帰ろう

「キミがエイダ君だね。いい名前じゃないか」

白衣をまとった如何にも学者といった風貌な男が視界に入った。

「私の名は、スガ……うぐッ…ガハァッ!」

"消えてなくなれ!"そう心の中で叫んだ。

お前なんかどうでもいい。

私の日常を返せ。

糞みたいな日常だったけど、私はお前達のモルモットじゃない。


床に膝をつく男のアゴに蹴りを入れる。

他にも何人か居たが念じれば苦しむみたいだ。

便利な能力を手に入れたな。

相変わらず蛍のような緑色の光は私の周囲を舞っている。


帰ろう…。


なんとなくわかってきた。

この光は意識。意識に触れると記憶が流れてくる。

その記憶は決して正しいものには思えない。

人を嘲笑う記憶、偽りの言葉で人を弄ぶ記憶、雑言、嫉妬、愉悦…。

醜い感情ほど強く、真実ほど…か細い。

見極めなければならない。このノイズから真実を。

この光が強く吹き出す場所に立つ。

周囲は緑色の霧に覆われる。

そうすると、真実が捉えやすくなる。この数年間の悲劇が脳にダイレクトに流れ込む。


そうか…。


みんな、バカみたいなゲームに巻き込まれて死んだんだ。

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