2日目 第4試合 後編
ドォォォォォ────ンッ!!!
「くっ!!」
巨大化されたダイタラボッチは、隕石の様な鉄槌を振り下ろした!
凄まじい音と四散する土砂。強い振動のために避けるのが手一杯だ。
「ハーッハッハッハーッ! 見たかね!? さあ、
一方の巨人は避けたジャックの方を向き、大地に埋まった腕を引き抜く。
──次は外さない。
「そんなに
一歩踏み出すごとに響くその振動に
(こんなもので防げるとは思っていない。だがこちらにも意地がある!)
弱点は把握した、待ち続ければ機会は必ず訪れる。
とにかく今は機会を待つのだ!
下ろされる大振りの鉄槌、単純な軌道。確実にかわせる自信のあった巨人の拳は、ジャックの動きに合わせて瞬時にその軌道を変えた!
「──っ!!!」
まともに食らい、闘技場の壁まで吹っ飛ばされ叩き付けられる。全身に強い衝撃を覚え、思わず胸の古傷を抑えた。
(くっ老体はもっと
目前には既に攻撃態勢のダイタラボッチが!
このままでは後ろの観客席まで巻き込んでしまうではないか!
「
だが非情にも鉄拳は、ジャックのいる壁際へと振り下ろされた!
地鳴りと土煙、観客らの
巨人の拳はすぐ横にあり、壁も破壊されてはいなかった……。
──今のは冗談だよ。
指を立てて左右に振る仕草、流石のジャックも何かが切れた。
なにくそとロングソードを突き立て、立ち上がり睨む。
「……お前の主人の性悪さはよくわかったよ、化け物っ!」
ミスティ・カジェルディを用い、巨人の顔に纏っていた布を被せる。
巨人が振り払った時には既に、居たはずのジャックの姿は無くなっていた。
「ついて来い化け物!
巨体をくぐり、闘技場の中央へと全力で走る。
そうだ、こっちを向いてついてこい。
走って来る巨人をちらりと確認しつつ、その両足へ二本の剣を出現させた!
『グオォォォォォォォ──ッ!!!』
足元に鋭い痛みを覚え、両手両ひざをつくダイタラボッチ。傍から見れば、巨大な罪人が詫びているような格好となっていた。巻き上がる
闘技場が晴れ、巨人の先に高々とランタンをかざすジャックの姿!
「正直使いたくはなかったがな……あの主人の元にいるよりはいくばかマシだろう。さあ、
不死者とて魂は存在する、奪えばただ消滅するのみ。巨人の頭部から黒い光の線が発せられ、ランタンの中へと吸い込まれていく。
ここで予想外な事態となった。一本だけと思われた光の線は、その後も無数に頭部から発せられ続け、止まることを知らない。ダイタラボッチの巨体も消滅せずに、じっと硬直している。
(……地獄そのものから魂を引き出しているようだ!)
ランタンに吸い込まれては消えていく、憎悪、嫉妬、恐怖、怒りの思念体。
だが今が絶好の機会であることには違いない。動かなくなった巨人の頭上へと二本の剣を発生させ、光の線を発している場所へと正確に狙いを定める。
「
ガチンッ!!
金属の音色と共に、巨人の頭部へ裁きの双剣が突き刺さる──筈だった。
無情にも二本の剣は弾かれ、目前には動き出した巨大な手が迫る! 失敗か!?
キンッ!
斬り払おうと試みるも、呼び戻したロングソードまでが弾かれ、ジャックの身体はダイタラボッチの手中へと収まってしまった。気付かなかったことだが、前のめりに倒れた瞬間、その巨体はダイヤモンドの数千倍にまで硬化されていたのだ!
逃れられぬ
『イ゛ダ ダ ギ マ゛ー ズ !』
「たぁぁぁぁぁいしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ────っつ!!!!!!!!」
「こぉら退場カード二枚目だぞー?」
「もうこれ試合じゃないっすよっ!! 大将がダーダーに食われちまうっす!!」
「だーかーらー、これはそういう勝負なのっ」
再び現れるも、再度ウィルに羽交い絞めにされるカノヴァ。ジャックの言いつけもあるのか、メグとダリオは闘技場を静観している。
「うわぁ……。でもこの試合ってまた生き返れるんでしょ?」
「後で化け物に食われた感想が聞けるかもな」
「冷静に言わないで下さいっす!!」
カノヴァは騒ぎながらウィルに引きずられていくのだった。
一方ジャックは掴まれた手の中にいた。ミスティ・カジェルディで逃れようと試みるも、硬化された体には剣が突き刺さらない。
「やめろ化け物! 俺など食っても美味くはないぞっ!!」
高い位置から見える観客席、あのお菓子のキャラクターの姿も見えた。一体どんな顔でこちらの様子を伺っているのか(着ぐるみだが)と視線を向ける。
「──!?」
だが木林は足を組んでヘッドフォンを掛け、そっちの事情など知ったこっちゃないとばかりにニュース・ペーパーを広げているではないか! なんて奴だっ!!
そして今、正にジャックを飲み込まんと大口が開かれた!
キン! ガキーンッ!
「……駄目かっ!!」
体表面ならまだしも、口の中はどうだ? ギリギリまで隙を伺っていたが、最後の望みは勢いよく閉じられた牙によって阻まれる。歯の間に挟まった爪楊枝を抜くかのように、剣を一本一本引き抜くと、
『ヤ゛ー メ゛ダ ッ!』
「うっ!? うおおおおぉぉぉぉー!?」
ジャックを握ったまま巨大な腕を振り回す。
そして闘技場の端まで走ると、そのゲートに向けてシュートッ!!
自らもゲートを背に腰を下ろし、天戸岩の様に動かなくなってしまったのだ。
──そこまで! ジャック選手を退場とみなし、勝者ダイタラボッチ!
…………
興奮とも恐れともつかぬ客声の中、木林はヘッドフォンからラジオを聞いていた。
『先程の試合、まさかあのような結果になるとは。しかしなぜ、ダーダー……失礼、ダイタラボッチはジャック選手を食べなかったのでしょうか?』
『
『ははは、成程。しかしゾンビも不死者ですが、共食いはしますよ?』
『そうなんですか? ですが先程の彼らは、ゾンビとは決定的に違っていましたね』
『ゾンビと
『闘技場に立つ戦士の誇り、ですよ』
…………
ニュース・ペーパーを折りたたみ、木林は立ちあがる。
(クックック……もう少しでこちらの
2日目 第4試合 後編 完 → 続話を待て!?
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