最先端のドライブ仕事

@mglwnafh

第1話 

このあいだ学生時代の友人と久しぶりに会うことになって居酒屋でいろいろと近況を話しあった。自分は理系の学科に進み大企業の下請けだがプログラマーとして最先端の製品を開発するような立場となりそれなりに充実した生活をおくっているのだが、そいつは悪く言えば脳筋な方だったのでちゃんと仕事につけるのか心配していたぐらいだったのだ。

「ふっふ~、オレがまともな職につけないとか思ってただろうが大間違いだ。俺はいま超大手xxx社のテストドライバーやってるんだぜ」

なんという事だろうか、国内どころか世界で誰一人知らない人はいないといっても過言ではない自動車業界の雄とでもいう大企業で、ついでに言うなら今の自分の仕事のお客様である。

「いやいやいや、お前別に運転上手とかサーキットで有名とかそんなこと全然なかったし、嘘つき良くない」

「あー、テストドライバーといってもスピード出して車の限界がどうのこうのみたいな、そういう方面じゃないんだ」

「というと?」

「最近CMにも出てくるようになったと思うけど、自動運転カーってあるだろ、あれの為の情報取りって事らしい。まぁ、正社員というよりアルバイト的な契約だけどな。」

聞いてみると、センサーを山盛り搭載した車で日本中を走り回っているらしい。

「最初の方は昼間とか早朝とかそういう仕事だったんだけどよ、最近は深夜とか夜の情報取得が多くなって来たせいか疲れが取れないよ、夜担当はやっぱきついのか結構な割合で辞めていくんだよ。割はいいから俺はつづけるけどな。」

そういえば学生時代はマッチョだった奴が目の下にくまが出来てくたびれ感あふれた感じになっている。

「ふーん、で、最近だとどんな所に行ったんだ?」

「なんか妙なこだわりがあるのか、似たような環境を続けて走る事が多いんだけど、山道シリーズとか一通り終わった後、最近はなんかトンネルシリーズになってよ、xxトンネルとか、○○トンネルとか、△△トンネルとか最近そんなのが多いな、かと思ったら特になんとも無いような住宅街の交差点とか微妙なのもやらされるけどな」

「へー、そうなんだ」

トンネルシリーズで出てきた名前に嫌な雰囲気を感じたのだが、なんとか平常心を保ったまま受け答えができた。それから数時間飲み会は続いたが、そのあとの受け答えはなんとなく上の空になってしまい覚えていない。

「全国走破するまで自動運転は実用化されないらしいぜ、走行リストはまだまだあるから、数年は自動運転は実用化されないし、俺の仕事も安泰ってわけだ。」

友人がそう言い残して帰っていったのだけはよく憶えている。


 自分の仕事なんだが、偶然だが友人と同じ自動運転カーの仕事で、あるプログラムの開発をしている。ざっくりした機能の概要を言うと、自動運転カーには自動運転の判断のためのセンサーがたくさんついているのだが、上位のブラックボックスから通知される情報を元に判断に使用するセンサーを選択するというような機能部品となる。普通に考えると判断材料となるセンサーの情報は数が多いほど判断が正確になると思われるのに、なぜこんなブロックが必要なのかずっと疑問に思っていたのだが、友人の話を聞いて「トンネルシリーズって心霊スポットめぐりじゃねーか」と思った直後にすとんと腑に落ちた。


ああ、そうか、センサーに幽霊の反応が出てしまうと誤動作するので実際に心霊スポットを走って影響の出るセンサーを判断から弾く処理なのか…

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