第74話 ペチペチ

「ごろにゃーん。ネコーコ・ハルミ姫。なんて美しい毛並み。整った目鼻立ち。これは、猫界でもダイヤモンド級ですよ。いい子ねー」


「ふー。ふーにゃ!」


「うぬぬぬぬ……。こんなに、キスを迫っているのに、ネコーコ・ハルミ姫は、キスをご所望らしい。悔しいったらありゃしない」


 魚がお好きなのね。

 違うだろ、ネコーコ・ハルミ姫は、猫語でごまかしているだけなんだよ。

 多分、日本語ぺらぺーらの留学生並みだね。


「おい、大広間の高い所でいちゃついてないで、チョキの手袋を拾ったらどうだ?」 


「何のことかな」


 早く、こんな状況から抜け出して、ファンシーに生きたい。

 

「では、サスケヒゲゾー伯爵、貴殿の手袋でセクシー・ド・ヨンゲーンの頬を殴り給え」


「えい!」


 バシッ!


「はえーな、おい」


「ほらほら、スマイルスライムども、君たちも手をパーにしてみて、あのおっさんをペチペチしてごらん? いいことあるかもよ」


 ペチペチペチペチ……。

ペチペチペチペチ……。

  ペチペチペチペチ……。


「キリがねーな、おい!」


 痛いというより、微笑ましい位に痒かった。

 

「召喚! nijneegihoa! スマイルアウトスライム! ターゲットオン。ペチペチして来なさい」


 金の杖を出して、円を描いた。

 スマイルアウトスライムは、かなり不機嫌そうで、すぐさまセクシー・ド・ヨンゲーンに襲い掛かった。


 Ψ oyesu……!


 セクシー・ド・ヨンゲーンの必殺消滅魔法を惜しみなく放ってやった。

 消滅魔法でスマイルアウトスライムを包み込ませた。


 ポッシュー。


 その隙に、伯爵は、再び円を描いた。


「召喚! nijneegihoa! ドロボースライム! ペチペチしてごらんなさい」


 セクシー・ド・ヨンゲーンは、ボスビーオ山でスピードを鍛えたのさ。


 Ψ ojukas……!


 ドロボーのスマイルみたいに貧乏面下げてペチペチしてくるので、こちらも連打でこたえた。


 Ψ ojukas……!

  Ψ ojukas……!

   Ψ ojukas……!


 おおっと、伯爵を見逃すな。


「召喚! nijneegihoa! デラックススライム! 張り手のようにペチペチしておしまい」


 よく見ると、金の魔法の杖がはげてきている。

 魔法による摩耗か?


「デラックススライムよ! ネコーコ・ハルミ姫の体をペチペチしてしまえ」

 杖を一振りした。


「きっさま! 漢とは呼べぬわー! さあ、来い! バーニングプリけつソウル!」


 ――魂に炎が燃え盛った。


 Ψ gnos……!


 族のセイレーンで歌を鍛えたのだ!

 デラックススライムは伯爵のコントロールを失った。

 今だ!


 Ψ gnos……!

 Ψ gnos……!

 Ψ gnos……!


 デラックススライムは、体が一グラムもなくなるまで散って行った。

 そして、サスケヒゲゾー伯爵といることで、頭にバカを咲かせることも学んだ!


 Ψ ihcep ihcep……!


「さあ、どうなるかなー」


 サスケヒゲゾー伯爵の使用人、スマイルスライムが、よってたかって、主人をペチペチし始める魔法さ。


「ペチペチぺチペチ……。あー!」





うっとうしいわ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る