人間らしい天使

 天使というのはとても神秘的な存在だ。諸説様々な仮説をしており、様々な形が存在している。

 例えば赤子だったり、子供だったり。美しい姿をしていたり、醜い姿をしているとかだったり。女性のみであるとか、男性のみであるとか。大きな羽が生えているだとか、実は羽が生えていないとか。人の姿をしているとか、人の姿をしていないとか。巨大だったり、小さかったり。妖精が天使なのでは? とか様々な形をしている。

 

 そんな本物の天使は触れるほどの距離に存在している。

 手を伸ばせば白い翼に触れることが出来る。もろに鳥の羽のような感触に撫でていれば羽が抜けることもある。

 お前は白い鳥か? なんて。

 

 「天使の羽で作った服とかあるのかな」

 

 ぽつりとそんなことをボヤくと目前の天使はふふと笑いながらありますよと返答する。

 

 「いやいや、なんで」

 「ーーー?人間だってあるじゃないですか? 天使だってそんなものですよ?」

 「人間の肉で作った服なんてないよ??」

 「かつらの話ですよ?」

 「なんで??」

 「天使にとって羽はそんなものですよ。人間にとっての髪の毛みたいなものですね」

 

 天使の羽が人間の髪の毛? つまりのこの抜けた羽がかつら………? はへぇ?

 

 「天使にとって翼はさほど重要ではありませんよ? ………あ、補足しますが大切なものではありますがそこまで気にすることでもないと言いますか………ええっとその、翼を重要視している天使も居ますが私は重要視していません。あれ、ですよほら! 禿げても構わない! って人と髪は大事だ! 的な感じです」

 「分かるような分からないような………?」

 「とにかく、あるんですよ。付け羽根が。特に服とか帽子とかに付けていますよ。ブローチなどのアクセサリーの類も見たことありますね」

 「なんか妙に人間らしいよね。神秘というか、幻想的なイメージが………」

 「よく人間に想像してたのとなんか違う! とか言われますね。真白はどんな想像していたんですか?」

 「え、………なんか神々しいとか。偉そうというか厳しいそうなとか? あ、後は………布というか、ギリシャ神話の服とか着てるイメージが。他は金髪青目しか居ないのかとか」

 

 ふと想像するのは金髪青目の天使。神々しく、優しく、時に厳しいようなそんな天使。

 

 「布を着ているは完全に風評被害ですね。それ完全にミカエルのせいです」

 「まぁ、布はミカエルが着てるって感じだからなぁ」

 「偉そうとか厳しそうなのもミカエルですね。………なんですかあの人。あ、人じゃないんですけども」

 「金髪青目は?」

 「それは、うーんうーん、あ!! セラフィエルですね!」

 「へー、ミカエルじゃないんだ?」

 「ミカエルは銀髪赤目ですよ」

 

 カマエルから話される天使の日常。仕事も学校もあり、給料もある。酒も娯楽もある。女も子供も存在していて暮らしは人間とはあまり変わらないそう。

 ただ違うのは翼が生えていて金の冠があって長寿なだけ。それ以外であれば人間と大して変わらない。

 

 「なんか、天使って思ってたよりも人間らしいね?」

 「ええ、そうですね」

 「幻想的な天使とかいないの?」

 「一万年前であれば人間達のイメージと合っていますよ」

 「えっ」

 「こんな風になったのメタトロンが昇天する時でしたし」

 

 うーん、メタトロンって人が天界に人間の文化を持ち込んだのかな?

 どうあれ、様々な形をしていた天使は目の前にある。

 天使は翼が生えていて金の冠があって、長寿。暮らしは人間と大差がない。

 実に人間らしい天使だ。

 もしかしたら人間の世界に天使が紛れ込んでても分からないかも。

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