第6話

お尻やあそこに、マジックペンで、ひどい落書きがされていて、

私が泣きながら、シャワーでそれを落としている間に、

(それは肌がすりむけるほど、こすっても、全然落ちなかった)

その落書きも、私の裸も、何が起こったのかも、全部、

クラスメイト、親戚、家族、町内、日本、ううん、世界中に発信、拡散されていた。


私の携帯にも

「親に話したら、これをばらまく」

という幹次くんからのメッセージがあって、動画データがついていた。


学校に行けなくなった。

眠れなくなった。

ご飯が食べられなくなった。

親の顔が見れなくなった。

男の人が怖くなった。

携帯は捨てた。


それ以外にも見知らぬ人から、

「どーせ、自分から誘ったんだろ」

「15歳の淫売」

とかひどい言葉が浴びせられた。


一度、幹次くんが家にやってきて、

「帰って!」と私が言ったら、

「なあ、もう一生、ほかの男となんか、つきあえないんだから、俺とつきあおうよ。な?」

と大声でわめきたてた。


何を言ってるか、わからなかった。


空介には、あの日以来、会っていない。


私は事件から、20日後に引っ越した。


それでも、私をとりまく風評被害や攻撃はやまなかった。


事件から1カ月後、私は伊藤産婦人科クリニックで、妊娠を知った。

そして、そのまま、そのクリニックの庭木にロープをかけて、首を吊った。

遺書には


「お母さん、ごめんなさい」


と書いた。

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