第3話

僕は、憤上悦也(ふんがみえつや)といいます。


もうすぐ車が目的地につきます。


目的地は昔、病院だった空き地です。


もともと産婦人科の病院だったと思います。

少子化で子どもを産む人がいなくなって、経営が立ち行かなくなって、

潰れたと聞きました。


病院長が、分娩室で首を吊って自殺したという噂です。


でも、噂はあてになりません。

僕が独自で調べたところによると、


院長は単純にロープを首にかけて、首つり自殺したのではなくて、

分娩台に座り、首にロープをかけておいて、リモコンで徐々に下の方にリクライニングして、ゆっくりゆっくりロープに力がかかるようにして窒息死したようです。


足は、もちろん分娩台の、開脚アームにかけていました。

もっとも院長が死ぬ前にひりだしたのは、赤ん坊なんかじゃない、ただの排泄物でしたが。


どうしてそんなことするのかわからない


と心底あきれ返ったような顔で空介くんは言ってましたが、


僕にはわかるような気がします。


死ぬのは快感です。


それから人を殺すのも快感だと思うからです。


きっと院長は両方やってみたかったんだと思います。


たった1回のチャンスのときですから。



首つりといえば、


中学生のときのクラスメイト、和泉真子(いずみまこ)さんを思い出します。


真子さんは、僕が初めてHした女の子です。


髪の長い、たまご型のあごの、頭のいい、優しい女の子でした。


でも、真子さんが初めてHしたのは、僕ではありません。


空介くんのヘアスプレーの缶だったか、部屋にあった飛行機のプラモデルだったか、

あんまり、よく覚えていません。


プラモデルの銀色の機体やアメリカ空軍の F-35A ライトニングII というモデルだったことは、よく覚えているのに。


不思議です。

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