第4話 曇天の黒
ユキジを河原に残して、親父のタバコを買って家に帰った俺は、ユキジほどのバカなら、きっと石を掘り起こすと、祈るように思っていた。
家の中は温かく、母親が台所でトントントンとこぎみよい音で包丁を使っていた。
ふいに「ドンッ」と突然、大きな音がして、電気がチカッと瞬いた。
「雷だな」タバコを吸っていた親父が、のんびりした声で言った。
「こりゃ、一雨くるな」親父のその声に、俺は窓にとりついた。
外が真っ暗だ。
俺は、ユキジが心配になった。
石を掘り起こせないうちに雨が降り出して、もしも、ユキジが小屋に帰ってしまったら・・・。
ユキジの親父が死ぬのか、それとも本当は最初にハチマキ石を見つけた俺の父ちゃんと母ちゃんが死ぬのか、どっちだ?
俺が不安になって窓越しに雨雲を見詰めていると、「ドドンッ!」またひときわ激しい雷の音がして、黒雲から閃光が走った。
「お、近いな」親父がまたのんきな声で言う。
ダダダダダダダダと、激しい勢いで雨が降り出す。
雨が屋根を打つ音に混じって、ジュウジュウと台所から肉を焼く音と匂いがする。
このまま家にいたら、雷が俺の家に落ちて、父ちゃんと母ちゃんがまっくろ黒焦げになるー。
そんな気がした。
俺は野球帽をひっつかんだ。雨よけのつもりだった。
雷がとどろく中、金属の骨が入ってる傘をさすのは怖かった。
「ちょっと出てくる」言いながら、玄関に向かって走り出した。
親父のびっくりした声が背中にぶつかる。
「おい、マトオ、どこ行くんだ!」
「マトオ!、雷が鳴ってるのよ!ダメよ!」
母親の悲鳴の声が、玄関を開けて家になだれ込んできた雨の音に混じった。
俺は土砂降りの雨の中に飛び出した。
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