第10話 寓話
シレ=カーンの七年、追放先にて、カーザル王子はお亡くなりになられた。
父王サウジャ=カーンの臨終にも会えず、また死して後も御遺体を王都に戻すことは許されなかった。そのお嘆きや、さぞ深いものがあるであろう。
ただ、カーザル王子の死の際に関して、次のような話を、とある老尼から聞いた。王子が病に侵され、いよいよという時である。
「その日殿下はよく眠っておられました。そしてふと目を覚まし、『夢を見ていた』と申されるのです。どのような夢でしたか、と尋ねますと、『私は幼少の姿で、池の端に座って池中を眺めていた。そこにはミズスマシが一匹泳いでいた。ふと気づくと、隣に誰かが座っている。父であった。父は、あのミズスマシと我らと、
シレ=カーン十八年、相次ぐ旱魃、サンタラ川の大氾濫をカーザル王子の怨念であるとする風潮が広がっていた。
そのためこの年の秋、正式にカーザル王子を祀る祭司が執り行われた。
結果として災害は止む所となったが、実際、カーザル王子が如何なる思いのうちに世を去ったか、今となっては知られるところではない。
寓話 ー虎王物語ー 黒崎葦雀 @kuro_kc
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