君のためにこそ死にゆく
藍沢夏伽
プロローグ
3階建ての校舎のB棟1階の一番端、1年E組の教室からは体育館が見える。全開にされた大窓からは男子バスケットボール部が練習をしているのが覗ける。
「……!……っか!!……夏伽!!!!」
耳元で大声で名前を叫ばれた少女はビクッと肩を揺らした後に頭を上げた。
「葉月、どうしたの?」
くわぁ。と欠伸を1つしながら叫んだ少女、葉月に訊いた。
「あんた今日から男バスのマネするんじゃなかったの?お兄さんに頼まれたって。」
「……あ、忘れてた!」
足下に置いていたバッシュを掴むと走り出す。
「荷物は?!」
「あー、後から取り来るから!」
「はぁ、本当にあの子は。……着替え忘れてってるじゃん。」
「仕方ないから届けてやるか。」と一言零して、夏伽の後を追うように部活棟に向かった。
見上げると思わず感性の声が出てしまうようなくらいに綺麗な青空。
今は美しい空が、悲しみに染まっていたことがあった。幾つもの未来ある青少年が死ぬためだけに飛んで、涙を飲みながら命の灯火を自ら消した。
君のためにこそ死にゆく 藍沢夏伽 @Natsuka-Aisawa
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