第35話 秋

 サスケヒゲゾー伯爵は、ネコーコ・ハルーミ姫をセクシー・ド・ヨンゲーンから奪った。

 それは、ひとつ、伯爵の趣味もあった。

 けもののミミがお好きなようである。


 第一次ファンタジアーヌ魔法カップに、サスケヒゲゾー伯爵が敗れた日を振り返ってもそうだ。

 どんな手で勝ち上がって来たのかは分からない。

 しかし、決勝に来れば、互いに等しい敵だ。


 決勝戦の席でも戦いの度に見かけたいつもの可愛いウサミミちゃんがいる。

「彼女はこちらを見ている。いい、ウサミミだ」

 そんな勘違いツンツン髭野郎であった。

「う、うーん。セクシー・ド・ヨンゲーン様はつれないんだからん」

 彼女の視線は、闘技場のあちらにあった。


 セクシー・ド・ヨンゲーンの傍には、いつもネコーコ・ハルーミ姫がいた。

 姫の美貌を支えるものに、美しいネコミミがあった。

 毛並みは白金しろがね、そのミミのふちは金色こんじきに輝く。


「ネコーコ・ハルーミ姫、この試合が終わったら話がある」

 セクシー・ド・ヨンゲーンは、その言葉を残し、風に吹かれて決勝戦の席に立ったが、敵の卑怯な手により、戦いのさなか姫が奪い去られてしまった。


「召喚! nijneegihoa! ネコーコ・ハルーミ姫!」

 隠していた杖を出して、円を描いた。

「きゃあああー! 助けて……」

 姫は、亜空間にのまれてしまった。

 セクシー・ド・ヨンゲーンは、一気に体重が落ちた。

 ショックの大きさを分かって貰えるか。


「試合には勝った……。だがしかし、おとことして負けるとは……。必ず姫を奪い返してみせるぞ!」

 闘技場の土を握りしめ、風に飛ばした。

「ふははははは。美しい、実に美しい。サスケヒゲゾー伯爵のスッペシャールコレクションの一等に置こう」


「姫は、コレクションではない!」

 心の叫びを放った。

「人間でなければ、コレクションさ」

 氷の声が返って来た。


 それは、冷たい……。

 秋だというのに心がぐっと引き締められる冷たさであった……。


 >進め<


□ ネコーコ・ハルミ姫が心配だ。

  第25話へ。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883918985/episodes/1177354054884231792


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