汚れ

2020年東京オリンピック。

まだ幼かった私は、その異常事態を理解できていなかった。

数千年の歴史ある祭典は、この年で自然消滅した。

世界中から集まったアスリートの殆どは原因不明の精神汚染で競技が不可能になった。

その後、世界中に広まった奇病は『XMS』と呼ばれ混沌の歴史が始まった。


目が醒めると知らない天井が歪んで見えた。

世界がくるくると回って立ち上がることはできない。

さざ波に似た人の声が聞こえる。

「エックスエム汚染レベルシックスB…松果体肥大を確認…覚醒…」

目の前に広がる景色は極彩色で細かく動き、まるで万華鏡のよう。


私、どうしたんだろう。


夢を見た。

倉庫だらけの殺風景な場所。

巨大ジェット機が離着陸を繰り返す。

海の真ん中にポツンと聳え立つ塔。

もの凄い速さで空を埋め尽くす緑色の霧。


不思議な景色だった。

大きなビルが何処までも続く、まるでコンクリートのジャングル。

でも、東京タワーが赤く光って見えたからきっと東京府なのだろう。


聞いたことがある。

オリンピックのあと、精神汚染が確認された人たちは国連により隔離されたと。

残された家族達によるデモが各地で起きて、その後経済が不安定になり第三次世界大戦が勃発したと。

学校では昔の出来事を扱わなくなったと、先生も言ってたな。


私、家に帰れるのかな…。

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