなったよ」
「そう、私も似たようなものね」
「え?」
「私ね、十年くらい前に両親や兄と生き別れたのよ。どうしてかは覚えてないんだけど、気がついたら一人で知らない町にいたの」
タケルとオウスは黙って話を聞いていた。
「あちこち彷徨っていたら病気になって行き倒れになってね。『誰か助けて』と思った時に私を拾ってくれたのがね、旅の途中だった今の兄だったの」
「じゃあお兄さんって本当のお兄さんじゃないんだ」
「たしかに血は繋がってないけど、私にとっては本当の兄よ」
「あ、そうだよね。ごめん」
「いいわよ。でね、兄は魔法や武術の使い手でもあるの。私は兄からいろいろ教わったわ。自分が聖巫女である事もね」
するとオウスが
「ふうむ、言い伝えでは最高神様が直接本人に聖巫女である事を告げるはずじゃがのう?」
「え、そうなんですか? それは知りませんでした」
キリカは首を傾げた。
「じいちゃん。それって大昔からの言い伝えだろ? だからどっかで間違って伝わったんじゃない?」
「そうかもしれんなあ。現実はこうなんじゃしの」
(あの兄貴ってホント何も気にしてないわね、もう)
キリカは内心で兄に毒づいた。
「ところでキリカさん。どうやったら神力って使えるようになるの?」
「あ、私の事は呼び捨てでいいわ。で、神力だけどね」
「うん?」
「ごめんなさい、私もそこまでは知らないの。オウスさんは知ってますか?」
キリカがオウスに尋ねる。
「我が一族の中で体の何処かに印を持つ者、それが神力を使える者であり、神剣士であるそうじゃ」
「え、印って何?」
タケルが聞くと
「ほれ、額にあるじゃろが」
「あ、これか」
タケルがバンダナを取ると、そこには剣の形をした痣があった。
「これも知らなかったわ。会えばわかる、としか聞いてませんでした……そのくらい言ってよあの兄」
「まあ、聖巫女ならわかると思ってたのかものう。そうそう、儂の知る限りこの印が出たのはタケルの他には一人だけじゃ」
「え、それって誰?」
「儂の息子、つまりお前の父親じゃ」
「父さんが……そうか、父さんは神力が使えたのか」
「いや、使えんかった」
……
「なあじいちゃん。それなら印は関係ないんじゃ?」
「いや、実は他にも条件があるのじゃ」
「え、なんだよ?」
「聖巫女が現れた時に力が出る、とも伝わっておる」
「でも何も起こらないぞ? これもまたどっかで間違ってんじゃないの?」
するとキリカが
「ちょっと待って。それは最高神様に聞いてみるから」
「え、神託ってやつ?」
「ええ。じゃあちょっと静かにしてね」
そう言ってキリカはその場に跪き、目を閉じて手を組んだその時
ドオーン! と外から雷でも落ちたかのような轟音が聞こえてきた。
「な、何だいったい!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます